第4話 今日の収穫
今日も今日で森に来ている。この森は若手ハンターが腕を磨くのに相応しい強さのモンスターしか出なくて助かる。それなりになってくると手応えがなかったり稼げないからほかへ移動するんだ。俺もスキルレベルだけで見ればここを卒業してもいいんだけどハンターとしての作法とかそういうのに疎いからここでもうしばらく過ごそうかと思ってる。
ぶっちゃけた話、ゴブリンの納品にもそろそろ飽きてきた。時空魔法でみんな大好きアイテムボックスが使えるようになったからゴブリンの魔石はたっぷりストックはしてあるんだけど時々馬鹿にしてくるやつがいてイラっと来るからね。
となると問題は次の獲物なんだよ。納品をゴブリンから他のに変えるならじいちゃんばあちゃんに持っていくものも考えないとだからな。
そんなことを考えてると熊か、こっちに走ってくるけど無駄だね。土魔法で檻を作って風魔法で酸素濃度を一気に下げる。気絶したところで首を風の刃で落として狩りは終了。水魔法で血抜きして…と。熊に見つかって3分と経たずに色々始末できて、10分ちょっとで解体も完了。解体のスキルが取れてからは作業が早くなって助かるね。これはじいちゃんばあちゃんへの土産にしようかな、熊の内臓って薬になるって言うし毛皮とかはじいちゃんが何かに加工するかどこかに流すかするでしょ。
さてと、熊を倒したしギルドに納品するのはとりあえずオークの魔石でいいか。あとは訓練の意味で… そうそう、こういうオーガとかちょうどいいよね。
はぁ… 一応この森の最強格のはずのオーガだったけど10分もたなかったな。武器を持ってなかったし適当に受け流して腱を切ってやればそれでおしまい。これなら剣術の訓練より魔法の的になってもらった方が役に立つよ。
強くなるのは嬉しいけどそれで困るっていうのもね。上の狩り場に行けばいいんだろうけどそうすると今のランクだと面倒なことになりそうだし、ランク上げるか? ちょっと早い気もするから悩むんだよなぁ…
俺は元のメンバーと組んだときはEランク、メンバーたちもEランクだったんだが、あいつらはこれまでの蓄積があって1月もしたらDランクになってた。だから俺だけ分け前が少なかったのかもね。あいつらはつい最近Cランクに上がったって聞いたから俺が追いつくとまた何かしら絡んで来そうなんだよ。俺は脱退してすぐにDランクになったから今俺がCランクになるとあいつらより早くD抜けしたことになって確実に
ちょっと気分が悪くなったから一気に収穫だ! これから寒くなるし風邪をひいたりで熱を出すひともでてくるからヒエヒエ草は多めに。基礎体力が落ちたときのためにチリの実と… よし、体力増進に効果のある生薬を色々取れたな。辛い味付けに使えるものも多いしピリ辛鍋のレシピでも広めてみようかな。馴染みになった食堂に半分くらい持っていこう。
「こんにちはー、フィオさんお疲れ様。」
「あら? ティーロくん、今日は早いわね? どうしたの?」
「うん、このあと外食したいなって思ってさ。魔女の大鍋でいいかな?」
「いいわね、でも仕事が終わるまでまだかかるわよ?」
「うん、マギさんと新作を作ろうと思ってるからちょうどいいよ。終わったら合流してね。それじゃ今日の納品だけど、俺がCランクになるのにあとどれくらい足りないかな?」
「やっとランクを上げる気になったのね、えっと… オークの魔石を3個になるわね、魔石の買い取り価格は1個大銅貨3枚ね。」
「そっか、んじゃこれで。」
そう言ってオークの魔石を10倍の30個取り出した。これで銀貨9枚、9万円か。実はオークの魔石は山ほどある。肉が欲しかったのと魔法の試し撃ちに乱獲したんだよね。それでも絶滅しないんだからモンスターは繁殖って言うより湧いてるんだと思うんだよね。
「えっ、ちょ、えぇ!?」
「今まで黙っててごめんね、この2月くらいで実はこれくらい強くなってたんだ。」
「そう… なんで黙って… あ、そうよね。」
「うん、面倒事は避けたいからね。Bランクに必要なものは後で教えてね、できるだけ早くBまで上げるから。」
「そんなこと…」
