第43話 遊佐紀リンは虹色宝箱を(特に考えずに)開ける
ビッグスライムを倒したら、宝箱が現れた。
そういえば、ダンジョンをクリアしたら宝箱が出てくるんだった。
ヨハンさんとラスクさんは意識を失っているので、騒ぎにならないうちにそっと宝箱を開けさせてもらおう。
あ、シルちゃんがビッグスライムを爪でひっかいている。
そんなもの食べたらお腹壊すからこっちにこようね。
「今回は虹色宝箱も出たから、これから開けようか?」
「ん? 宝箱は始めてみるのじゃが、これはいいものなのか?」
「うん、そうみたい」
ツバスチャンが虹色宝箱が出るのは宝くじに高額当選するくらいだって言っていたけれど、案外簡単に出た。
課金用のお金がいっぱいあったから、宝箱の昇格率が上がるっていう課金アイテムの虹の雫を使っておいたけど、効果があったのかな?
「ナタリアちゃんの運がいいのかもね」
「運がいいかどうかはわからぬのぉ」
「きゃん」
「シルは、主人に出会えたから運がいいって言っておるぞ」
えぇ、シルちゃん、そんなこと言ってるんだ。
じゃあ、宝箱はシルちゃんに開けてもらおうかな?
私は抱えたシルちゃんの前足を掴んで虹色宝箱を開けてもらう。
出てきたのは――
「わぁ、綺麗!」
虹色のチューリップの鉢植えだった。
さすが虹色宝箱。
出てくるのも虹色なんだ。
拠点に帰ったら家の前に飾ろう。
今は使わないので保存する。
次に金色宝箱を開ける。
中に入っていたのは――
「お地蔵様の人形?」
よくわからない。
ツバスチャンに使い方を聞こうかな。
「宝箱っていうのは変な物が入っているのじゃな」
「うん、そうだね。あ、見て! 銀色宝箱にドッグフードが入ってたよ!」
シルちゃんが元気に尻尾を振っている。
うんうん、あとであげるね。
「もう一個の銀色は……雑草の束じゃな」
ナタリアちゃんが開けた銀色宝箱の中は草の束だった。
あれ? これもしかして――
道具欄に入れると――あ、やっぱりこれ、草は草でも稲の苗だ!
これを育てたらお米が食べられる。
「最後の宝箱は金――え? 茶色い宝箱が一番当たりじゃないの!?」
茶色宝箱には砂金が入っていた。
おかしい、茶色宝箱は一番価値がないって聞いたけれど、一番価値のあるものが入っていた。
少なくとも、砂金がドッグフードより価値がないなんてありえない。
これって、いわゆるゲームの不具合ってやつじゃないかな?
あ、そうか。
虹色宝箱と茶色宝箱の中身が入れ替わっちゃったんだ。
そう思うと納得した。
私が納得したところで宝箱が消えて、ダンジョンの外に出るかってメッセージが浮かんだ。
スライムを捜しに来たけどまだ見つかっていないので、断る。
とりあえず、ビッグスライムは邪魔だから保存しておこうかな?
と思って保存すると、そのビッグスライムの向こう側に別の扉があることに気付いた。
いまは開いている。
ここが一番奥じゃなかったみたい。
「ん…………重い、潰される……っ!」
「んん……スライムが、スライムが迫って来る……っ!」
あ、ヨハンさんとラスクさんが目を覚ましたみたいだ。
ラスクさんが寝がえりを撃って、ヨハンさんの上に乗っかっていた。
この様子だったら薬を飲む必要はないだろう。
「あれ? 嬢ちゃん。ビッグスライムは?」
「逃げたのか?」
二人が周囲を見て尋ねる。
「もう倒したぞ」
ナタリアちゃんが胸を張って言う。
「そうか、あれを倒したのか」
「凄いな、冒険者って。さすが魔物退治のプロだ。子どもの頃は夢見たことがあったけど、俺にはスライムブリーダーが天職だったようだ」
「俺もだ……」
二人が頷いている。
冒険者って、探検家みたいなものだってずっと思っていたんだけど、魔物退治のプロ?
うーん、今度詳しく聞いてみないといけないかも。
って、それより――
「あの、すみません。この先にスライムがいっぱいいるみたいです」
「「またビッグスライムか?」」
「いえ、行ってみないとわからないですけど、たぶん違うと思います」
ヨハンさんとラスクさんはすっかり自信を失っちゃったみたいだけど、ここまで来たんだから先に進む。
そこで私が見たのは――
「花畑?」
「それにスライムがいっぱいおるの」
白い花がいっぱい咲いていた。
それに、スライムもいっぱいだ。
「いなくなったうちのスライムたちだ! あ、品評会用のスライムもいるぞ⁉」
「これか――この花が爺ちゃんがそのまた爺ちゃんから聞いたっていう最強のスライムの餌か!?」
どうやら、スライム牧場のスライムたちは泥棒に盗まれたんじゃなくて脱走してここに餌を食べに来ていたみたい。
よくみるとあちこちに小さな穴が開いているから、スライムたちはボス部屋を通らなくてもここに来ることができたんだろう。
「ラスク、すまなかった」
「いいや、俺の方こそダンジョンを隠してるなんて疑って悪かったよ。それで、この花なんだが――」
「ああ、好きなだけ持って行ってくれ。ダンジョンは誰のものでもないからな」
ヨハンさんとラスクさんが仲直りした。
うんうん、よかった。
スライムたちも無事に見つかったし、これで一件落着だよね。
でも、なんでスライムダンジョンは封印されていたんだろう?
――――――――――――――――
今年一年ありがとうございました。
来年もよろしくお願いします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます