第11話 遊佐紀リンは告白する

 村の人から野菜をいっぱい分けてもらったので、野菜を使って調理する。

 収穫した野菜の中にピーマンがあったから、ピーマンの肉詰めを作ろうかな?

 道具欄にあるお肉はオオカミ肉、カエル肉……あぁ、うん。

 エミリさんに頼んでイノシシ肉を分けてもらおう。

 頼んでみたら、好きに使っていいって言ってくれたので、内臓脂の部分でラードを作る。


「お嬢様、そちらのイノシシのお肉、私がミンチに致します」

「ありがとう、コンシェルジュさん」

「いえいえ、この程度させていただきませんと――」


 コンシェルジュさんがスパパパパとイノシシ肉をミンチにしていく。

 ミンサーがないから時間がかかるかと思ったけれど、コンシェルジュさんのおかげで早くできた。


「はい、エミリさん、できましたよ! 昨日はお疲れ様でした。コンシェルジュさんが焼いてくれたパンがありますから、一緒に食べてくださいね」

「…………」


 あれ? エミリさんの顔色が優れない。

 もしかして――


「エミリさん、ピーマン嫌いでしたっ!?」

「いや、そうではない。リン、いったい君は何者なんだ?」

「え? えぇと……」


 なんて言ったらいいのかな?


「本来は詳しく聞くつもりはなかった。だが、この家といい、畑のことといい謎が深まるばかりだ。正直言って、普通ではない。リン、君は本当に聖女なのか?」

「聖女……ではありません」


 そう答えるのがやっとだった。

 どうしよう。

 エミリさんに正直に言うべきだろうか?

 彼女は私にとって命の恩人だし、頼んだら黙っていてくれるよね。


「私は――エミリさんっ!?」


 突然、目の前にいたエミリさんが左腕の包帯を押さえた。


「大丈夫ですか」

「だ、大丈夫だ。コンシェルジュ殿、すまないが私の鞄の中の包帯を取ってくれるか?」

「はい、こちらでございますね」

「ああ」


 エミリさんは鞄を受け取ると、右手だけで鞄を開け、中から包帯を取り出す。


「リン、せっかく食事を用意してもらってすまないが、湯を借りてもいいだろうか? どうもカエルの毒にあたってしまったようでな。身体を清めたい」

「は、はい」

「風呂の準備はできています。洗濯物があれば白いカゴにお入れください」

「ああ、すまない」


 コンシェルジュさんがエミリさんに付き添ってお風呂までいく。

 大丈夫だろうか?

 私にできることは――そうだ!


 毒が原因だっていうのなら、貰った薬で開発で薬を作れないかな?

 開発画面を見る。

 ってあれ? いっぱい作れる物が増えてる。

 野菜ジュース? 梅干し?

 そっか、村の人に貰った野菜とか梅の実も入れたからそのせいだ。

 へぇ、梅干しも作れるんだ。

 作れる物一覧だけじゃ絞り切れないけれど、サブ項目に薬って指定すると、作れる薬だけが表示される。


 あったあった、解毒ポーション、たぶんこれが解毒薬だよね――え? 製作時間5分?

 小麦粉は一瞬でできたんだけど。

 とりあえず、作ってみる。

【0:04:59】

【0:04:58】

【0:04:57】

 あぁ、薬が完成するのに五分かかるんだ。

 でも、解毒ポーション以外は作れるみたい。

 他にも回復ポーションとか魔力ポーションとかもあるので、作れるものを作ってみる。

 いろいろ薬があるな。

 背が伸びる薬や胸が大きくなる薬が見つからない……いや、使わないよ? それを使ったらなんか負けた気がするし(誰に?)。

 作れる薬一覧を見るだけでも楽しいな。

 風邪薬、胃腸薬、酔い止め薬等々。

 効果はどのくらいなんだろ?

 もしかして、どんな風邪でも一瞬で治っちゃう薬とか?

 そんな薬があるのなら、ノーベル賞医学賞とれちゃうよ。


「え……こんな薬まであるんだ。さすが異世界」


 作れる薬は全部作る事にした。

 使わないにこしたことがないけれど、常備薬のようなものだ。

 薬草が足りなくなってきたので、また今度貰ってこよう。


「すまない、待たせたな――」

「エミリさん、大丈夫ですか……って、その姿、どうしたんですか!?」

「笑わないでくれ。コンシェルジュ殿が着替えの服を用意してくれたのだが、それがこれだったのだ」

「笑いませんよ。とてもかわいいです!」


 着ていたのはフリフリのドレスだった。

 エミリさんはスタイルがいいから、なんでも似合うよね。

 東京ガールズコレクションのランウェイを歩いていてもおかしくないもの。

 って、そうじゃなくて、話すんだ。

 私が異世界から来た人間だって。


「エミリさん、あの、私――」

「リン、君はかつて、異世界から勇者が召喚されたことを知っているか?」


 ……え? もしかして、もうバレている?


「はい、聞いたことがあります」

「……実は私は勇者だ」

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