「この町のBランクのひとより今の俺は強いからいけると思うよ。」
「そのときはちゃんとパーティー組んでよ! これ以上不安にさせないで…」
「ごめん、ランクが上がったら組もうと思う。でもCだと横槍が入りそうだからもう少しだけこのままで頑張るよ。」
「わかったわ… でもそのときは私も覚悟を決めるから。」
フィオさんの覚悟? どういうことだろ、でもそれは今聞くべきじゃないよな。
「それじゃ、魔女の大鍋で待ってるね。」
オークの魔石の代金とCランクのハンターカードを受け取ってまずはばあちゃんの薬屋へ。
「こんにちはー、ばあちゃんいる?」
「いらっしゃい、どうしたんだい? なにかいいことでもあったのかい?」
ばあちゃんはこんなふうに俺のちょっとした変化にすぐ気づいてくれる。こういうのってほんと嬉しいんだ。
「今日は生薬になりそうなものが色々取れたから見てほしくて持ってきたんだけど買い取れそうなのあるかな?」
「ふむ… チリの実にジンジャの根、ガリックの根まであるのかい、このへんはうちよりマギのとこで食材にいいんじゃないかい? こっちは薬の材料だね、風邪薬に使えるね。それにこっちは女の人に良さそうだねぇ。相変わらずティーロはいいものを持ってきてくれるよ。」
「あ、それと普通の熊がでたからその内臓を全部持ってきてるよ。ばあちゃんならいい感じに使えるんだよね?」
「任せておくれよ、きっちり有効活用してやるさ。それにこれだけあればいい値段出せるから楽しみにしておいで。」
「値段はばあちゃんに任せるよ、それより今晩はマギさんとこで一緒に食べようよ。さっきのやつを使って新作を作ってみようと思ってるんだ。じいちゃんと一緒に来てくれないかな?」
「おや、いいのかい? あたしたちは嬉しいけどいいことがあったんだろ? そういうときはフィオと2人で祝えばいいと思うよ。」
いや、2人だと抑えられるか自信が…
「それは昨日やったから大丈夫。今日はじいちゃんとばあちゃん、マギさんも入れたみんなと楽しくやりたいんだ。」
「ほっほっ、ティーロも早く素直におなりよ? それじゃお言葉に甘えてお邪魔するよ。じいさんはあたしが迎えに行くよ。」
「うん、そうして。このあとじいちゃんにも素材を渡すから気分が乗る前に連れてきてね。」
よし、あとはじいちゃんのとこだな。これだけあればしばらくは素材を渡さなくても大丈夫だと思うけど…
「じいちゃーん、来たよー!」
「おぉ、ティーロ! どうしたんじゃ? 今日もなにか持ってきてくれたんかい?」
「うん、まずは熊の素材一式ね。内臓はばあちゃんとこに持って行ったから内臓と肉以外はじいちゃんにね。」
「うむ… これはなかなか、解体の腕を上げたの! じゃがわしのとこじゃなかなか扱えんものじゃなぁ。」
「だったら扱えるひとに流してくれたらいいよ。マージンとって酒代にでもして?」
「まーじん? 仲介料のことか、じゃが毛皮を扱うやつはすぐそこに…」
「じいちゃん! 俺はじいちゃんと取り引きをしに来てるんだよ。ほかのやつはどうでもいい。それより次! これはじいちゃんの領分じゃない? オーガの角だよぉ〜?」
「なんじゃと!? おぉ… これは本当にオーガじゃ… ティーロ… お前そこまで来たか!」
あ、あれ? じいちゃんの喜びポイントおかしくね? 鍛冶屋としていい素材が来たって喜ぶかと思ったけど俺の成長を喜んでる…?
「良いか? オーガをソロで倒せるならもうBランク相当じゃ。ここまでくればお前に理不尽な命令をできるのは貴族くらいになる。よく頑張ったの、わしはお前を誇りに思うぞ。」
「ちょ、ちょっとじいちゃん… やめろよ、ぐすっ… あー! もう! こんなんでいいならまた取って来るからな! あと、今晩は魔女の大鍋でみんなで晩飯だから! ちゃんと来てよね! じゃあね!」
くっそ… 泣かせんなよ… あっちのじいちゃんも俺がなにかできたらいつもすごく喜んでくれてさ… 思い出すじゃねぇか…
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