RTA脳
やっぱりシスターマリアは怖いという結論に至った俺達は、ダンジョンの中に足を踏み入れた。
幻想的な青白いゲートを潜った先は完全なる別世界であり、雲ひとつない青空の元緑生い茂る森が俺達を出迎えてくれる。
ふむ。最初は森か。となると、出てくるモンスターはゴブリン、スライム、オーク辺りかな?
ゲームの中ではそのステージ毎に出てくるモンスターが変わってくる。今は第一階層の為、そこまで強くないモンスターが出てくるということを考えると、いちばん強くてもオーク辺りだろう。
入った瞬間から森のなかって事は、マップは2‐1から2-4のどれかだな。
ヘルオブエデンのダンジョンがローグライク形式のダンジョンとは言えど、その全てがランダムで決まる訳では無い。
モンスターのスポーンする位置や障害物の場所は完全にランダムだが、次の階層へと続く道はある程度決まっているのだ。
そして、その次への階層へと続く道は最初に入ってきた地点からある程度の推測が立てられるようになっている。
今回の場合だと、ここから右側に進めば次の階層への入口が見えてくるだろう。
右側の上か下かなのかはまだ分からない。もう少し先に進めば分かるかな?
昔、興味本位でダンジョンRTAを齧ったことがある経験が生きているな。覚えることが多すぎる上に、必要テクニックも多すぎて途中で諦めてしまったが。
「わぁ........!!これがダンジョンなんだね!!凄いや。完全に別世界みたいだよ。冬なのに春のように暖かいし、心地もいいね」
「そうだな。ダンジョンは外の世界とは完全なる別世界と言われているし、謎多き場所だ。と言うか、冬の間はここに逃げ込むのも良いかもしれないな。暖房をする必要も無いし、食材だって手に入る」
「ガハハハハハ。辞めておけ姫様。ダンジョンは時として大量のモンスターを生み出すことで知られている。寝ている間に凄まじい数のモンスターに蹂躙されるのがオチだよ。だから、魔王様も必要以上のダンジョンの管理はしないしな。ダンジョンスタンピードと言って、その時期は大忙しなんだぜ?戦争と被った時なんかは最悪だ」
「あれは酷かったね。僕の軍が対処に当たったけど、滅茶苦茶大変だったよ。昼夜問わず溢れ続ける魔物に皆ヘトヘトさ。しかも、物資が両方に割り当てられていたから、普段よりも物資が少なくて皆困ってたね。特に医療品関係が少ないのは困ったよ」
へぇ、そんな歴史があるんだな。
ダンジョンスタンピードはメインストーリーでも起こっている。結局はアランの活躍で事なきを得るが、あれはかなり大変なイベントだったな。初見時は。
まだゲームに慣れてまもない頃だったから苦戦したが、慣れてくるとただのレベル上げイベントに変わってしまう。
しかも、アランが活躍せずとも騎士達で対処してしまうという隠し要素まであるのだから、手が込んでいるよ。
尚、ダンジョンイベントに関しては何故か貴族が有能で対応が早かった為あまりイラつかないイベントでもあった。
なぜ毎回それをやらない。
「それで、最初はどこに行こうか?ノアはどうする?」
「今回はサバイバルやモンスターを倒すために来てるからゆっくり行こうか。全力でダンジョン攻略してもいいんだけどね」
「うーん。それもそうだね。ゆっくり行こうかノア、どっちに行きたい?」
「右側に進んでいこう。先ずは周囲の地形把握から始めるぞ」
俺はそう言うと、大量の小鳥達を召喚する。
次への階層へと向かう道は大体分かっているが、俺は初めてダンジョンに潜る事になっているのだ。
ならば、こうして周囲を索敵して探しましたアピールをしておいた方がいい。
次いでに護衛用のスケルトン君も出すか?いや、それをやるとアランの獲得経験値量が減るから辞めておこう。
「取り敢えずこれで水場がある場所を探す。今日はこの階層で一泊してみようか。せっかくのサバイバルなんだし、色々な環境で経験してみないとな」
「分かった。それじゃ、行ってみようか」
アランはそう言うと、周囲を警戒しながら森の中を進んでいく。
