第10話 昇格試験(Bランク)
試し切りは無事に済んだし、オーガ狩りの予行も問題なし。あとはランクの昇格試験を受ければ晴れてBランクハンターになれるってわけだ。
ここまで昇格に試験なんてなかった。そりゃそうだよ。Cランク以下は言っては悪いが下級扱い。ベテランではあるけど上級とは呼べないってところなんだ。CランクからBランクに上がるには才能の壁がある。この場合の才能っていうのは能力だけじゃなくて生まれ育ちも含めたものになる。親が貴族だったりBランクやAランクのハンターだったりすると子供の頃から英才教育を受けたり、装備品を融通されたりして強くなりやすい。結局強さかって話だけど強さ以外にも礼儀作法とか読み書きなんかも試験されるからほんと参ってしまうよね。
日本での礼儀作法なら最低限できるつもりだけどこっちでの作法はさっぱりだよ。あと、この礼儀作法の試験って恣意的に採点できるからちょっと心配だよね。
「あんたが今回試験を受けるハンターかい?」
ギルドの待ち合いで声をかけてきたのはこの間見かけた短剣を使う魔法使いさん。魔法使いぽくローブじゃなくて動きやすさを意識した丈夫そうな布の服を着てる。
「はい、ティーロと言います。あなた達が試験官役をしてくださるBランクハンターでしょうか?」
ここは下手に出て丁寧に対応しとかないとね。俺がこういうところで減点されると俺を推薦してくれたフィオさんに恥をかかせることになるから。
「ああ、オレ達が試験官をするんだが… お前だけ… もしかしてソロか?」
「はい、なかなかメンバーに恵まれなくて。」
「そうか… うちに勧誘したいところだがまずは試験だ。ここを出発して森に入りオーガを狩り、ここに戻ってくる。それをオレ達が評価してお前がBランクにふさわしいかギルドへ報告することになる。質問や相談は今のうちにしておいてくれ、出発したらお前には何も言えないことになっている。」
「ありがとうございます、よくわかりました。それでは質問ですが、オーガは何匹狙えばいいですか? 群れの場合の対処などを教えてください。またオーガより上位のモンスターがいた場合など不測の事態はどうしたらいいですか?」
「うむ、対象は1匹以上だ、何匹狩っても問題はない。できるものなら10匹以上狩ってくれてもいいぞ。それから不測の事態についてだが、そういったことへの対処も評価対象だ。他にあるか?」
「いえ、大丈夫です。準備も済んでいますので出発します。あ、もし魔法を使うときは一応声かけはしますのでお含みおきください。」
ということで森に到着。えーっとオーガは… 最近狩りまくったから減ってないといいんだけどね。
森の中を歩いてるとオークの亜種がちらほらいるね、今夜の晩御飯のために狩っておこうか。
見つけたオーク亜種たちはオークメイジ1、オークウォーリアー3、普通のオーク5の群れ。これくらいはすぐ済むね。気配を消して1番厄介なオークメイジの後ろを取って首に落とす。オークメイジの両脇にいたオークウォーリアーは俺に気づいて襲ってくるけど残念、走るオークウォーリアーより俺の踏み込みの方が早い。1匹のオークウォーリアーの脇を抜けるように胴薙ぎ。半分くらいを切ればいいと思ったら上下に分断しちゃったよ。
ま、こんなもんか、肩慣らしにちょうどよかった。お! オークメイジの肉がドロップしてるじゃん、亜種って食感とか味とか微妙に違ってオークメイジは脂の乗りが良く柔らかくて美味いんだよね。オークウォーリアーの肉は少し筋肉質強めなんだけど肉を食ってる感があってこっちも美味い。なんでオークウォーリアーの話もしたかっていうと、このあと同じ構成の群れをもう1つ狩ってオークウォーリアーの肉がドロップしたからだよ。
さて、ここからが本番。でもさ、これって不測の事態じゃない? オーガ3匹に亜種のオーガウォーリアーがいるんだけど。これくらいならBランクでも対処可能なはずだけど昇格試験でやるべきじゃないよなぁ… ま、いっか。これくらいなら余裕だし。
とりあえず土魔法の石槍でオーガ3匹を包囲殲滅。こんなん一瞬だよ。さぁ、やろうか。
オーガウォーリアーは3メートル近い巨体から2メートルはあるこん棒を振り下ろす。こんなの受け止めたら潰れちまうから横に移動して回避するけど、向こうもそれは読んでいたみたいでそこからの薙ぎ払い。後ろに跳んで回避したけどすごい風圧だよ。こんなのもらったら原形残らないくらいにならないか?
お互い距離をとって仕切り直し。うん、こいつなかなかやる個体だね。試験じゃなかったら魔法でサクっと窒息させるんだけど仕方ない。
オーガウォーリアーはこん棒を大上段に構えて渾身の打ち下ろしをするつもりか、なら真正面から受けてやるよ。俺はオーガイーターを納刀して抜刀術の構え。
「ほら、受けてやるから来いよ。」
「グァァァァァァァァ!!!」
薩摩示現流とやるときの新撰組ってこんな気分なのかね? いや違うか、だって負ける要素ないからな。
オーガウォーリアーはその声とともに全力の一撃を放った、のだろうけど遅いよ。
俺の抜刀術はオーガウォーリアーの両の手首を断ち切った。それに打ち下ろしのために頭が下がっているんだよね。抜刀の勢いを殺さずにもう1回転して首を落とす。
魔力を通した
魔石とドロップアイテムを拾って一応試験官パーティーに声をかけておくか。
「これでオーガの討伐は終わりということで今から帰ります。戦果は十分なのでこれ以上は狙わずにいきます。」
俺が襲われたら反撃くらいはするけどこちらから狩ろうとはしないと言っておく。リーダーの短剣魔法使いさんは察してると思うけど、そっちが襲われても手出ししないからね?
帰りは気配を薄めて無駄な戦闘は回避の方針でいこう。
はい、無事にとうちゃーく!
試験官パーティーもとくに襲われることもなく無事。1匹でいいところを3匹、さらに亜種のオーガウォーリアーまで狩ったからこれで落ちることはないと思う。落ちるとしたら礼儀作法かな…
「ティーロくん、お疲れさま。これで実技の試験は終了だ。あとはオレ達が報告書を出して、礼儀作法の試験と合わせて結果を出すことになる。」
「ありがとうございました。皆さんのおかげで後ろの心配なく狩りができました。」
「それはこちらの台詞だな、行きはともかく帰りは近づくモンスターに殺気を飛ばして追い払ってくれていただろ? 君が1人なら気づかれずに帰れたと思う。足を引っ張ったようで申し訳なかった。」
「いやいや、もし襲われても皆さんなら問題なく対処できたと思いますし俺としては早く帰りたかっただけですのでお気になさらず。」
「そう言ってくれると助かる。出発前に言った勧誘したいという件だが取り下げさせてくれ。オレ達では君に釣り合わない。君はもっと上に行けるはずだ。」
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