第20話 遊佐紀リンはボス部屋に到着する
休憩を挟みながら、最下層のボス部屋に行く。
今回のイチボさんとジナボさんの勝負、イチボさんは負ける気満々なんだけど、あまりにも二人のダンジョン攻略速度に差が出ると、イチボさんがわざと負けようとしているのが明らかになるので、時間を調整しながらダンジョンを潜らないといけない。
そして、もうすぐボス部屋というところまで来た。
「あ、この先に魔物がいますね。三体です」
魔物の他に、スコップのマークもついているんだけど、なんだろ?
砂場?
「そうか……聖女様の能力は凄いな。後ろからは来ていないんだな?」
「はい」
「じゃあ、ここで待っていてくれ」
イチボさんが三体の魔物を倒しにいった。
ステータスと道具欄を確認する。
エミリさんも頑張っているらしい。
レベルが12になったし、剣術と槌術の技能レベルも上がっている。
それに、道具やお金もいっぱい増えた。
「聖女様、こっちに来てくれ!」
イチボさんが声を上げる。
魔物は倒せたらしい。
呼ばれて行ってみると、いろんな草が生えていた。
そうか、スコップのマークは薬草が生えている場所なんだ。
薬草だけじゃなくて、果物とか野菜とかも含んでいるかもしれない。
「採取していいですか?」
「ああ、まだ時間があるだろう」
イチボさんに許可を貰って採取していく。
凄いな、いろんなものが作れるようになった。
胃腸薬とか頭痛薬だけじゃなくて、腹下しとか催吐薬とか猛毒薬とか危ないものもある。
とりあえず、全部開発していく。
「そういえば、イチボさん。ここのボスってどんな魔物なんですか?」
「ここのボスはフェアリーイーターだな。フェアリーを食う魔物だ」
「フェアリー!?」
え? フェアリーって妖精だよね?
ファンタジー世界だもんね、妖精がいてもおかしくない。
そして、そんなものを食べる魔物がいるんだ。
嬉しいような恐ろしいような。
妖精は見たいけれど、妖精を食べる魔物なんて見たくない。
「聖女様、この辺りに魔物はいないんだな?」
「はい、いません」
「そうか。じゃあ聖女様はこの辺りで採取を頼む。俺はボス部屋までの道を確保するよ。ジナボの様子も気になるからな」
「わかりました」
ということで私は採取を続ける。
そして五分くらいしてイチボさんが帰ってきた。
「ボス部屋を見つけた。すぐそこだ。もう地図は必要ない」
「本当ですか? じゃあ行きましょう」
私は地図を閉じた。
ボス部屋の前に私はやってきた。
ボス部屋の前は安全地帯という魔物が現れない場所になっているので休憩にちょうどいいらしい。
この通路の奥がボス部屋らしい。金属の扉が見える。
手前にも扉があるが、それは開いている。
「ボス部屋の奥の扉が閉まっている?」
「中でエミリさんたちが戦ってるんですか?」
「いや、ボスと戦うときは手前の扉を通る。暫くすると手前の扉が閉まり、そして奥の扉が開く。中で誰かが戦っている間は扉は開かない。そしてボスが死んだら次のボスが現れるまでは両方の扉が開いている」
つまり、奥の扉だけが閉まってるってことは、まだボスと戦っていないってことなのか。
「ここで待ちます?」
「いや、ジナボは真面目だからな。俺たちがここで待ったら俺たちの方が先に来たから先にボスと戦う権利は俺たちにあると言い出す。少し手前で待とう」
「わかりました」
暫く手前の部屋で様子を見るが、エミリさんとジナボさんが来る気配がない。
どうしたのだろう?
途中で怪我でもしたのだろうか?
もしくはボス部屋でフェアリーイーターにやられたのだろうか?
不安が募っていく。
そうだ、地図を見ればいいんだ。
さっきまで当たり前にしていたのに、地図を閉じてしまったせいでうっかりしていた。
さっき閉じた地図を確認する。
「――――っ」
私は気付いた。
「イチボさん、来てください!」
「な、聖女様、どこに行くんだ!」
「いいから早く!」
私はイチボさんの前に出て走る。
そして、安全地帯を通り過ぎて、そして通路を曲がる。
「エミリさん! ジナボさん!」
「リン!? 何故私に」
「聖女様っ!?」
追いついてきたイチボさんも気付く。
「ジナボ! なんでお前が――ずっとここにいたのか! まさか、戦いにわざと負けようと――」
「ああ、そうだ! 村長はイチボ兄さんがなるべきだ! 戦えない僕ではなく、いつも強いイチボ兄さんが!」
「お前、違うだろう! 村長に必要なのは強さじゃない! 頭の良さ――」
「黙ってください!」
言い争う二人を私は止めて、そして叫ぶ。
「急いでボス部屋に行きます! 誰かが魔物に捕まっているんです!」
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