第25話 遊佐紀リンは武器を開発する
ツバスチャンに拳銃の扱い方を一通り教わった私は、完全防音の部屋の射撃場で拳銃を放つ。
銃弾は鉄塊から鉄の銃弾が一ダース開発されたからそれを使った。
結果――
「肩が痛いよ。耳が痛いよ。腕が痛いよ」
素人が見様見真似で拳銃を扱った結果、その反動と銃声に一発でダウンした。
ポーションを飲んで治療した――あ、甘い、うん、素材に砂糖を加えてシュガーポーションにしたのは正解だった――ので痛みは引いたけれど、私は一発で拳銃が怖くなった。
それだけだったらまだいい――よくないけど。
私が狙った的の二つ隣の的に命中しているのが問題なんだ。
こんなんじゃ実戦では使えない。
ド〇えもんでの〇太君が西武時代に行ったとき、バンバンと本物の銃を撃ってたから余裕かと思ったのに、まさか銃がこんなに難しいなんて。
の〇太君が射撃の天才って言われる理由がよくわかるよ。
「お嬢様は聖剣の勇者ですから、聖なる武器以外を扱うのが苦手なのですよ」
「慰めてくれてありがとう、ツバスチャン」
「いえ、事実を申したまでです。なのでお嬢様はその銃を聖剣――いえ、聖銃として開発し直すべきですね」
「え?」
聖銃に?
でも、開発欄にはそんなものなかった気がする。
「まずはこちらを――」
「これ……木の剣?」
「はい。最初の聖剣――蒼の木剣でございます。本来であれば、この剣を強化、変化させて最強の武器を生み出すのがお嬢様の持つ
蒼の木剣を道具欄に収納。
開発画面のジャンルに聖剣が追加された。
蒼の木剣と拳銃を元にして、白の聖銃が開発できた。
なんと、開発時間0秒。
「これが私の聖銃?」
真っ白い銃身の拳銃だ。
なんだろう、初めて触った感じがしない。
さっきよりも軽いし、握ってみるとしっくりとくる。
これが私の武器なんだ。
私はさっきと同じように、的に向かって聖銃を構える。
引き金に指が伸びた。
銃声は先ほどより小さい。
腕と肩への反動もさっきよりマシだ。
銃弾は的のど真ん中に命中した。
「ありがとう、ツバスチャン! 私の武器ができたよ」
「それはよかったです、お嬢様。あとは狙った的に当たりさえすれば武器として使えそうですね」
「あ、やっぱり?」
的に命中したのはいいんだけど、狙った的と別の的なんだよね。
でも、さっきは二つ隣、今回は一つ隣。
確実に成長している。
その後、練習は続き、十発の銃弾を撃ち終えたところで、なんとか一発だけ的に当てることができた。
二発は自衛用に残しておこう。
「練習につきあってくれてありがとう。ところでツバスチャン。ダンジョンの銀色宝箱から樽と鶏と技術書が出てきたんだけど、使い方ってわかる?」
「はい。樽は発酵食品を作るために必要な道具です。私に預けてくだされば、素材をもとに様々な発酵食品ができますよ」
「発酵食品? 納豆とかチーズとか?」
「はい。他にもお酒や紅茶、ヨーグルトなどですね。お嬢様の場合開発を使っても作ることはできますが、大量に作る場合では開発では時間がかかり過ぎますので」
「へぇ、そうなんだ。あ、じゃあ村で採れた麦からお酒を作って村人たちに振舞うこともできるんだね」
「可能でございます」
この周辺の村ってお酒があんまり造られていないんだよね。
中世ヨーロッパだとワインを水代わりに飲むって言ってたけど、そのワインもかなり貴重らしい。
だったら、麦酒をプレゼントしたら喜ばれると思う。
さっそく、麦酒作りを頼むことにした。
通常、酒造りには一日かかるそうなんだけど、ツバスチャンの能力を使えば百倍速、十五分弱で麦酒が作れるらしい。
「鶏は私に預けてくだされば、庭で飼育致しましょう。毎日新鮮な卵が一つ手に入ります。しっかり衛生管理も致しますので生で食べるのおも可能ですよ」
「おぉ! ご飯さえあればTKGも可能なんだね!」
海外では卵の生食は危ないって言うけど、ツバスチャンの力があればそれも可能なんだ。
あとはお米かぁ。
どこで手に入るんだろ。
「最後に技術書ですが、使用すれば能力を入手できます」
「手加減っていうのは?」
「手加減の能力を使うと、どんなダメージを与えても相手を殺すことができません。相手を生け捕りにしたり、拷問したりするときに使えます」
「ごうも……えっと、どうすれば覚えられるの? 読めばいいの?」
「いいえ、使うと念じてくださればそれで覚えられます」
そうなんだ。
私は技術書を取り出して「使う使う使う」と念じた。
特に変わった気はしないけれど、ステータスを見ると能力に手加減が追加されていた。
最初に覚えた戦闘用の能力が手加減か……戦いで手加減してもらいたいのは私の方なんだけどね。
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