チート主人公vsネタキャラ主人公
新たな力を手に入れたら、とりあえず使ってみたいというのが人のサガ。
【ファイヤーボール】と言う攻撃手段がどれ程有用なものなのかを確かめる為に、俺は早速アランと勝負をする為訓練場へと顔を出していた。
「うをっ!!」
「はい。僕の勝ち。ブロンズは単調な攻撃しかしてこないから、やりやすくて楽だね」
「いや、俺の防御を当たり前のように貫いてくるアランがおかしいんだけどな?ノアもそうだが、お前らは揃いも揃いっておかしいんだよ」
「僕は普通だよ。ノアは確かにおかしいけど」
俺に面倒事を押し付けられたアランは、ちゃんと模擬戦をやっていた。
自分の倍近くもあるブロンズを吹き飛ばし、にっこりと笑ってブロンズの首元に剣を当てる。
模擬戦とは言えど、第四魔王軍をまとめる大隊長にその歳で勝てるとか相変わらずイカれた性能をしているな。
俺なんて逃げに逃げまくって数でゴリ押す事しか出来ないのに。
そんな事を思いながらアランを眺めていると、俺に気づいたアランが目を輝かせながらこちらへとやってくる。
まるで犬だ。尻尾をフリフリしながら、主人の帰りを待っていた犬のような目の輝かせ方をしている。
「ノア!!ようやく帰ってきたんだね!!用事は済んだの?」
「済んだよ。残念ながら俺はこれ以上強くなれないらしい。それはそうと、俺と模擬戦をしないか?今日はまだやってないよな?」
俺とアランは毎日模擬戦をしてはその勝敗に喜び落ち込むが、基本的に一日一回しか模擬戦をしない。
お互いに疲れるし、何よりその日の敗因を考えて改善する時間が必要だからだ。
お陰で俺もアランもお互いの動きや思考をほぼ完璧に読めるようになり、最近は勝ったり負けたりを繰り返している。
勝敗は俺がギリ勝ち越しているが、気を抜くとマジですぐに追い抜かれるな。
俺の口から“模擬戦”と聞いたアランは、より一層の目を輝かせると嬉しそうに頷く。
アランも俺との模擬戦は楽しいようで、一日の最大の楽しみという程には、この模擬戦の事を心待ちにしているのだ。
「やろう!!今すぐに!!ブロンズ、そこで倒れてないでどいてどいて」
「負けたヤツに慰めの言葉もかけず“邪魔だ”って言われるとなんか悲しいな。それだけの実力差があるのは間違いなんだけど........なんかこう、モヤッとするぜ」
「仕方がないにゃる。アランにとって、ノアとの模擬戦が最も大事な事にゃるからな。ブロンズはそこら辺のオマケにゃる」
「悲しいなぁ。そういうミャルもおまけ扱いされてるけどさ」
「そもそも私は指揮官にゃ。まぁ、流石に何もせずに負けるのは悔しいから、毎回対策を練ってくるんだけど........なんでこのふたりは当たり前のように私の対策を破ってくるのかにゃ?自信が無くなるにゃ」
アランの被害者であるブロンズやミャルはそう言うと、心の底から落ち込む。
軍人となってもなお、高い向上心をもてる魔王軍。
その上へ上へと行こうとする心こそが、魔王軍としての強みなのかもしれない。
毎日みんな何らかの訓練をしているもんな。大体魔王辺りに邪魔されるんだけど。
やっぱり魔王が悪じゃねーかと思いつつ、俺とアランはある程度の距離を取って対峙する。
最初は突っ込んでくるか、魔法でスケルトンを一掃してくるだろうな。それを見越した上で上手く逃げ回るとしよう。
気づけば、訓練場にいた誰もが俺達の戦いを見ようとしている。
こんなに観衆がいると、ちょっと照れるね。
「ミャル。合図をお願い出来る?」
「はいはい。分かっているにゃるよ。2人とも、熱くなりすぎて怪我をしないように。レオナ軍団長に怒られるにゃるからね。それじゃ、始めるにゃ!!」
ミャルの合図と同時に、アランは爆速で俺の元まで走ってくる。
どうやら今日はこっちを選択したようだ。とは言え、どちらを選択されようが俺のやるとこは変わらないんだけどね。
「逃げるか」
