第41話 遊佐紀リンはレッドスライムと対峙する
ダンジョンの中に入っていく。
んー、雰囲気は前に来た時とあんまり変わらないな。
前に来たときは薬の材料とかはあったけれど、特にいいものはなかった気がする。
以前来たダンジョンは村の儀式のために使われるってだけで普段は使われていないようだったけれど、ここはどうなんだろ?
隠されている理由があるのかな?
ラスクさんはわざわざダンジョンに来たわけだし、きっとここがどんなダンジョンなのか知っているのだろう。
「ラスクさん、このダンジョンがどんなダンジョンなんですか?」
「伝説のスライムがいるダンジョンだ」
「スライムの餌があるダンジョンだ」
「スライムの餌?」
「ああ、品評会で優勝するために必要な餌だ」
品評会で優勝するための餌かぁ。
さっきグリーンスライムの時も食べるもので味が変わるって言っていたし、スライム牧場の人にとってスライムの餌は重要だよね
「俺のスライムちゃん! どこに行った! 痛くしないから出ておいでー」
ヨハンさんが猫なで声で逃げ出したスライムを探すんだけど、人間が通れないような小さな穴があちこちに開いていて、たぶんスライム専用の通路になっているんだろうなって思う。
「なぁ、あんた。スライムが逃げ出したとかどっちに逃げたとか言ってたけど、魔物の場所がわかるのか?」
「一定の範囲なら。でも、私は知ってるスライムと他の魔物の区別はつきませんよ」
「それでもかまわないから探すの協力してくれよ。俺もスライムブリーダーとして、放っておけない」
さっきまでスライム泥棒扱いされていたラスクさんが言う。
なんだ、普通にいい人じゃん。
「もちろんそのために来たんですよ。とりあえず、この辺りにはいないみたいですから、奥に行きましょう」
私はそう言ってダンジョンの奥に行くのを促す。
みんなでダンジョンの奥に行く。
それにしてもダンジョンって地下なのに明るいよね。
この不思議な現象、日本で利用できたら光熱費削減になる。
太陽光発電みたいに電気に変えられたらものすごい便利そう。
あ、でもダンジョンって魔物が湧くんだよね。
さすがに日本にそんな場所があったら危ないか。
無人島とかならどうだろ?
海を泳げない、空を飛べない魔物しか出ないのなら、そういう場所にダンジョンがあってもいいかもしれない。
パイプを使ってエネルギーだけを運んで……ああ、ダメだ。
映画だと小さな綻びが原因で、世界が大変なことになる悪知恵だ。
「リン、どうしたのじゃ? 随分と顔色が悪いが」
「ううん、なんでもない。それより、あっちに五匹、魔物がいるみたいです」
地図で近くの敵を見つける。
ヨハンさんの足が少し速くなり、しまいには走るように向かった。
魔物がいるってことは、逃げたスライムも危ないよね。
私たちも追いかける。
そこにいたのは――
「スライム?」
逃げ出したスライムじゃない。
全部赤色のスライムだ。
そのスライムを見てラスクさんが言う。
「レッドスライムだ」
「どんなスライムなんですか?」
「赤いスライムだ」
「いや、それは見ればわかりますよ。どういうスライムなんですか? 火を噴くとか体温が高いとか食べると辛いとか」
「いいや、ただ色が赤いだけで能力は他のスライムとは変わらない。食べるものが――」
「食べるもの……もしかして人間の血を好むとか!?」
赤いのはそのため⁉
私は咄嗟に銃を構えた。
吸血スライムなんて恐ろしい。
「腐ったものばかり食べるから臭いんだ」
そう言われてみればものすごく臭い。
私は気が抜けて思わず銃をぶっ放した。
レッドスライムが弾けた。
さらに臭いが広がった。
これ、殺したらもっと臭くなる奴だ。
鼻をつまんで口呼吸しても臭い。
臭いが口の中から入って来る。
「
ナタリアちゃんが魔法を使うと、風が渦巻き、臭いをどこかに流していった。
「リンよ、無闇に殺すでない」
「うぅ、ごめんなさい」
私は涙目(怒られたからではなく、臭過ぎて)で謝った。
「なんだ、いまのは? 投石じゃないよな」
「魔法か? 詠唱か? でも詠唱がなかったぞ」
「あんなちびっこでも冒険者なんだな……」
それと、銃で悪目立ちしちゃったな。
私は戦闘員じゃない、ひ弱な女の子のアピールをしないと。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます