姫様とデートがしたい‼︎
レオナにとってノアとは特別な存在だ。コミュニケーション能力がかなり低く、冷たい口調だった彼女にもの応じせずに話しかけ、圧にすら耐えられる少年。
しかも、レオナにとっては初めての直属の部下であり何かと可愛がってきた存在である。
そんなノアと毎日話す中で、レオナはノアの事をかなり意識していた。
それもそのはず。初めての部下を持った上司が、その部下を可愛がるのは当たり前である。
それも、素直で可愛い(内面、外見)ならば尚更だ。
そして、その感情の行先は徐々に大きくなり始める。
レオナはノアを部下以上の存在として見始めていた。
優しくそして、勇敢な戦士にしてレオナの剣。まるで自分のやりたいことが分かっているかのように、阿吽の呼吸で合わせてきたあの勇者との激闘は今でも夢に見る。
そんな少しづつ変わり始めたレオナであったが、彼女はまだまだ成長途中。
気になる姫様をどのように可愛がればいいのか、それが分からなかった。
(どうしたらいいんだろう?お食事に誘いたいんだけど、断られたらとか考えると緊張しちゃうよォ........)
魔王軍の会議。久々にマトモに使われている円卓会議の場で、ノアの作成した報告書を広げるレオナは上の空であった。
日頃の感謝も込めて、レオナはノアを食事に誘いたい。しかし、誘い文句が分からない。
アランやニーナも一緒に誘えば簡単なのだが、レオナはどうしても二人きりでノアとの時間を過ごしたかった。
(なんて言えばいいんだろう。私、話す時はどうしても言葉が硬くなっちゃうし........)
「レオナ........レオナ!!」
「........はぁ」
「おい、こいつ今妾に呼ばれて溜息を吐いたぞ?とんでもない態度の悪さだ。誰じゃ!!レオナを教育した親は!!」
「既に居ないだろ。それと、魔王様に話しかけられたら皆ため息が出るよ。レオナの反応は間違ってない」
「間違っていませんね。レオナさんが正しいです」
「今のは魔王様が悪いな」
「魔王様が悪いですな。私も同じ反応をするかと思いますよ」
「ま、魔王様........ちょっとざまぁ」
「ファー!!妾、今回は結構まともなことを言ったのに殴られたぞ?!妾、の扱い酷くない?酷すぎない?!」
会議中にもかかわらず、上の空で話を聞かないレオナを見て注意しようとした魔王が逆におもちゃにされる。
魔王は口では反論しつつも、“まぁ、そうだよね”とは思っていた。
魔王も自覚はしているのだ。自分がかなりウザがられているということを。
しかし、だからといって辞めることは無い。何故ならば、そのウザそうにしている反応を見るのが楽しいからである。
「日頃の行いが悪いからな。でも、レオナがここまで人の話を聞かないのも珍しい。どうしちまったんだ?」
「確かにそうですね。何があったのでしょうか?」
「レオナや。久々に真面目な会議をしておるというのに、お主は何を考えておるのだ?言うてみ?人に話して楽になる事もあるのじゃぞ」
普段真面目なレオナがここまで上の空で考え事をするのも珍しい。さすがに気になってしまった魔王軍幹部と魔王は、レオナから話を聞き出そうとした。
もしかしたら、滅茶苦茶面白いことになるのでは無いのかと。
そして、困っていたレオナは相談してしまう。まだ部下であるミャルやブロンズに相談した方がマシだったのだが、この時のレオナは正常ではなかった。
「実は、ノアをデートに........間違えた。食事に誘いたいんだ。が、なんて言えばいいのか分からなくてな」
「「「「「「........」」」」」」
一気に静まりかえる円卓会議場。
その数秒後、全員がレオナの言ったことを理解して驚愕の顔を浮かべた。
あのレオナが。あのコミュ障で誤解しか与えないレオナが。ぬいぐるみ相手に会話の練習を毎日しているレオナが。
あの【無限剣聖】と呼ばれた戦場の鬼神レオナが。
我らがアイドルにして、絶対的な存在感を持つノアを食事に誘いたいと言ったのだ。
しかも、本人はデートのつもりで。