「逃がさないよ!!」
視界に入る全てに大量のスケルトンを召喚。
そしてらスケルトンの中に紛れながら、俺はアランとの距離をとる。
しかし、アランもそれは分かっている。
範囲攻撃で周囲のスケルトンを薙ぎ倒すと同時に、的確に俺の位置を把握して魔法を放ってきた。
「ファイヤーランス」
「スライムブロック」
炎の槍が俺を襲うが、俺はその炎を大量のスライムを召喚して強引に受け止める。
魔法耐性も物理耐性もクソみたいに弱いスライムだが、大量に召喚すれば魔法の一撃ぐらいは何とか止められる。
ちなみに、連発されると厳しいが、俺レベルの詠唱速度を持ってなければ数秒の時間はその魔法が使えないはずだ。
「ホイ追加」
「邪魔!!」
アランの魔法をスライムで防ぎ切ったと分かったその瞬間、俺は追加でスケルトンを大量に召喚する。
そして再び距離をとる。
俺はやっている側だから楽しいが、相手にするとマジでクソ面倒だよな。
ノアくんが敵役として出てきたら、コントローラーをぶん投げそう。
対するアランは、レオナの剣撃である【無限戦舞】でスケルトン達を吹き飛ばし、俺まで一直線の道を作る。
そして、好機とばかりに真っ直ぐ突っ込んできた。
これだよこれ。俺はこれを待ってたんだよアラン。
周りはスケルトンで封鎖され、即座に横に避けられない状況。真正面から突っ込むしかないこの状況を待っていたのさ!!
思い通りに事が運んでくれて思わずニヤッと笑ってしまいながらも、俺は新たに手に入れた魔法を使う。
「【ファイヤーボール】!!」
「え?へ?うわっ!!」
繰り出されるは炎の弾丸。
牽制程度にしかならない威力と速度だが、それでも逃げ場のないこの場所で更には事前情報になかった攻撃にアランも驚く。
が、コイツ、当たり前のように剣でファイヤーボールを切ってんだけど。ねぇ、俺の新しい魔法のお披露目よ?少しは忖度してくれたっていいじゃないか。
「危ないね。何か隠しているとは思ったけど、そんなものを覚えたんだ」
「覚えたって言うか、装備を貰ったって方が正しいけどな。ほら、この指輪。これを装備しているときはファイヤーボールが使えるんだ」
「へぇー、装備スキルだっけ?僕の靴にもあったよね?」
「おう。そして、この装備、装備者に魔法を使えるようにさせるだけだから、クールタイムとかないんだよね。言ってる意味、わかる?」
「げっ........まさか」
アランはかなり賢い。
この言葉だけで俺が言いたいことは全て伝わっただろう。
嫌な予感を覚えたアランは引き攣った顔をしながらも、即座にこの模擬戦を終わらせるべく俺に近づいてくるが俺がそんなことを許すはずもない。
爆速で詠唱を済ましたファイヤーボールのレーザーが、アランに向かって飛んでいく。
「ちょちょちょ!!こんなのずるいじゃん!!うわっ!!しかもスケルトンも増えてる!!」
「アハハハハ!!頑張れよアラン!!じゃないと尻に火がつくぞ!!文字通りな!!」
「っく!!ようやくノアに勝ち越せそうだったのにぃ!!」
スケルトンにゆく手を阻まれ、炎の弾丸を何とかして避けて弾くアラン。
威力が弱いとは言えど、魔道士から“牽制にはなる”って言われてるんですけどね。なんでコイツは当たり前のように全て捌いてるんだ?
まぁ、俺の攻撃ばかりに気を取られていると、スケルトン君たちが殴ってくれるんだけどさ。
「イテッ!!イテテテテ!!」
「........痛いだけで済むのがおかしいんだけどな。やっぱりアランは手加減しないで戦ってようやく対等だわ。強すぎやろ」
スケルトンにポカポカと殴られ、ファイヤーボールにポコポコとタコられたアランは今日の戦績に黒星を付けるのであった。
本気の殺し合いとかしたら勝てなさそうだ。アラン、強くなりすぎである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます