順調な反乱
反乱軍の狼煙が上がり、遂に反乱イベントが始まった。
メインストーリーであれば俺の隣を走るチート勇者によって全て制圧されてしまうのだが、今回そのチート勇者は反乱軍勢力として参加する。
本当は街の中に潜んでいた方が良かったのだが、このイケメン野郎はあまりにも目立ちすぎるので、外からやってくるのだ。
しょうがないよね。こんなにも可愛くイケメンな美少年がいたら目立つよね。
誰もが目を引くほどに美しいアランの容姿は、存在しているだけで目立ってしまうのだ。
何故か魔王国だと俺の方が目立っているのだが。
「門を破る。ノア、剣を」
「ほい」
山を駆け下り、爆走した俺達は固く閉ざされた城門を前にする。
現在は結界が張られている状態では無いところを見るに、反乱軍は順調に街を制圧出来ているのだろう。
俺は、レオナの指示に従って剣を召喚するとレオナに渡す。
この程度のもんであれば、1本で十分だ。
レオナは剣を思いっきりぶん投げると、門に突き刺す。そして、あのイカれた武技を発動させた。
「【無限戦舞】絶剣“破壊斬”」
ドゴォォォォォン!!と、とんでもない爆音と共に、城壁が崩れさる。
俺はそれと同時に召喚魔法を使い、市民たちが外へと逃げるための道を作った。
スケルトンによる避難路。人によっては恐ろしさのあまり立ちすくんでしまうだろうが、魔王軍がそこら辺は上手くやってくれるはず。
そんなことを思いながら街の中に入っていくと、思っていた以上に街の中は混乱していなかった。
先に反乱軍が先手を取ったと言うのもあるが、魔王軍の面々がかなり上手く市民を誘導して避難させている。
もちろん、魔人族の言うことなんか聞けるか!!という人達もいたが、多くの人たちは避難指示に従っていた。
その中に人間の兵士たちが混ざっていると言うのも大きな理由かな。反乱軍だ!!と叫び、彼らはとにかく市民を落ち着かせながら避難誘導に務めている。
「守備はどうだ?」
「にゃ!!今ところは問題ありませんにゃ!!私たちの指示に従わない人も多いですが、そちらは反乱軍に任せていますにゃ!!」
「そうか。なら、引き続き避難誘導に勤めろ。それと、ノアが道を作ってくれた。その通りに進めば、安全な場所まで行けるはずだ」
「了解いたしましたにゃ!!」
ビシッと敬礼を決めるミャルは、しっかりと指示を出してくれるレオナに感動しているのかこんな時でも目がうるんでいた。
頼むから戦争の時は、レオナの言動に感動するよりも先に頑張って仕事をしてくれよ。
隣で命令を聞いていたブロンズ、お前もだぞ。
こんな時でも魔王軍らしいノリを披露する彼らに呆れながらも、一番騒がしい城に向かって俺たちは再び進む。
王は恐らく既に逃げている。騎士団長に護衛を任せながら、城にある抜け道を走っているはずだ。
俺たちはそこを付く。本来遠い場所からチクチクとしているのがお似合いな俺がこの場に来ているのは、狭い秘密の通路では視界の確保が難しくレオナの援護がしにくいからだ。
後、王からあるものを取り上げなければならない。
やつが錯乱してそれを使ってしまったら、かなり悲惨な事になる。
口頭で伝えても良かったのだが、言われて分かるものでも無い。
俺の目でしっかりと確認しなければならないのだ。
「ノア、場所は?」
「こっち。この城の外にあるこの石を少し押せば........ほらあった。王族専用の隠し通路だ。逃げるためだけに作られた場所だから、ここを必ず通るよ。貴族パーティーで使われた部屋から通じる部屋は、ここしかないからね」
「これもネズミ達を使って調べたの?」
「まぁな。偵察には本当に向いている魔法だよ。この戦争が終わったら、偵察兵として仕事をするかね」
嘘です。本当はDLCでアランがこの国に攻め込んだ時に明かされた通路なんです。
この場所以外にも抜け道があった場合は、出会わないことになるな。
