攫うか‼︎(ノリノリ)
サンシタ王国軍に歴史的な勝利を収めた魔王軍。
ノアの活躍により誰一人として兵士を失わなかった魔王軍は、幹部達で会議を開いていた。
ちなみに、魔王は今回の会議を30分遅刻している。
幹部達はいつもの事なので、最早何も言わなかった。
「まずは、レオナご苦労であった。お主のお陰で魔王軍にひとつの損害も無く勝利を収め収めることができた。感謝するぞ」
「........私の力じゃない。ノアの活躍が全て」
「まぁ、今回はノアくんのお陰で全て終わりましたね。と言うか、四万の兵士をたった一人で相手にできるとか凄すぎません?私達より普通に強くないですか?」
「確かにそうだな。と言うか、ノアの召喚魔法が可笑しいんだよ。どうなってんだアレ」
「圧倒的な魔力と召喚速度による数の暴力。ノアくんは実に個性的な戦い方をしますね。私の手が300本位あれば何とかなるんでしょうか?」
「無理だろグリード。お前、戦いになると真っ直ぐ突っ込む癖があるからな。ノアは頭良さそうだし、知略で負けるぞ」
「じゃ、じゃぁ、僕とグリードさんが合わされば勝てるかも?」
今回の戦争が普段よりも圧倒的に早く終わったのは、ノアによる活躍が期待全てだと皆分かっている。
そして、魔王もそれを否定することは無かった。
「それはそうじゃの。しかし、だからと言って今までのレオナや第四魔王軍の活躍があってこその勝利じゃ。この10年間、良くぞ耐えたぞ」
「........」
レオナは何も言わずにぺこりと頭を下げる。
普段は滅茶苦茶をする癖に、心の底から人を褒める時は茶化さない。
普段からそうしてくれとは誰もが思うが、普段が普段なだけにその言葉は心に響いた。
「さて、サンシタ王国軍を退けたとは言えど、奴らはまた来るじゃろう。何せ、頭が足らん奴らなのでな。じゃが、暫くは問題ないはずじゃ。一旦奴らは放置しておくとしよう」
「そうだな。で、俺たちを集めたのはなにか理由があるんだろ?下らん事だったら帰るからな。ニーナ嬢ちゃん見に行きたいし」
「あー、私も行きたいですね。帰っていいですか?どうせ下らないことでしょうし」
「よし、今日の会議終了!!皆でニーナを見に行くぞ!!ニーナは私を見ても全く怖がらないし、私は他の奴らと違って結構交流あるし、頭を最初にナデナデさせてくれるのは私だな!!」
そう言いながら席を立ち始める幹部達。
それを見た魔王は、慌てて幹部たちを止めた。
今回魔王が幹部達を集めたのは、この円卓会議でどんちゃん騒ぎをしたいからでは無い。
しっかりとした計画を持ってきているのだ。
「ちょちょちょ!!ちょっと待てお主達!!それでも魔王軍幹部か?!真面目に会議せぬか!!」
「いや、会議を毎回遅刻してくる人に言われても困るよ。1番不真面目な会議をしてるの魔王様だし........」
「うぐっ........!!」
エルに正論を吐かれて怯む魔王。
正論すぎるが故に、言い返すことが出来ない。
今度から15分遅刻ぐらいに収めようと魔王は心に決めつつも、幹部達を着席させた。
「と、取り敢えず座るのじゃ。ちゃんとマトモな話だから!!少しだけ話を聞いてくれぇ!!」
「分かった分かった。分かったから、俺に抱きつきながら涙を流すな。毛が痛む」
ザリウスに抱きついてなんとか幹部達を引き止めた魔王は、会議の席に座り直すと“ゴホン”と咳払いをしてから計画を話し始めた。
それは、幹部の誰もが耳を疑う計画である。
「リバース王国にノアの友人にして、勇者であるアランという少年がおるのは知っておるな?」
「ノアやニーナによく聞かされたな。“本人の前じゃ言えないけど、自慢の友人だよ”とは言ってたぞ」
「ノアくん、勇者の話をする時は結構楽しそうに話しますよね」
「........(そんな話ひとつもしてないよぉ!!今度からその勇者君の話を振ろう。そしたら、もう少し話せるかも........!!)」
さり気なくガルエルとエリスに格付けされて1人落ち込むレオナを見て、魔王は“勇者の話題は定番でじゃろうが”と心の中で呟く。