人は驚きすぎると何も言えなくなる。普段ならば“はぁぁぁぁぁぁ?!”とか言っていたはずの魔王軍幹部達もこの時ばかりは口を大きく開けて固まるだけであった。
「わ、妾の聞き間違いか?今、デートとか聞こえたのじゃが」
「私も聞こえた。集団幻聴か?あのレオナが?あれ、なんでだろう。なんか涙が出てきたんだけど........」
「グスッ、レオナさんが。レオナさんがァ........」
「やべ、俺も前が霞んできた。なんでだろう........」
「昔から知っているだけあって、なぜだか感動を覚えますね。息子が結婚報告をしていた時と同じぐらい感動していますよ今」
「僕もなんだか泣けてきた........レオナさん。大きくなったんだね........」
あまりにも信じられないレオナの一言に、思わず涙してしまう魔王軍幹部達。
昔からのレオナを知っているだけあって、その感動は凄まじいものであった。
唯一泣いていないのは、魔王ぐらいなものである。驚きのあまり、これが夢なのではないかと自分の頬をつねって確かめているが。
「の、のう。もう一度確認なのじゃが、ノアを。姫様を食事に誘いたいのじゃな?しかも、その言い方からして二人きりで」
「ん。誘いたい。ノアは私の初めての部下だ。頑張ったご褒美に、美味しい料理でも誘ってあげたら喜ぶかなと」
「喜ぶだろうな。ノアのやつ、滅茶苦茶レオナの事を意識しているだろうし」
「頭を撫でてあげた時の反応がまるで違いますよね。私達の時も嬉しそうではありますが、レオナさん時は物凄く喜んでいます。あの笑顔を見ると“あぁ、姫様なんだなー”と思いますね」
「ここでも女の子扱いされるのかよ。まぁ分からなくは無いが。なんか可愛いよなノアは。正直、魔王様が“姫様”呼び始めたのは天才だと思ってる」
「じゃろ?妾天才じゃろ?」
「自分で言うなウザイ」
「皆さん、話が逸れています。今は、レオナさんの相談事を聞く時間ですよ」
「いや、ノアくんが集めてくれた情報の精査と国としての対応じゃないの?いや、この空気の中でできるとは思えないけど」
本来であればリバース王国にの反乱に対して、どのように対応するのかを決めるのかなどかなり重要な会議であったのだが、これほどまでに衝撃的な相談を受けてしまっては職に手が着くわけもない。
この場にいる全員がもう既にどのようなデートプランを組み立てようか相談し始めており、悪ノリする気満々であった。
「あまり高級店過ぎるとそれはそれで問題かの?ノアは割と庶民な感覚があるし、下手に高級店に連れていくとしり込みする可能性もある」
「それよりもまず、どうやってノアをデートに誘うかだろ。それと、私たちが追いかけやすいようにしないとな。何せ、レオナ初めてのデートだぜ?しかも、レオナが誘っての。見るしかないだろ」
「私の使える全てを使って監視ルートを作成しておきます。大丈夫、万に1つもバレるような事は無いようにしましょう」
「私の部下たちも動かしましょうかね。ジジィの数少ない楽しみを作ってくれたノアくんには感謝しなくては」
「おいおい、お前ら覗く気満々かよ。いいのか?本人がいる目の前で」
「大丈夫じゃない?ほら、レオナさんずっと上の空だよ。今も話を聞いてない。またノア君のことを考えてそうだよ」
「クハハ。楽しくなってきたのぉ!!どうせなら、アランとニーナも巻き込んでしまおう。あの二人は理解があるからの!!」
魔王はそう言うと、レオナの方を向いて胸を張る。
「分かった!!お主の悩み、妾達で解決してやろう!!」
「すまない。私がふないばかりに」
「なぁに。こんなに面白そ───ゲフンゲフン。こんなにも部下が悩んでおるのだから、助けてやるのが王の務めよ!!妾達が全力をもってすれば、全て解決じゃ!!」
この時、レオナ以外の全員が悪い顔をしていたのは言うまでもない。
後書き。
ヒロインの自覚が出てきたレオナちゃん。可愛いぞ。がんばれ。
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