10/21 それはきっと醒めぬ夢 2
それは僕たちの声に呼応するようにあの最初の音のようなうなりを発する。僕が理解したのは、あれが敵性存在だということ、瓦礫の集まりであることだった。高澤がすぐ指示を出す、
「1回後ろに下がれ!」
そして高澤が残り、「連撃」を打とうとした時。
「武器がない」
「えぇ!?」
「俺も使う時は出せると思ってた」
「おい後ろ!」
高澤はそれのパンチをもろに食らってこっちの方に倒れてきた。
「ちょっえぇ!?」
僕は大急ぎでポケットにねじ込んであった例の銃を抜き、撃つ。電撃仕様の銃は、ライトグリーンの閃光を吐く。敵に命中したが、瓦礫が少しこぼれ、また戻った。
「これじゃダメか」
「誰か爆破できないか?」
いつの間にか立ち上がっていた高澤が言う。
間髪開けず中村が「花火」を使う。瓦礫は割れ、苦しみながらなお僕たちに向かって突進してきた。
「避けて!」
敵は僕らの横をすり抜け、落ちるギリギリで止まった。猛然と振り返り、もう一度突進する。
もう一度「花火」が放たれる。今度は瓦礫は後ろに吹き飛び、ビルの下に落ちていった。
「落ちたか」
高澤は落ち着いている。
「こ...怖かった...」
女子3人はそっちの方が落ちてやばいんじゃないかって程の端で固まっていた。
「高澤、回復しないと」
僕は彼の傷を確認する。幸い軽い擦り傷と打撲だけだった。「回復」をすると、高澤についたアザは消えた。
「すっご...」
中村は見てはいけないものを見たような顔をした。
僕らは全員戦闘が終わったらビルは崩れるとかいう圧倒的ご都合主義思考を持っていたが、当然ビルが消えるはずもなく、どうしようかと顔を見合わせた。
「俺の花火で床爆破する?」
「うーん、そのまま全部崩れて全員死ぬと思う」
「でもどうしろと」
7人で円を作ってまた作戦会議。そう。降りれなくなってしまったのである。まるで木に登って降りれなくなった猫、いや、本当は登りたくなかったが実際そうである。遠くからあの音が聞こえる。僕たちはそれの度に肩を震わせなければならなかった。
「っていうか、花火がダメなら天井切ればいいと思うんだけど」宮石が言う。
「ほら、高澤の」
結局、これが一番安全だということになって、斬撃で床を切ることになった。
「武器ある?」
作る、と言って僕は集中する。高澤にぴったりな武器と言えばきっと槍か剣だろう。その両方になるようなものを想像する。目の前にそれが現れた。
「双剣か!頭いいな。」
それは真ん中でふたつに分けることが出来る双剣だった。僕は、ほら、と言って刀の部分を指す。そこには操作盤があり、ボタンを押すことで刀の形状を変えられるようになっていた。それはヴォンという音と共に形を変え、小さい刀のようにも、鎌のようにもなった。
「えっそれ私も欲しい」
女子が盛り上がる。
「夜ならオーダー受け付けます」
僕は軽く流して高澤に渡す。高澤はそれを受け取ると、やや硬い動きでビルに三角形の穴を開けた。
「行こう」
僕が縄ばしごを作り、下ろそうとした時、あのビルの山から轟音がした。地響きのような音だが、揺れはない。やがて、その塊の中のひとつのビルが崩れる。
僕らはそれを呆然と眺めていた。ふと、ホログラムが浮き上がる。7人分同時に飛び出したホログラムは新たな機能の追加を知らせていた。
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