幹部の中ではノアと最も話す機会が多いと言うのに、一体何をしているのやら。
今日もレオナの相談に乗ることになりそうだと思いつつ、話を進めた。
「ノアの村から連れてきた人々の話によれば、この2人は相当仲が良かったそうじゃ。子供達の母に話を聞いたところ、特に勇者がノアの事を大事に思っているようじゃの。ノアが危険にさらされれば、命を持ってしてもその脅威を排除する程には」
「“子供達の母”ってシスターマリアさんの事か?確かにあの人なら、ノアと勇者のことをよく知ってそうだな」
「うむ。昔の勇者は口下手でかなりキツイ口調だったらしいが、ノアと過ごす内に性格を丸々変えてしまったらしいの。さて、そこでじゃ」
魔王は“パン”と一度手を大きく叩くとニット笑いながらとんでもない事を口走る。
今まで1度もやらなかった戦術であり、ノアが居るからこそ行える戦法。
それは─────
「その勇者君、攫うかの!!」
「「「「「「........え?」」」」」」
「それとなくノアに聞いた感じ、ノアも勇者に会いたがっておったし、勇者の性格的にノアに会いたいはずじゃ。なら、妾達の手で合わせてやるとしよう!!」
「い、いやいやいや!!魔王様!!仮にも相手は王都に住んでるんし、恐らく監視が着いているだろ?!攫うのは難易度が高い!!」
ノリノリで幹部たちにそういう魔王と、魔王の言葉に動揺を隠せない幹部達。
ガルエルが真っ先に意見を言うが、ガルエルは知っている。こういうノリになってしまった魔王は何がなんでもこの計画をやり始めるだろう。
何を言っても無駄なのだが、それでも思わず口が出てしまう程には予想外で滅茶苦茶な計画であった。
「大体、相手はノアの友人とは言えど勇者だぞ?簡単に攫われてくれるとは思えんな。悪いもんでも食ったか?........あぁ、元からか」
「ザリウス?お主さすがに酷すぎるぞ?その点は問題ないの!!何せ、ノアに攫わせるからの!!勇者が人の味方だけをすると神が決めたかの?答えは否!!勇者が守るものは神が定めるのではなく、勇者自身が決めるもの!!己が正義を貫き、誰かの為になるのであれば例え魔王国の勇者になろうと神はお許しになるのじゃ!!」
「はぁ?!ノアに行かせるのか?!アイツはまだ子供だぞ!!」
「........ノアは私の部下」
「知るか!!大体、魔王軍の全権を持っておるのは妾じゃからの!!妾の気分で何時でも所属は変えられるのじゃよ!!レオナの元を去る日が来たの!!........あ、ちょ待てレオナ。さすがに所属は変えないから本気で落ち込むな!!お主の部下である事は変えぬから、今回は貸出しという形をとるから!!」
自分が部下のとコミュニケーションが取れず、無理やり所属を変えられてしまうのかと思い暗い雰囲気を全身に纏い始めるレオナ。
魔王は“不味い”と察すると、直ぐさま言ったことを訂正する。
レオナにとって始めての直属の部下であるノア。
レオナは自分なりに試行錯誤しながらノアとの交流を深めようと頑張っているのだ。できる限り怖がらせないようにしつつ、部下を可愛がる。
直属の部下と言うだけあって、レオナはかなりノアの事を気にしているのである。
「ほんと、所属は変えないからの!!今回はエリスの下に着いて貰うが、ノアはレオナ直属の部下じゃから。決してお主に足らぬところがあった訳じゃないので落ち込むな!!」
「........分かってる」
「あーあ。魔王様がレオナを泣かせたぞ。これは第四魔王軍に報告だな。いやー、魔王国も遂に反乱が起こるのかー」
「魔王様サイテー」
「今のは配慮に欠けるな。魔王様が悪い」
「今のは良くないです........レオナさん、かなり頑張ってノアくんとの交流を深めてるって聞きましたよ?」
「これは道徳の授業が必要ですな。魔王軍全員で魔王様に人の心を学んでもらいましょうか」
その後、魔王は15分ほどレオナに自分の失言を謝り続けるのであった。
後書き
原☆作☆崩☆壊☆
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