どんどこどーん‼︎


 復活を果たしてしまった悪魔の王ソロモン。実は、死ぬ気で頑張ればノア単騎でも勝てるが、それでは俺が過労死してしまう。


 折角メイン火力がいるのであれば、俺がサポートに回る方が効率はいいし、早く終わる。


 という事で、俺は山の中に入ると早速アランやレオナそしてやる気満々の第四魔王軍の面々に“森羅万象、我はここにザ・デウス”を使う。


 これで全能力値10%アップ。いつも使っていて思うが、このスキル馬鹿げてるだろ。


「本当は隣に立って戦いたいんだがな.......紙耐久過ぎて安全な後方からじゃないと戦えないのは残念だ。運ゲーに頼り続ける訳にも行かんしね」


 これが主人公の相棒であれば、隣に立って背中を守ってあげられるだろう。


 しかし、ノアはこの性能的にそんな立ち回りをするとあっという間に死んでしまう。


 俺はどこまで行っても体が弱いのだ。そんなんだからお姫様扱いされるだけではなく、ほんとうにお姫様の格好までさせられる。


 レオナやアランの隣に立ちたいという気持ちはあれど、現実的にそれは無理。このもどかしさは、ノアの最大の欠点かもしれない。


「先に眷属から倒せとの事だ。全く、一体どこでその情報に入れたんだろうな?」

「にゃはは。ノアが不思議なのは今に始まったことでは無いですにゃ」

「それもそうだな。さて、わざわざノアが私の為に舞台を作ってくれたのだ。本気でやるとしよう」

「私達も援護しますにゃ。幸い、ノアの加護が付いているので、随分と体が軽いですしね」

「そっちは任せるぞミャル。指揮官はお前だ。私とアランに合わせて、上手く動け」

「いつも通りってことですにゃ。総員!!眷属の悪魔から各個撃破しろ!!注意点は聞いたな?!散開!!」


 レオナの近くに潜ませたネズミが、会話の内容を盗み聞きする。


 どうやらミャル達も戦闘に参加するようだ。


 既に市民の避難はほぼ完了しており、あとは好き勝手に暴れるだけ。街は既に半壊しているので、全部ぶっ壊れても変わらんやろみたいなノリで暴れ始める。


 いいのかそれで。いや、そうでもしないと倒せない相手ではあるけども。


「では私も行くか。頼んだぞノア」

「任せろ」


 俺がどこかで見ているという事を察しているのか、俺に向かって言葉をかけるレオナ。


 彼女は目隠しを取ると、その澄んだ青い目を光らせながら街中で暴れようとする眷属悪魔達に向かって剣を抜く。


 レオナやアラン、そして、第四魔王軍の動きを見ながら必要なサポートに回らないとな。


 これは重労働になりそうだ。


 俺は何度も何度も素早く視点を切りかえつつ、眷属悪魔達を補足したと同時にスライムをと剣を降らせる。


 スライムは弱く、あっという間に死んでしまう存在であるが、ネバネバとして気持ち悪く相手の動きを少しでも封じることが出来る。


 ゲームの中では使えなかった手法だが、このスライムの雨は意外と実用的であった。


 要は空からスライム風呂が降ってきてるようなものだしな。


 物理的に押しつぶすのは難しくとも、スライムの粘液で動きを鈍らせるぐらいは簡単だ。


 そして、動きが鈍ったところにいつでもどこでも剣の雨。


 少しでも体力を削っておけば、それだけで相手をする仲間たちへの負担も減らせる。


「うをっ?!」

「キェェェェェ!!」


 高速で視界を切り替えていると、突進を受け止められたブロンズが反撃を貰いそうになっていた。


 全く。突進しか脳がないのかお前は。タンカーとしては優秀なのだが、今回の相手はダメージを貰ったらダメなんだよ。話を聞いていなかったのか?


「後でレオナに怒って貰うか。俺の仕事を増やすな馬鹿野郎」


 俺はそう呟きながら、大量のスケルトンを召喚して骨の壁を作る。


 そして、スライムを降らせ、次いでとばかりに剣の雨も落として少しでも悪魔の動きを鈍らせようとする。


 もちろん、この程度で悪魔が止まる訳もない。だが、僅かに動きが鈍くなれば第四魔王軍の面々は確実に動いてくれる。


「どんどこどーん!!」


 ドゴォォォォォォォォォォォン!!


