第6話 あたしたちは、アルバート様にどこまでも着いていく メイド視点

 あたしは、リコ。


 アルバート様の専属メイドです。


 アルバート様が3歳の頃から、お仕えしています。


 今日、アルバート様がブラックムーアへ追放されることが決まりました。


 つい1年前なら、この追放を大喜びしました。


 傲慢で使用人全員を見下し、


 おまけに怠惰で、歯磨きまでメイドにさせていました。


 でも、今は——


 まったく違う人になりました。


 朝、起こしに行くと、


 あたしにご挨拶してくださいます。


 お父上のマクタロード侯爵、


 兄上のマルス様、姉上のリーセリア様は、


 あたしたち使用人とすれ違っても、


 挨拶も会釈もしません。


 使用人ごときに、挨拶などしない——


 あたしたちを、大いに見下しているのです……


 レギーナ様だけが使用人にご挨拶してくださいます。


 アルバート様は毎日笑顔で、


 あたしにご挨拶してくれます。


 笑顔がとてもカッコよくて、


 その……いけない気持ちになってしまいます。


【最近、アルバート様は変わったわよね?】

【アルバート様、いい人になりました】

【お優しくて、好きになってしまいそう……////】


 メイド仲間たちの評判も、急上昇しています。


 休憩時間には、みんなアルバート様の話ばかりします。


 「本日のアルバート様」を、みんな楽しそうに語るのです。


 あ、噂によれば、


 剣聖のアルフィーネ様が、アルバート様を——


 いけない、いけない。


 噂好きのメイドは、アルバート様に嫌われてしまいます……


【アルバート様、追放されるんですって!】

【酷すぎるわ……っ!】

【絶対、アルバート様に着いて行くわっ!】


 使用人全員が、アルバート様に着いて行きます。


 パワハラ侯爵家に、みんなウンザリです。


 アルバート様なら、使用人を大切にしてくれます。


 ……えっ? 全員辞めたら、侯爵家が困るって?


 そんなことは、知りません……!


 今更困っても、【もう遅い】のです。

  

 私たちは、アルバート様にどこまでも着いていきますからっ!

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る