第7話 嫌われ者のはずなのに、辺境に行ったら歓迎される【領主様っ! めっちゃくちゃ期待してるぜ!】

【アルバート様、歓迎しますっ!】

【最高の領主様が来たっ!】

【愛していますわっ!】


 ブラックムーアにある、アイン村へ到着。


 デス・ダンジョンから出るモンスターに、苦しんでいるらしい。


 傲慢で怠惰な悪徳領主が来たのだが、


 なぜか村人から歓迎されて。


「どうしてみんな、俺を知ってるんだ?」

「使用人がアルバート様の評判を流して、領地中に広まったのです。すでにアルバート様は【英雄】なのですよっ!」


 キラキラした目で、エルフィーネが俺の手を握る。


「迷宮攻略、一緒に頑張りましょうね……っ!」

「マジかよ……」


 ダメ貴族のはずが、


 知らないうちに、いい人にされてる……?


【アルバート様がきっと助けてくれるわっ!】

【領主様っ! めっちゃくちゃ期待してるぜ!】

【救世主様あああああああああああっ!】


 ブラックムーアでは目立たないように、まったり暮らしたいと思っていたのだが、


 村人から熱すぎる期待が……


 俺は村人から歓待を受けた後、


 とりあえず、領主の館へ。    


「すげえ……めっちゃくちゃキレイだ」


 ボロボロの崩れかけた館と聞いていたが、


 新しいピカピカの立派なお屋敷で。 


「いったいどうなってるんだ……?」


 門の前にいた俺に、


 館の中からメイドが出てきて、


「アルバート様っ! 館を建て直しておきましたっ!」

「た、建て直した……?」


 ここに来るまで、1週間かかった。


 だった1週間で、館を全部建て直すとは……どんだけ有能な使用人だよ?


「はいっ! 素晴らしいご主人様のアルバート様のために、アイン村の人たちにも手伝ってもらいました。少しでも快適に過ごしてもらいたくて……」

「そ、そうか。ありがとな……」

「(きゅん……////) あ、ありがとうございます……っ! ああ……っ! もう死んでもいいですぅぅぅ」


 倒れそうになった(?)メイドを抱きながら、


 俺は館の中へ入ると、


「「「アルバート様……っ! おかえりなさいませっ!」」」


 マクタロード家の使用人全員が、俺をお出迎え。


「いや、お前たち……マクタロード家に帰らなくていいのか? お前たちがいなくて、困ってるんじゃ?」


 当然の疑問をぶつける俺だが、


「いいえ! あたしたちは、アルバート様に一生お仕えしますっ!」

「俺たちは、アルバート様に着いていくぜっ!」

「アルバート様……私たちを雇ってくださいっ!」


 熱烈な支持を受けてしまう。


「ふふっ! さすが英雄のアルバート様ですっ! さあさっそく剣の鍛錬を始めましょうっ!」


 ふにょん!


 俺の腕に柔らかいものが。


 俺はエルフィーネに、抱きつかれるのだった——





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