弾幕はパワー‼︎
プルートが俺の事を女の子だと認識していた事により、実は魔王軍の中にもまだ俺の事を女の子だと思っている奴がいるのでは?と不安になりながらも、俺は早速試し打ちをしてみる。
プルートも“ノアくんが魔法を使う所を見たい”と言うので、彼女も一緒に見学だ。
一撃必殺!!どんどこどーん!!と口にする彼女だが、プルートは魔王軍の中でもかなり腕の立つ魔道士。
もしかしたら有益なアドバイスとかも貰えるかもしれないという期待を込めて、プルートと一緒に魔法を使う事になったのだ。
「ほへー、そんな装備もあるんだな。知らなかった」
「魔道士は基本こんなの使わないよ。魔法が使えない近接職とかが、お気持ち程度に持っておくヤツだからね」
「でも、ノアくんが使ったらとんでもない事になりそうだ。何せ、詠唱速度がこの世界で誰よりも早いと言っても過言では無いからね。ほら、早速撃ってみてくれよ」
興味深そうに指輪を見ていたプルートは、俺から少し離れると早速魔法を使ってみるように促す。
俺は指輪を右手の中指に嵌めると、召喚魔法を使うかのように装備スキルを使ってみた。
「【ファイヤーボール】」
ほぼノータイムで出てきた火の玉は、それなりの勢いで発射された後的にバチンと当たって消えていく。
んー、ダメージが見えないとなんとも言えないが、心做しか想像していたよりも火力が出ているように見える。
あれ?もしかして、今までレベルが上がってたステータスが全部魔法攻撃に割り振られてる?
「おぉ、中々いい魔法じゃないか。本職に比べたらさすがに劣るが、実践で使えるレベルの威力と速度だぞ?牽制としては十分だな」
「本当?実践で使える?」
「私は魔法に関して嘘は言わんよ。やるじゃないかノアくん」
プルートはそう言うと、ニッと笑って俺の頭を優しく撫でる。
暖かく優しいが、ヤニ臭いな。タバコの臭いがプンプンするぜ。
「タバコ臭いよ」
「アッハッハッハッハッ!!そりゃ、ついさっきまで、タバコ吸ってたんだから当たり前だろ!!ちなみにタバコを吸った直後にミャルに抱きつくと面白いぞー。全身をぷるぷると震わせながら“臭いにゃ!!”って怒ってくるからな!!あの反応を見るのが面白くて、偶に抱きつきに行くぐらいだ」
ミャルも苦労してんだな。普段はまとめ役としてしっかりしているミャルだが、何かとブロンズやら第四魔王軍の皆にいじられてるし。
“その歳でにゃって語尾はキツくないっすか?”とか普通に言われてるんだから、少し同情してしまう。
本人も、昔からそのキャラでやってるから引くに引けないんだろうけどさ。
だから、キレた時はよく素が出る。
“にゃ”を忘れた時が本当のミャルだ。
「ミャルも大変だね。こんなヤニカスの相手をさせられるなんてさ」
「アッハッハッハッハッ!!今度はタバコ吸った直後にノアくんに抱きついてやろう。きっと嫌そうな顔をするだろうよ!!」
「アランとニーナに恨まれたいならどうぞ。多分レオナ軍団長も怒ると思うけどね」
「........うん。辞めておこう。私も命は大事だしな」
サラッと嫌がらせをしてくる宣言をしたプルートに、勇者と魔王軍幹部の盾を使いつつ俺は再び魔法を使う。
基本的に装備に付与されているスキルと言うのは、クールタイムが用意されている。
バカスカ強力な装備のスキルを撃ちまくれると、ゲームのバランスが崩壊するもんな。
しかし、この指輪にはクールタイムが設定されていない。
魔法によってはクールタイムがあるだろうが、【ファイヤーボール】は魔道士となって即覚えられる初期の魔法になので、バランスを崩すことは無いと思われたのだろう。
実際、バランスを崩すことは無い。
ノアはこんな指輪を装備するぐらいなら、召喚したモンスターを強化する指輪か速度を上げられる装備及びスキルの上昇効果を見込める物を付けていた方が強いし、単純に魔法攻撃力も弱いので魔法を使うメリットがない。
昔、魔法職ビルドを考えた変態がいたが、あまりにも弱すぎて使えたものでは無かった。
しかし、全てのステータスを極振りすれば多少は使い物になるらしい。
魔法職ビルドは防御面も考えられてステータス分配が調節されていたから、多分ダメだったんだろうなぁ........