多分それは無いとは思うけど。
「ここにノアとアランが世話になった騎士団長もいるのか。やつは私が殺す。幸い、この通路は狭くて戦いやすそうなのでな」
「頼んだよレオナ軍団長。剣の補充は幾らでもできるから任せてね」
「僕は副団長の相手だっけ?」
「そうだ。ま、そっちはそこまで強くないはずだぞ」
何せ、リバース王国にアランが攻め込んだ際、一瞬でボコボコにされていたからな。
戦闘にすら入らず、まじで一瞬でボコられてて少し可哀想だったぐらいだ。
とは言えど、油断していい相手ではない。俺はレオナとアランのサポートをしつつ、外の状況も把握して必要なら手助けしないとな。
今の所反乱はかなり順調であり、次から次へと貴族達が捕まえられては牢獄へとぶち込まれている。
この調子で行けば、あっという間に反乱軍の勝利。あとは、王を捉えて民衆の前で殺してしまえば終わりとなる。
「では行くぞ。民を苦しめ、反乱を招いた王に価値はない。魔王様を見習った方がいいな」
「いや、魔王様を見習うのはダメでしょ。あれ、一歩間違えたら反乱が起こるよ」
「あはは!!確かにそれはそうかも。あれは加減を理解している魔王様だからこそできる芸当だよね」
ほんと、イタズラに関してだけ言えば、天才的な塩梅をしていやがる。
相手が嫌だなとは思うけど、本気で嫌になるようなことはしないという、なんとも言えない絶妙な塩梅でイタズラしてくるのは勘弁願いたい。
ドレス着るのは嫌だったけど、マジで嫌という訳でもないとかそこら辺を見抜いてこないで欲しいよ。
俺はでもやっぱりムカつくから帰ったら理不尽に殴ってやろうと心に決めると、隠し通路へと足を踏み入れるのであった。
【隠し通路】
城の中にある王族が逃げるための通路。幾つか用意されており、今回のような反乱などの時に逃げられるように設置されている。
リバース王国の王女、リーシャ・リバースは唐突に起きた反乱に戸惑いを隠せなかった。
アランが消えてからというもの、リバース王国内部が不穏な空気なのは感じていたが、ロクな権力を持たないリーシャに何か出来る訳でもない。
貴族のパーティーに出席し、今日は少し料理の出来が良くないと思いながら貴族たちの相手をしているとレジスト公爵家が反乱を起こしたのだ。
もちろん、王女であるリーシャも狙われるもそこは騎士団長の手によって守られる。
そして、父からあるものを受け取り、包囲網を何とか抜け出してある場所へと向かっていた。
「はぁはぁ。一体何がどうなっていのですか?反乱?この国の貴族として最も恥ずべき行為である王族への宣戦布告をしたのですか?」
良くも悪くも、リーシャは箱入り娘であり外の世界のことをよく知らない。
特に、リバース王国という小さな箱庭の、更に王都という小さな箱庭しか見てこなかった彼女は民の苦しみを理解出来なかった。
自分たちの今の暮らしが、民からの税であることは理解していても、民の暮らしを見なければその苦しみは分からない。
本来であれば、アランと共に外の世界を見てゆくはずのリーシャだったが、その成長の機会を奪われてしまったのである。
「貴族として王族の力になる。そう教えられてしましたのに........貴族が王に剣を抜くなど、あってはならないはずですのに!!」
ある種、彼女もリバース王国の被害者だろう。しかし、王族という立場がそれを許さない。
あれ程までの剣幕を見てしまっては、幾ら頭の中がお花畑のリーシャでも殺されるとわかる。
そして、リーシャはどうすればいいのか分からず、とにかく兵士達の目から逃れつつ逃げるしか無かった。
「誰か、誰か助けて........!!」
その声が絶望を呼び寄せるとは知らず。
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