第21話
俺は翌朝も荷物で足りない物とかがないかチェックをした。
朝飯も食べたら自室に戻る。ちなみに蒼月さんはもう朝早くに帰っていた。嵐月も一緒に行っている。月華ちゃんがやってきて「……兄上はしばらく蒼月様の所で居候するそうです」と伝えてくれたが。けど弱った。悪霊退治ができねえ!
仕方ないのでスマホのメールで夕凪に「今日から明後日までは悪霊退治、休みでいいか?」と送ってみたが。返事は「わかった」とあった。
不意にドアがノックする音が響いた。月華ちゃんは既にいない。俺は仕方ないと返事をする。
「……雄介。嵐月様がいないけど」
「ああ。なんか、蒼月さん、水之江さん家に居候するとか言ってたけど」
「えっ。嵐月様。水之江さん家って。怜ちゃん家にいるの?!」
「……そう言ってたぞ」
「……そう。でも雄介が大変な時なのに」
母さんはふうとため息をつく。俺もやれやれと息をついた。二人して呆れていたが。母さんはふと何かを思い出したらしくこう言った。
「あ。思い出したわ。雄介。夕凪さんがね、電話をくれたの。伝言を頼まれて。「二日後には迎えに行きます」との事よ」
「……そっか。わかった。わざわざありがとう」
「……いいのよ。夕凪さん、本当にいい子ねえ」
「それは思うよ。一応、荷造りはしといたんだけど」
「あら。自分でしたのね。私もチェックを手伝った方が良かった?」
「そうだなあ。何か足りない物があっても困るから。手伝ってくれないかな?」
そう言って訊くと母さんは「いいわよ」と快諾してくれた。その後、荷物の最終チェックをしてもらったのだった。
翌日、俺は悪霊退治を休んで普段通りに生活をしていた。朝飯を食べてスマホで適当にネットサーフィンをして。昼飯もという感じでダラダラしていたが。さすがに母さんに叱られた。
「……雄介。ちょっとは動きなさい。ダラダラしてたらよくないわよ!」
「……へーい」
「もう。仕方ない。お庭の草引きするから。手伝ってちょうだい」
俺はげっと言いそうになった。こんな激暑の中で草引きだと?!
「……嫌そうな顔したってダメよ。ダラダラしているあんたが悪いんだから」
「はい。わかりました」
頷くと母さんは麦わら帽子と軍手、長袖のシャツとズボンを用意するように言ってきた。仕方ないので自室に行って長袖のシャツとズボンに着替えてくる。家の和室の押入れにあった麦わら帽子と軍手を出してきた。後、草引き用の道具も用意して母さんが待つ庭に向かった。
「……準備はできたみたいね」
「うん。で、どこをやればいいんだ?」
「母さんはここをやるから。北側を頼むわ」
俺は頷いて北側に移動する。しゃがんで草引きを始めたが。じいわじいわと蝉の声が聞こえてとにかく暑い。それでも我慢してぶちぶちと草を引っこ抜いた。暑いのでダラダラと汗が浮かんでは流れていく。耐えながら黙々と作業を続けたのだった。
一時間後にやっと庭の草引きは八割は終わった。けどなかなか終わらない。母さんも暑いのか「ふう」と言いながらも続けている。俺はさすがに若いからまだいいが。
(……母さん。あんた、厳しすぎるぜ)
そう思いながらも草引きを続けたのだった。
夕方になりやっと草引きは完全に終わる。俺はふうと肩にかけたタオルで額や顔に浮かんだ汗を拭き取った。
「……あー。終わった」
「……お疲れさん。雄介も疲れたでしょう。片付けが終わったら麦茶でも飲んで休もうじゃないの」
「そうしようか。じゃあ、引いた草はあっちのゴミ袋に入れたらいいか?」
「うん。そうしてちょうだい」
「……へーい」
俺は母さんに言われた通りに置いてあるゴミ袋に引いた草を入れる。それを何度かしてから母さんを待った。同じように母さんもすると道具を物置小屋に仕舞ったり、ゴミ袋を庭の隅に置いたりした。片付けが一通り終わると雲行きが怪しくなってくる。空が曇り出して辺りが薄暗くなった。
「……あら。これは一雨きそうね」
「本当だ。洗濯物はもうしまい込んだ?」
「うん。それは草引きの前にすませておいたけど」
母さんは頷いた。俺はもう中に入った方がいいと言って一緒に家の中に入った。麦わら帽子を脱いで軍手も外す。麦わら帽子を母さんに渡してから手を洗いに行った。洗面所で手をジャバジャバと洗った。石鹸で綺麗にしてすすいだ。外した軍手も軽く石鹸で洗ってから固めに絞る。適当な場所で干してから土や汗で汚れたシャツとズボンを脱いだ。下着類も脱いでから大きな声で母さんにシャワーを浴びることを言っておいた。
「……母さん。先にシャワーを浴びるぞ!」
「……はいはい。着替えは用意しておくから。シャワーが終わったらまた言ってね!」
「はーい!」
返事をしてから浴室に入る。ざざっと頭をシャワーのお湯で濡らした。シャンプーを手に取って泡立てる。
頭をざざっと洗ってすすぎ、コンディショナーもした。またすすぎ、ボディーソープで身体も洗う。泡を全部洗い流す。そうしてからシャワーを止めた。タオルで頭や身体の水気を取ってから脱衣場に出た。大きな声で母さんにシャワーから上がった事を伝えた。先ほどの言葉通りに母さんは着替えを持ってきてくれた。俺は下半身をタオルで隠しつつも着替えを受け取る。苦笑いながらも母さんは「本当に雄介の言った通りだったわ」と言って台所に戻っていく。どうやら、夕立ちが降っているらしい。俺は服を着ながらほうと息をついたのだった。
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