この場所に少しだけ開けた場所があるってことは、2-2かな?右がの少し下に次の階層がありそうだな。
周囲の地形から何番のマップなのかを探し始める俺と、機嫌良さように森の中を歩くアラン。
保護者組は、ダンジョンに入ってからはアドバイスをするつもりは無いのか静かに俺達を見守っていた。
そして五分ほど歩くと、最初の敵が現れる。
既に小鳥で補足していたオークだ。
昔、まだ村にいた頃に倒した記憶があるなぁ。あの時は剣雨で瞬殺したっけ。
「オークだ。学園にいた時は結構危険なモンスターと言われていたけど、別にそこまで強くなかったんだよね」
「そりゃ、一般の生徒からすれば危険なモンスターさ。アランからしたら、ゴブリンとそう大差ないだろうけど」
「あはは。かもね。ノアがやる?」
「いや、アランがやってくれ。俺はあまり力が強くなっても意味が無いからな」
「そう?なら、さっさと終わらせるかな」
アランはそう言うと、こちらへ歩いてくるオークに向かって剣を抜いて走り始める。
さて、アランとの手合わせで大体のレベルは想像が着いている。恐らくアランのレベルは30~35の間。このダンジョンでは40を目指したいので、5~10レベル上げれば問題なく終わるだろう。
オークの適正討伐レベルは大体5~7というのを考えれば、一瞬で終わるザコモンスターだ。
「ふっ!!」
爆速で接近したアランが剣を振るう。
鮮やかに振り抜かれた剣は、オークの首を宙に飛ばす。
そして、首を跳ねられたオークは鮮血を巻き上げながら素材へと姿を変えた。
おぉ、ゲームでは素材がポトリと落ちていただけだったが、現実でも同じような感じなんだな。
お肉が1キロと牙が二本。ゲームで店売りしたら大体200ゴールドぐらいかな?結構素材の買取は安いんだよ。
「どう?」
「いいんじゃないか?少なくとも俺よりはスマートに倒しているよ」
「ほー、何度か模擬戦しているところは見た事があるが、随分と綺麗な剣筋だな。レオナに少し似ているか?」
「剣は私が教えている」
「へぇ、僕は剣が使えないからちょっと羨ましいかも。あんなふうに一撃で首を切り飛ばせたら様になるよね」
ちょっとドヤッているアラン。
子供らしく可愛いところもあるんだなと思いつつ、俺はアランのステ振りに着いても考えていた。
アランのステータスの割り振りが正確に分からないのが少し困るが、恐らくスピード型と呼ばれる1番初心者向けで無難に強いステータスの割り振り方だと思われる。
俺の速さに追いつこうとした結果のステ振りなのかもしれないな。
となると、装備集めも簡単で済む。とりあえず、全ダンジョン共通で落ちる装備“経験値増加のブレスレット”をドロップするまで粘るか。
【獲得経験値2%増加】とか言うなんとも微妙な能力をしたブレスレットだが、このブレスレットは三つまで付けることが可能なので最大で6%の経験値増加の効果を受けることが出来る。
レベリングにおける6%はかなり偉大だ。何せ、時間効率がまるで違うんだからな。
と言うか、魔王からブレスレットだけ貰ってこればよかった。多分あるだろ。経験値獲得量増加系アイテム。
「この調子で今日の夕飯を確保するか。ザリウス。普段はどのぐらい食べるの?」
「んあ?別に三日ぐらいなら何も食わなくても問題ないぞ。とはいえ、食えた方が有難いがな」
「あ、そうなんだ。まぁ、大量に持ってこれば結局どうでもいい話か」
「エルさんには聞かなくていいの?」
「見た目からして少食でしょ」
「うんまぁ、そうなんだけどノアくんに言われるとちょっと釈然としないかな........」
「ノア、私は?」
「レオナ軍団長は何度か食事して大体食べる量は分かってるんで」
「........そう言えばそうだったな」
こうして、俺は獲得経験値アイテムが出てくれないかなぁと思いつつ、この階層では最も経験値効率の高いオークを探し出してはアランに倒させるのであった。
後書き。
遂に星5000到達‼︎ありがとうございます‼︎
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