装備、アイテム回収
アランを攫うためにリバース王国の王都へとやってきた俺とエリスは、宿を取った翌日二人で街の中を歩いていた。
アランを攫う(本人の協力あり)だとしても、リバース王国から逃げるのは容易ではない。
アランが魔王を倒し、国を追われた後に始まるDLC“勇者の復讐”では敵国がリバース王国となるだけあってかなり強いキャラクターが何人も出てくるのだ。
特に、王都にいるであろう騎士団長はやばい。
DLCをノア単騎攻略しようと試みた者達を絶望の縁にたたき落とす程に、ノアをメタってきているので正直あまり戦いたくは無い相手である。
ノアの性能的に騎士団長を倒すのはほぼ不可能に近いんだよ。だってアイツ、常時ダメージカットのスキル持ってんだもん。
弱い攻撃だろうが、塵も積もれば山となる戦法を取るノアにとって騎士団長は天敵だ。
DLCキャラということもあって、とにかく強いし馬鹿げている。
ほんと、なんでダメージカットが実数値固定なんだよ。割合にしてくれればゲームの仕様上ダメージが通るというのに。
それでも、アイテムとギミックを駆使すれば勝てる辺り、このゲームはノア君がかなり忖度されている。
運ゲーを最低でも6回やらなきゃダメなのは、どう考えても頭がおかしいが。
ノア単騎攻略をやる中で“真のラスボス”と言われるだけはある。だって、その後出てきたラスボスよりも強かったもん。
メインストーリーでは出てこなかった騎士団長だが、この世界はDLCの世界も恐らく入っている。
ストーリーが崩壊している今、いつ彼が出てきたとしてもおかしくない。
「それで、ノアくんは何を買うつもりなんですか?あの人に許可を取っていましたよね?」
「戦いに必要な道具を幾つかね。他の人からしたら使い物にならないものだったりするんだけど、俺には重要なアイテムとかがあるんだよ」
「まぁ、あの人からは“好きなように買わせてやれ!!”と言われているので。どうせ全部あの人のポケットマネーなので、破産させてやる気で行きましょう」
いいのかそれ。仮にもエリスの上司でしょうに。
俺は、相変わらず扱いが雑な魔王を少しだけ不憫に思いつつ、普段の行いが悪すぎるので同情はしない。
破産して路頭に迷ってくれないかなぁ........いや、路頭に迷ったら誰かに迷惑かけそうだからいいや。
今回は魔王の奢りだから、好き勝手にアイテムが買える。が、常識的な範囲で買い物をしておくとしよう。
アイテムに関しては、持ち帰れば魔王国でも作れそうだしな。
そんなわけで最初にやってきたのは、とある小さな道具屋。
ここは、招待状が無ければものを売らない店であり、変わったものを幾つか取り扱っている。
ここで、ノアくんの足りない火力や逃げに使えるものを確保するのだ。
「ごめんくださーい」
「........ここに売るもんなんてないよ。帰りな」
「そんなことを言わないでくださいよ。ほら、“いつものを2つと違ったものを3つ”」
「........違ったものとはなんだい?」
「“エデン様のご加護があるものが好ましいですね。出来れば、指輪と首飾りが欲しいです”」
「何が欲しいんだ?」
魔女のようなローブに身を包んだ愛想の悪いお婆さんが、機嫌悪そうにムスッとしながら買いたいものを聞いてくる。
合言葉を言えば、買わせてくれるのはありがたいね。ゲームをやっていた時は、この情報を集めてから出ないと行けない場所であったが、俺は既に合言葉を知っているのだ。
うーん。ゲームの知識最高。こういう時の知識はやつに立つな。
「今の、合言葉じゃ........」
エリスに思いっきり見られてしまっているが、何かと過保護なエリスの目から逃れることは不可能。
色々と考えた結果、隠すのは無理だと判断し堂々とやることにしたのだ。
こっそり夜中に抜け出してもいいが、迷惑をかける子は悪い子である。
乱数の女神様にできる限り嫌われたくないのだ。
「【アシッドボム】を3つと【紅の爆薬】を2つ。それと、【煙幕】を3つ。えーと........あ、あと【天の加護】を1つ下さい」
俺がそう言うと、店主は何も言わずにポイポイと言われたものを用意する。
【アシッドボム】は相手に投げつけると継続的な毒ダメージを与えられるアイテムであり、何かと長期戦になりがちなノアにとってとても大事なダメージソースとなってくれる必須アイテムだ。
ここじゃないと取り扱ってないから、アイテムが切れると態々取りに来なくてはならなくて結構面倒だった記憶がある。
特に、ノア単騎攻略においては転移魔法が使えるキャラを入れられないため、一々街に戻って転移できるキャラにお願いする必要があったしな。
次に【紅の爆薬】。これは地形破壊が出来る爆弾で、直接当ててもダメージは小さい代わりに地形を崩してダメージを与えると補正が着くアイテムである。
狭い洞窟なんかは、天井を爆破して相手を生き埋めにするギミックがあるので必須急のアイテムであり、一周目のメインストーリーでもお世話になるアイテムだ。
ギミックを使って倒そう!!と言うチュートリアルでお世話にもなる。
3つ目は【煙幕】。その名の通り、煙の幕を張るアイテムで基本的には逃走用に使えるアイテムである。
ノアは近づかれると天に祈る運ゲーが始まるので、煙幕を使って相手の視界を封じたあと距離をとると言う方法をよく使う。
これも割と必須級。ただし、仕入れる場所は多いので、ここで買う必要は無かったりする。
そして最後【天の加護】。
これはアイテムではなく装備であり、しかもノアの装備ではなくアランの必須装備だ。
効果は“受けるダメージの5%軽減+異常状態抵抗率42%上昇”と言うもの。
メインストーリーではアランが基本的にメイン火力として活躍するので、異常状態に掛かると滅茶苦茶パーティーのダメージが落ちる。
それをできる限り回避するために、アランには必要な装備となるのだ。
尚、上手く攻略が出来ない人の為の救済措置的な面もあり、メインストーリーの中の装備としては強すぎるため、買えるのは1つまでである。
このゲーム、異常状態のデバフが結構キツイからゲーム初心者は困るんだよな。
上級者になってくるとこの装備無しでも余裕でクリアできるのだが、慣れてないと結構難しいのだ。
ちなみに、ノアは“全部避けてしまえば問題ない”と言うスタンスなのでこの装備は必要ない。
貴重な首飾りの装備枠を異常状態抵抗やダメージ軽減に使うぐらいなら、5%でも確率を上げた方がいいのだ。
防御をあげるよりも運ゲーの確率を上げた方が強いとか、ノアくんパチンコみたいな性能してんな。
「全部で15600ゴールドだ」
「はい。これね。ありがと。また来るかもしれないからよろしくね」
俺はサッサとお金を支払うと、今買ったものを全て受け取って店を出る。
あの店、一応非合法の店だから衛兵なんかに見られると不味いのだ。
「意外と安かったですね。もっと何十万とかかるかと思ってました。もっと買ってよかったんですよ?」
「いや、戻ったら作れるだろうから、サンプルとして買っただけだからね。もし無理ならまた来るよ」
「来られるかどうか怪しいですけどね........」
「あはは。大丈夫。既に召喚した動物たちを放っているから、最悪盗みだせるよ」
あまり高くない買い物をしたのが以外だったのか、少しつまらなさそうなエリス。
どうやら、俺が合言葉を知っていることは聞かないらしい。
ちなみに、今更ながらこの世界のお金はゴールドという単位であり、硬貨が使われている。
大体1円1ゴールド換算と考えて問題ないので、何となく物価の価値は分かるだろう。
その国独自のお金とかもなさそうだしな。そこら辺は、ゲームの都合とかもありそうだ。
俺はそう思いながら、次のアラン用の装備回収に向かうのであった。
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