第15話 移籍準備
移籍についてなんだけど俺と一緒に来るのはいつものメンバー(フィオさん、じいちゃん、ばあちゃん、マギさん)となぜか付いてくることになったルイさんで確定。行き先はじいちゃんとばあちゃんがおすすめの通商連合っていう国に決定。俺は何も言えずどんどん決めてくれたよ、手続きとかよくわからないから手伝ってほしいくらいに思ってたからこれは助かるけどいいのかな? みんな自分の意志だって言ってくれたからもうなにも言わないけどね。
「それで、じゃ。出発の日取りはどうする? わしらは店の整理もあるから少し時間がほしいんじゃが…」
「すまないねぇこんなことなら整理しとけばよかったんだが…」
「なに言ってるのぉ〜? ねぇ〜ティーロくんの〜アイテムボックスってぇ〜家とか入ったりしな〜い〜?」
じいちゃんとばあちゃんは気づいてないみたいだけどマギさんにはさすがにバレてるよね。
「うん入るよ。だから持ち家なら家や店ごと持って行けるからそうしようか。」
「ティーロくん… それほどなのか…? アイテムボックスは魔法の中でも才能にかなり左右されるんだよ、普通は貴重品だけ入るくらいなんだけど店を2軒も…?」
「じいちゃんの店とばあちゃんの店、じいちゃんとばあちゃんの家にマギさんの店で4軒だよね?」
「そ〜ね〜、それだけでいいわ〜。私たちが町を出る手続きはしておくからそっちの3人はそれぞれでやっておいてね〜?」
この町にも一応土地台帳はあるみたいで、持ち主についてなんかを記録してあるらしい。3人は土地も家も借り物じゃなくて持ち物だったみたいで不動産を扱う商会に土地だけ売るんだって。建物はアイテムボックスに入れるから腐りそうなものと着替えくらいを持ち出せばそれで引っ越しの準備はおしまい。俺達ハンターはギルドで「移動する」って伝えたらそれで済むから楽でいい。たぶんフィオさんが1番手間がかかると思う。ルイさんは何度も移籍してるらしくて引き止められても気にしないみたい。それにマギさんが何か考えがあるって言ってたからきっと大丈夫。
そうして俺達がこの町を出る日…
Side ルイ
「ではルイさんはこの「指名」のある「護衛依頼」を受けられるということで処理します。ですが本当に行ってしまうんですか? うちとしてはもっと長く居ていただきたいのですが…」
「そう言ってもらえるのは嬉しいけど「指名」だからね、それにそろそろ他の町も見たくなってきたからちょうどよかったというのもあるんだ。ここがいやになったわけじゃないから気が向いたらまた来るかもしれないよ。」
ま、来るわけないけどね。この町は人もギルドもどこか濁ってる。パーティーを組んでたやつらは最低限の腕はあるけど向上心がない。なんていうか諦めてる感じがする。そんなところに長居したらこっちも濁ってしまう。
「わかりました… ですが護衛依頼をソロというのはどうなのでしょう、こちらから動けるハンターを紹介することもできますが?」
「それには及ばないよ。依頼主とは事前に話したし今はこれで行くことにお互い納得してるから。」
「そうですか… 優秀な若手に指導をしていただければと思いましたが仕方ありません。それでは完了の報告はあちらのギルドへお願いします。いってらっしゃいませ。」
ははっ優秀な若手? まさかティーロくんを追い出したパーティーじゃないだろうね? これ以上関わりたくないからオレはさっさと受付窓口を離れる。
「やあ、それじゃ行こうか。」
そう言って今度は別の受付窓口に行く。さっきのところと違いこちらには並んでいる人はいないからすぐ対応してもらえた。
「すみません、オレと彼のパーティー登録をお願いします。」
「はい、ルイさんとティーロくんですね。かしこまりました。すぐに手続きをいたしますのでこのままお待ちください。」
そう、次に並んだ(…並んではいないか)のはフィオさんの受付窓口。
「おまたせしました、パーティー登録はこれで完了しました。他にご用はございますか?」
「いえ、このあとは依頼主のところへ向かいますので大丈夫です、ありがとうございます。」
それだけ言ってオレたちはギルドを出る。いや、出ようとした…
「ちょっと待ちたまえ!」
うわ… やっぱり来たよ。最初の受付嬢がオレがフィオさんの受付窓口に向かうと対応中なのに放り出して奥に引っ込んだから呼びに行っていたんだろうね。対応されてたハンターがすごい顔でこっちを睨んでるけど勘弁してほしい。彼女はたしかに美人だけど君に脈はないと思うよ。
「なにか?」
「なにかではない! どういうつもりだ、こちらの紹介するハンターは断っておきながらそんなやつとパーティーを組むなんて!」
「ルイくん、その対応はうちをバカにしてると感じてしまうなぁ?」
怒鳴りつけてきたのはたしか受付の主任で、ニヤニヤしながら嫌味を言ってくるのがこの支部の副支部長だったか。ほんと濁ってるよ。
「誰と組むかはハンターの自由。これは当たり前のことでは?」
「そのとおりだ。だが私たちはそれぞれの相性を見て紹介しているんだ、それを無下に断っておきながら他の者と組むのは筋が通らないと言っている。」
なにを言ってるんだ? 自分たちが紹介したハンターと組まずに他と組むと筋が通らないなんて聞いたことがない。Bランク以上のハンターがこの町に長居しないのはこういうことを平気で言うしそれを止めないこの空気が原因だって…気づいてないから続けてるんだろうね。
「そう言われてもね。オレとしては実力も性格もわからないやつより試験を通してある程度把握できている彼と組みたい。そんな彼とばったり出会ったら勧誘くらいするだろう?」
「ばったり? そんなわけがあるか!」
「いやいや、そう言われてもね。それに依頼主との待ち合わせがあるんで早く行かせてもらえないかな? ここの支部は依頼主のハンターへの心象を下げさせたいのかな、それとも自由にならないハンター限定かな?」
オレはもうこの町を離れる。そんなオレに嫌がらせをすればこの話が他の町に広まることは明白。それくらいはわかるよね? わかってほしいなぁ…
「くっ… だがこいつは!」
「不合格だったんだろ? それでもCランクだ。Bランクのオレと組んでも問題ないよ。もういいかな? それじゃさようなら。」
こいつらはなんて言うのかな、良く言えば地元に根ざしてるっていうのか? いや、普通に地縁血縁で雁字搦めって印象だね。他所から来たら地元のやつに尻尾を振れっていう空気がほんと気持ち悪いよな。6月くらいはいようと思ってたけど2月ちょっとでこれだよ。
「それにしてもティーロくんはよく黙ってたね? 腹が立ったりしないのかい?」
作者です
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