第11話

「お前、余計なことしてくれたな」

「なんだ?まだやりあうつもりか?」

「そうじゃねぇよ」

ばつが悪そうにする男。

「いいか、あいつは今は盲目で店の一角で芸妓を営んでるが元は才女で、教会に入れば将来は幹部くらいにはなれるだろう。だから俺は、あいつにこのまま無為に時間を浪費させたくなくて、突き放す為に強い態度をとってたんだよ。それをお前は!」

「そういう事でしたのね」

陰に隠れて話を聞いていた彼女は真相を知り、涙を流す。

「俺もごめんな」はたと抱き合う二人。



くだらんドラマだな、と「お二人ともお幸せに~」と、抱き合う男性二人にお別れを告げる音声を聞きながら俺は独り言をつぶやく。

エルフにも女性だが女性の輪に混ざれないものというのはいる。たいがいは性転換手術を受け男性として仕事に進むが、中には 水商売 に進む者がいる。彼女らは本人に対して性行為を行わない事(結闘をしない)を条件に男性2~3人に対して一人が付く、これを俗に男に寄生する女(アビュータ)と言う。

だいたいは性格などで教護院で勤めきれなかった16才以上の女エルフだが、まれに15歳未満で教育から逃げて年齢詐称して働いている者も入りという。が、本当かは知らない。とりあえず、これによって女性集団が担っていた役目(結闘を防いでいるなど)の代用をしてもらっている。

そうした中には不運にも事故や病気で身体不具になり水商売へ進む者がおり、今見てる動画はその悲哀をドラマにした話にみせかけた男同士のホモセクシュアルドラマらしい。

帰ってきてから時間が空いたので時間つぶしに動画でも見るかと思ったんだが、ネットのランキング上位はホモ一色!

どうなってんだこれは!?

※役者業もアビュータ


アサ「ごはんできたぞー」

「うーす、今行くわ」


食堂に行くと、やはりヒューム仲間からの協力は難しかったのだろう、今日もドグマがいる。彼が来てから共同スペースは掃除されているし、ゴミなども出してもらっている約束も守っているから居てもらっていいのだが、でも俺たちがいなくなったらどうするのだろう?という思いがないと言えばうそになる。

俺たちがここを去ったら彼は野垂れ死ぬだろうか?さりとて、俺たちに彼をずっと面倒見る義務もないが。


「今日は豚肉のしょうが焼き か」


俺が行くとすでに4人が席に着き、食堂にはカチャカチャと食器がこすれる音が鳴っていた。俺も席に座り、食前にまずは一杯とプロテイン入りの豆乳を飲み干し、食事を食べ始める。

ちなみにプロテインには人工甘味料が入っていないものを選ぼう。人工甘味料とは成分表にスクラロース、アスパルテームetcと言った記載があり、ヒトの対糖性(血糖値の制御能力)と味覚をバグらせる危険性があるぞ!

もちろんこうした成分は普段の食品にも添加されている可能性があり、注意が必要だ。人工甘味料は砂糖の200倍の甘未があるものもあり、脳が甘味に慣れると糖尿病のリスクが上がるぞ。

なんでそんなものを添加しているかだって?簡単だからさ管理が。

”上”の奴らはくだらない商品管理ロスを気にして、俺たち大人にピーマンが嫌いで駄々をこねるようなガキ向けの甘ったるいミルクを『嫌なら入ってない商品を買えばいいじゃないですか、それが自由ってもんです』とうそぶきながら売る、外道だ。

俺たちはそのしわ寄せで添加物まみれの経済を・・・強いられているんだ!


エレ「そういえばヨナとスイは今日、教護院へ行ったらしいですが、どうでした?」

「あぁ、1か月くらいなら滞在しても大丈夫かな、ってさ。そういえば、エルリさんとはお知り合いだったんですか?今日行ったところ、あなたの事を知っているようだったので」

「えぇ、以前に少し」

「そうですか」


しばらく黙々と食べていたが、俺は意を決して切り出すことにした。


「そろそろ訳を話してみてもらえませんか。力添えできるかもしれませんよ?」

ヨナ「そっすよ、袖すりあうもなんとやら、っす」

アサ「建前は置いといてだ、いいかおっさん、自由っていうのは自由じゃない。

自分の価値を認めさせ続けなきゃいけない枷だ。

ヒュームは整備士になる事も、料理人になる事も、掃除夫になる事も、畜産作業員になる事も、できる。なぜならヒュームに求められてるのは労働 であって 貢献 じゃないからな。でもこの今ある制度や環境っていうのは今いる俺たちが守らなきゃいけない、過去に何があったかは知らないが、死出の供に秘密を持っていくというのは個人にとってはいい、でも残された同族にとって場合によっては酷い置き土産だ。

確かに過去の恥を他人にさらすのは恥ずかしい。

個人の恥より、集団の誇りを守らなかったとすればエルフ国にいるヒューム全体にとってマイナスだと思わないか?」


アサの問いにドグマは「へぇ、勘弁してくださせぇ」と、ヘコヘコと頭を下げている。自分の卑屈さや落ち度を認識しているものは自分の痛いところを追及されると発狂してごまかそうとする。でも彼はヘラヘラと誤魔化し笑うでもなく、ただ「勘弁してください」と頭を下げている姿を食事をしながら見ていると、あぁ、彼は恐らく後ろ暗さがないのではないかと思った。

その無骨さはそう、中小企業の社長が資金繰りに得意先を回るような信念をもって行動している時のようだった。


アサ「よーし、じゃあとっておきのたとえ話だ、昔、アイドルという集団がいた。こいつらはシャブで逮捕だの、灰皿にウンコだの、枕営業だの、中には結託してジャニーズ北沢とかいう性犯罪者を生存中はテレビ局が総出で擁護しむしろ被害者を叩き、死んでから北沢を叩き始めてさらにマスゴミ離れが加速したなんていう事件まであった。こういう道義に反する行為は、同一集団への、世間からの完全に白い目で見られる契機となる。

ジャニーズとかいうきっしょい性犯罪者集団を支持する自身の醜い願望を叩きつけるキショオタ婆と、金儲けに使うテレビ局が悪い、それ以上に自浄力がない一党が世間から信用を失うのは一瞬で、そうしたものに対して社会は攻撃的だ。

確かに自分の恥部を他人に晒すのは我慢できないかもしれない、でももしおっさんの行為で他のヒュームがわりを食うなら、酷い置き土産だぜ。」


アサの鮮烈な芸能界批判が終わり、長い沈黙の後、「そうですね、あれはもう20年も前ですか・・・」ドグマは彼がこうなった境遇を語り始めた。

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