カマセ帝国vs魔王国2
カマセ帝国の勇者にして、物理防御魔法防御に優れた戦士ゴリアテ。
彼はアランと同じくノアの天敵となりうる存在だ。ここで確実に仕留めなければ、今後も魔王国に被害をもたらす。
俺は魔道士団を逃がすために素早くスケルトン達を召喚し、距離を取りながら空中に向けて幾つかのファイヤーボールを放った。
曲射撃ちはあまり得意じゃないんだけどな。当たる当たらないに関係なく、死角からの一撃が当たってくれればラッキー程度で考えている。
「うわっ!!なんだコイツら!!」
「アラン。行くぞ」
「前線が崩れる前に何とかしないとね。ザリウスがいるから問題ないとは思うけど!!」
急に現れたスケルトン達に驚きつつも、その大きな盾を振り回してスケルトン達を破壊していく。
何体かが上手くゴリアテに張り付いたものの、やはり火力がここでもネックになるのか全く聞いた様子がない。
アランでも“いてて”と言うぐらいにはパンチ力がある筈なんだけどな。
ザリウスには悪いが勝つことが最低条件。ならば、全軍に俺の加護を与えてやろう。
「後で怒られるかもな。主に魔王に」
俺はそう呟きながら、森羅万象の杖を起動。
“
ごっそりと魔力が減る感覚があるが、魔力が実質無限のノアにかかれば問題なしである。
これで魔王軍の人達の戦闘力が10%強化。これで戦線維持が楽になってくれるはずだ。
ほんと、戦争で使うとぶっ壊れだよな。全能力値10%増加は馬鹿にならない。
ノアみたいなネタステータスを持っているヤツからすると、大して強くもないんだが。
「ふっ!!」
「あぶね!!」
完全に気配を消したアランが突っ込み、奇襲を仕掛けるが相手も勇者。
そう簡単には首を取らせてくれない。
野生の本能なのか、勘が鋭いのか、アランの攻撃を紙一重で受けきったゴリアテは強引にアランを吹き飛ばす。
吹っ飛ばされたアランは、空中で体制を整えると要塞の壁に足をつけて再びゴリアテに突っ込んだ。
何その動き。立体機動とかいつの間に覚えたんだよ。
「ダァァァァァ!!邪魔くせぇ!!何だこのスケルトンたちは!!ぶっ飛べ!!“
数度アランと攻防をしていたゴリアテだったが、どうやら俺のスケルトンが邪魔だったらしく範囲攻撃で周囲を吹き飛ばす。
俺は安全を取ってかなり離れていたので攻撃範囲外であったが、アランは思いっきり範囲内であった。
不味いか?と思ったが、アランは攻撃の予備動作に入った瞬間素早く離脱。
あっという間に攻撃範囲外に出ると、俺の隣で苦い顔をした。
「硬いね。殺す気で首を狙ったのに弾かれたんだけど........あれ本当に人間かな?皮膚で鉄を受け止めるなんて聞いたことがないよ」
「俺からすれば、アランも似たようなもんだけどな。とはいえ、あれは硬すぎる。仕方がない。時間は掛かるが、確実に殺す方法を取るか。アラン、手を出せ」
俺はそういうと、ポケットからあるものを取り出す。
エリスと共にアラン救出(誘拐)に向かった際に買った、対防御特化型への回答。
毒状態を付与して相手をじわじわと削るノアの必須アイテム“アシッドボム”。
暇な時に魔王軍のアイテムを作ってくれる人にお願いして、ある程度の数を確保出来ているので出し惜しみをすることは無い。
1つしか無かったらエリクサー症候群が出てたんだけどね。俺は、貴重な消費アイテムとかは攻略に必須でない限りは使えない派である。
現在腰に下げた簡易バックの中にこいつが4つ入っている。たしかゴリアテの設定では異常状態耐性がそこまで高くなかったはずなので、4発もあれば十分なはずだ。
「こいつを当ててこい。そしたら逃げ回るぞ」
「これは?」
「簡単に言えば毒だ。解毒されちまうと面倒だが、あの装備と自信を見るに回復薬けいは持ってない。時間さえかければ楽に勝てるぞ」
「なるほど。ノアらしいいやらしさ満点の戦い方だね。分かった。すぐにやろう」
物分りのいい俺の親友は、俺からアシッドボムを受け取ると、再びスケルトン達の中に紛れていく。
気配を完全に断ち、毒を当てる隙を伺った。
「うぜぇ!!なんなんだよコイツらは!!」
「頭が悪くて助かるよ。召喚術士が紛れていると言う考えが浮かばないのはありがたい。お陰で、レオナの方にも意識が割ける」
レオナは現在戦場を大きく回って爆走中。鳥さんを大事に抱えながら走るその姿は、ちょっと可愛かった。
と言うか、バフを貰ってありえないほど足が早くなってるな。景色の切り替わり方が凄まじい。
ゴリアテが敗北するのは時間の問題。ならば、アランのサポートを上手くしつつレオナの方に意識を向けるべきか。
ようやくジュナイダーの位置も把握出来たから、見逃さないようにしないとな。
そして現在、戦場は大きく動いてない。
後方に矢が撃ち込まれてザリウスが少し焦っているが、それでも何とか戦線は維持している。
もう少しすれば後方の魔導師たちが援護射撃を再開する。それで無事が確認出来れば、ザリウスも安心してくれるだろう。
「っぐ?!なんだ?!」
「ノア!!当てたよ!!」
「よくやったアラン!!」
全体の状況を確認していると、アランがアシッドボムを当ててゴリアテを毒状態にする。
ナイスだアラン。俺一人だけだったら、範囲攻撃にビクビク怯えながら近づくハメになっていたぜ。
このゲームの毒状態は、一定時間が経過する事に固定ダメージが入る仕組みだ。毒状態が長ければ長いほど固定ダメージは増えていき、最終的に相手を死にいたらしめる。
相手が魔王だろうがチート勇者だろうが、逃れられない世界のシステムだ。
........いや、アランの場合はなんか克服してきそうな気がしなくもないが。
これにより、解毒手段がない限りゴリアテに勝ち目はない。
後はスケルトンの波をで押し込みつつ、時間を稼ぐだけでなんとでもなるのだ。
「よっと。終わったよノア」
「よくやったアラン。だが油断するなよ。火事場の馬鹿力なんて言葉もあるんだ。急に頭が周り出して、俺がスケルトンを出していることを察して突撃してくるかもしれん」
「その時は僕がノアを守ってあげるよ。元々そのつもりでノアの隣に立っているんだしね」
「頼むぜアラン。あんな盾にぶっ飛ばされたら俺は死ぬからな。冗談抜きで。俺は魔王軍の中で一番体が弱いんだ」
「だからお姫様って呼ばれるんだもんね。お姫様抱っこしてあげよっか?」
「燃やされたいのか?集中しろ。まだ奇襲は何度かしかけてもらうからな」
「はーい。それじゃ僕の姫様の為にも頑張らないとね」
目からハイライトが消え、とてもでは無いが世界を救う勇者とは思えない顔をするアランはそう言うと、再びスケルトンの中に消えていく。
毒によってじわじわと体力を削られ、更には勇者からの奇襲によって回復も休息も許さない。
そして、スケルトンやスライムによって逃げ場を無くし、ファイヤーボールによる牽制で相手を逃がすことは無い。
詰みだよゴリアテ。
盾の勇者でありながら、高い異常状態耐性を持たされなかった
「くそっ!!どこにいやがる!!正々堂々と戦え!!」
「これが俺の正々堂々だよ。ネタキャラなりのね。と言うか、正面立って殴りあったら即死だよ。ノアのスペックなめんなよ。こちとら運ゲーだけで生きてるキャラなんだからな」
俺はそう言いながらも追加でスケルトンとスライムを出す。
じわじわと殺される苦しみを味わいながら、この世界に生まれたことを恨め。
こうして、俺はアランというぶっちぎりのチートキャラの力を使って難なく勇者をあしらう事が出来たのであった。
時間を使いつつ、レオナの支援に回るか。
後書き。
ノア&アランペア。勝利。
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