「それじゃ、限界を試してみるか」
「んあ?限界........?」
ノアの強みは異常な詠唱速度と無限の等しい魔力。
装備スキルによって新たな攻撃手段を手に入れたものの、牽制にしか使えない弱い魔法をどう運用するのか?
答えは簡単。“数でゴリ押せ”である。
ドドドドドドドドド!!
超高速で【ファイヤーボール】を連発し、マシンガンのように炎の玉を撃ち続ける。
あまりにも詠唱が速すぎて、一種のレーザービームのように見えるな。
「........うはっ!!やばすぎ。一体どんな詠唱速度をしてたらこんな風になるんだ?やっぱりノアくんも変人側だねぇ」
「失礼な。何度も言うが、俺はまともだよ。プルート程じゃない」
「こんな弾幕避けきれないよ。一つづつしか撃てないはずなのに、詠唱速度が速すぎて同時に何個も撃っているように見える。こんなの戦場で使われたらどうしようも無いねぇ。しかも、魔力量も凄まじいって言ってたし、無敵じゃん」
「残念ながら、アランやレオナ軍団長はこの弾幕の嵐の中を悠々と歩いてくると思うよ。想像出来るでしょ?あの二人がこんな火の玉を諸共せずに、のんびりと歩いてくる姿が」
「........あーうん。何となく想像出来る。特にレオナ軍団長は、当たり前のように火の玉を切って歩いて来そうだ。あの人もあの人でかなり規格外だからね」
レーザービームのように弾幕を展開したり、周囲に流星群のように撒き散らしながら魔法を撃ったりと色々と試してみるが、やはり一撃一撃の力が弱すぎる。
アランに当たってもダメージが通るかどうか怪しいな。いや、熱による火傷でダメージを狙えるか?
この世界は現実なんだし、相手を燃やすという手段はかなり使えそうだが。
そう考えると、炎属性ってゲームの世界以上に強いよな。炎は常に人々を脅かす存在であり、利用という手段を得たとしてもその驚異は変わらない。
でも何故だろう。アランは当たり前のように炎の中を突っ切って来そうなんだよな........さすがは勇者格が違うぜ。
「今から試してみるか。ちょっとアランと模擬戦してくる!!」
「あ、私も見に行こうかな。アランがどのようにこの弾幕の嵐を捌くのか見てみたいし。魔法使いとして、その対策を考えておくのも仕事だ。身体が弱い魔法使いの悲しいところだな。接近されると何も出来ない」
「一応、身体強化をする魔法とかあるじゃん。あれを使えば何とかならないの?」
「少しはマシになるが、元々体が弱いやつが少し強くなっただけで対抗出来ると思うか?大抵の場合は、押し切られて負ける。魔王様とか普通に推し勝てるんだけどな。あの人は例外だ」
「なんやかんや強いもんね魔王様。普段の行動が残念すぎて忘れがちだけど」
「全くだ。あの人は普段が酷すぎて少しかっこいい所があっても全部台無しになるんだよ。本当にどうしようもない人だな。それでも、街の人々に慕われているのを見るに、加減はわかっているようだけど」
プルートも魔王の問題行動には頭が痛いようだ。
顔に“あの性格さえ何とかなればな........”と書いてある。
それでも心の底から嫌ってないのを見るに、本当に線引きが上手いんだろうな魔王は。
俺はそんなことを思いながら、アランに新たな魔法を見せびらかすために第四魔王軍の訓練場へと向かうのであった。
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