 どこがで聞いた事があるその声とともに、僅かに動きが鈍った悪魔が爆破される。


 近くにいたブロンズは吹っ飛ばされ、盾となったスケルトン達は一体も残らずに消し炭となった。


「アッハッハッハッハッ!!やっぱり本物の的があると撃ち甲斐が有るねぇ!!ノアちゃんやアランくんも居ないから、タバコを吸いながら好き勝手に魔法が放てるのは最高だ!!」

「おいこらプルート!!俺まで殺す気か?!」

「あん?レオナ軍団長は“攻撃を受けるな”って命令していたのに、考え無しに突っ込んだお前が悪いんだろうが。姫様の手間で煩わせやがって。吹っ飛ばされて頭でも冷やせ」

「吹っ飛んだら普通は死ぬんだよ!!俺じゃなきゃあの世行きだったぞ!!」

「細けぇな。細かい男は嫌われるぜ?ほら、こういう時は深く考えずにぶっぱなせばいいのさ!!そうら!!もういっちょ!!どんどこどーん!!」


 ドガァァァァァァァァァン!!


 ヤニカス姐さんことプルートは、そう言いながら次から次へと高火力広範囲の魔法をバカスカ打ちまくって悪魔達に着実なダメージを与えていく。


 街をぶっ壊してもいいと言われて楽しくなっているのが、ニヤニヤ笑いながらとにかくデカイ魔法を撃ちまくっていた。


 その口から煙がモクモクと出てなかったら、かっこよかったのに。いや、これはこれで様になるが、今のプルートはやに臭そうだ。


「アッハッハッハッハッ!!姫様の加護があるお陰か、普段よりも魔法の威力が高くて楽しいな!!ほらほらほら!!どうした悪魔共!!もっと私に魔法を撃たせろ!!」

「完全にキャラが変わってるじゃん。誰だよあれ」


“どんどこどーん!!”と、叫びながら、あっちこっちを爆破しまくるプルート。


 やっていることは滅茶苦茶だが、選択している魔法は的確だし何より広範囲高威力の技が多いから複数の悪魔を巻き込んでダメージを与えている。


 あ、悪魔の1人が塵となって消えた。


 あれ?おかしいな。アランやレオナよりも悪魔を倒す速度が早いぞ?


「ま、まぁいいや。殲滅してくれる分には文句もないし、好きにやってくれ。守ってはやるから」


 瞬間火力だけで言えば実はプルートが1番なのではないかと思いつつ、俺は他の戦場にも目を向ける。


「フッ!!」

「キェェェェェ?!」


 アランも問題は無さそうだな。ダメージを貰わないように安全マージンを取りながら、的確にダメージを悪魔に与え続けている。


 かなり堅実な立ち回りで、少しでも距離が離れたら魔法で牽制し近づいてきたら大きなダメージを与える戦い方をしていた。


 そして、レオナも問題なし。本気になったレオナはプルートより少し遅いぐらいの速さで悪魔たちを殲滅している。


 サポートしようと思っていたのだが、正直レオナが強すぎてサポート出来る場面がない。


 俺がやれるのは、精々悪魔達の足止めと、剣を振らせながらレオナのフィールドを作るぐらいであった。


「これなら眷属悪魔は問題ない。あとは、あの化け物を倒すだけで終わりそうだな。それが問題なんだけどさ」

「どんどこどーん!!」


 ドガァァァァァァァァァン!!


 あーあー、プルートが魔法を使う度に街が崩壊していく。


 どっちが悪魔が分かりゃしない。最早、プルートの方が悪魔だろこれ。


「出来れば、2度目のレーザービームは撃たせたくないな。確実に死人が出る。出来れば早期決着が望ましいけど........今の第四魔王軍が総出で掛かっても厳しそう。となると、無理やりヘイトを集めるか」


 悪魔の王の体力は馬鹿みたいに多い。そして、あのレーザーは時間で撃ってくる。


 レーザーの威力は限界まで育成したフルタンクのHPを半分以上も削るのだ。


 第四魔王軍の面々に放たれれば、まず間違いなく死ぬ。


 止めるのは不可能となれば、俺にヘイトを向けさせて運ゲーをした方がいいだろう。


「運ゲーしようぜ悪魔の王。どっちが神に愛されているのか、勝負だ」


 俺はそう言うと、眷属悪魔が殲滅されるまでみんなのサポートを続けるのであった。



 後書き。

 プルート「どんどこどーん‼︎」

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