北宮一ビルの林の隙間で
10/20 明るい悪夢のはじまり 1
「くぁ...もう朝か」
朝起きた時特有の自分を忘れた記憶喪失者のような感覚から、徐々に自分を、記憶を取り戻していく。
「目覚まし時計で起きられてよかった」
僕はベットから起き上がり、制服のブレザーではなく私服のカーディガンに着替える。
洗濯物を持って、洗面所へ向かい、洗濯機に前日のパジャマを投げ込む。顔を洗い、生まれつきの天パと寝癖が合わさった厄介な敵とくしでもって格闘する。
「なんか今日タチわる...」
独り言をこぼす。なんとか敵を倒してから、リビング兼台所に出て、パンにハムとチーズ乗せたやつをトースターに突っ込む。このトースターはほかのトースターより火力がずば抜けて高いので、いかに焦げさせずに程よく焼くかは焼く人の才能が重要になる。焼けるのを待っている間、スマホを開き、意味もなくラインを見る。当然深夜など誰かが話す訳もなく、読むのが面倒で数日ずっと貯めてある公式アカウントの通知だけが悲しげに画面に映っていた。
やることもなくなったのでどうでもいいことを考える。僕はどちらかと言うと朝食はご飯派だが今日は米がない、別にパンが嫌いという訳でもないからどうでもいいな...とか考えてたらパンが焼けたので玄関先に届いている新聞の社会面を読みながらパンを貪る。
天袋で殺人、南北宮で暴動etc...
暗いニュースはいくらでも出てくるのに明るいニュースなんぞ数週間に1回レベルで出てこない。この国も末だなどと大人ぶったことを考えてたらパンがなくなった。時計を見るとそろそろ出てもいい頃合いだったので前夜に用意したリュックを部屋に取りにいく。
「ちょっと早いけどもう行くわ」とまだ部屋で寝ている親に言う。なお現在8時。
靴を履いて家を出る。特に変哲もない街を歩いて駅に行く。そういえば最近やっと寒くなってきたな、暑いの苦手だしよかったな。とか思いながら電車を待つ。運良く快速電車が来た。
北宮について、集合場所まで歩く途中に迷った。結局着いたのは集合時間10分前だった。
「おはよう、涼」
「おはよう、高澤」
既に到着していた高澤とほかの五人を待つ。やがて全員揃い、北宮の街へ歩いて行った。
「そろそろ腹減ったくね?」と中村が言った
「確かにそうだな。ねえみんな、そろそろご飯を食べに行かないか?」と高澤。
そうして僕らは既に決めていた半地下のラーメン店に入る。
「うぉーこの店替え玉2玉無料とかマジ!?」
「麺はバリカタしか勝たないっしょ!!」
「なるほど麺の硬さはゆで時間が関係しているのか...」
「太りそうだけど今日くらいは...食べたい...!」
「これを龍也くんが食べていたと考えると...!!」
「やばいめっちゃ迷う何食べよう全部美味しそうなんだけど」
「うーんじゃあ僕はこの豚骨ラーメンで」
等々各々盛り上がりながらラーメンを食べる。
「ふーおなかいっぱい」
「じゃあ余った替え玉俺にくれ!!」
「中村まだ食べるの!?まあいいかほr...」
僕が中村に替え玉の紙を渡そうとしたその時、半地下の頭上から異様な音がした。ガラスが割れたようにも、巨大な犬が吠えたようにも、なにか大きな機械が重大なエラーを起こしたような音にも聞こえた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます