第10話 火柱上がったぜ
「あ、壁越えてきよった!」
敵ドロイドの侵入に反応したスイビー。彼女の配置は現在裏門から入れる倉庫内だ。シャッターを二重に下ろし、入口を限定的にしている場所だ。その開いている出入り口から敵のドロイド三機が、工場を防衛する味方の僅かな隙をついて侵入するのが見えた。
「任せて!」
どこからともなく出入り口からミカラドの声が聞こえた。出入り口を塞ぐように守備に徹しながら、敵ドロイドの攻撃をかわしながら攻撃を繰り出している。
「助かんで」
こちらも味方ドロイドの修理や応急処置をしていたスイビー。二機のドロイドに
「応急修理やけどしゃあない。ミカラドの援護に行ったって!! ミカラド、武器用のENカートリッジや!」
ミカラドのいる方向にENカートリッジを二本投げ、戦闘の合間に受け取るミカラドは再び戦闘に戻る。
「感謝する!」
「実弾系は殆どのうなったし、ENカートリッジもそろそろ底が見えとる」
「もう時間的には増援が来てもいいころですがね。あ、武器のEN補給お願いします」
「おーけー」
スイビーはENカートリッジをフーリカンの武装に宛がう。目立った負傷はないが、装備がすすで焦げたり、装備の一部に被弾が見受けられる。フーリカンはドローンで敵の情報を収集と共有し、ドローンの小型携帯バルカンと爆弾で応戦していた。職人班の応急手当や盾なども行い、かなりの消耗が見られた。
「表門はまだ平気ですが、裏門の状態がよろしくないですね」
「せやろ? この辺まで入り込まれたら結構ヤバイんよ。だけどみんな頑張っとるし、もうひと踏ん張りせなキャプテンに合わせる顔ないわ」
「そうですね。キャプテン達が無事であれば、起動核も使える日が近いでしょう。ただ、ドローンで拾った情報ですが、敵の旗艦が近づいているとか」
「は? それってどうなん?」
「敵艦の装備によりますね。射程が長い方が勝つ、とも言い切れません。かといってキャプテンの船は装甲があってないようなもの。勝利のカギはやはり相手より早くより強いダメージを負わせた方が勝ちかと」
沈黙する二人にENカートリッジの換装を終えた音が鳴る。
「うちらはうちらでできることするしかないな!」
「ええ、キャプテンに幸運を」
「キャプテンに幸あれ」
言葉を交わし、スイビーはドロイドのいなくなった倉庫で腰を上げて倉庫に立てかけてあるバルカン砲を背負って工場裏の方へ駆け出し、フーリカンはその場から跳躍し、扉のある表門の上部へ移動していった。
☆
敵の飛空艇との距離が五十Kmを切った。状況的に押しているのは敵側だ。それなのに旗艦らしき飛空艇が距離を詰めてきた。僕が敵側だとして予想できるのは、攻めきれずに時間を消耗するのを嫌ったか。今僕が乗っている船が最終手段だと思い、早々に終わらせるために落とそうとする。
どっちもあり得そうな感じはするが、近づいてきてくれるなら航空機以外の攻撃をあまり気にしなくてもよい利点が生まれる。
後の問題として、敵の武装がいかほどの物かだが。接近距離が五十Kmを切っても攻撃が来ない。コルビスの索敵ではミサイルを保有しているらしいが、撃ってこないのは何故なのか。
「カラトロス、できるなら相手の推進力を奪ってほしい。両翼付近に制御装置がないかやってみてくれ」
『了解。初手からチャージショットで打ち抜く!』
『スコープのデータリンク良好』
『敵機、距離四十七Km...四十六...四十五』
「機体を微速固定」
コルビスの距離カウントが四十三Kmのところでカラトロスの砲撃が放たれた。
『よーし! 誤差範囲には当たった』
『しかし、向こうは高度を上げたようです。さらに接近! 距離三十九Km』
「こっちも高度を上げたいがキャパがそれほど持たない。微速後退するよ」
『調整は任せます』
『目標は変わらず両翼だな! いっけぇえ!』
敵はこちらの攻撃に慌てて舵を切り避けようとするが、カラトロスの移動予測が見事に砲撃を命中させる。
「このまま行けそうか?」
『キャプテン、あまり下がりすぎると街の方面に悪影響のでる可能性が』
「そうか。残りのキャパも心もとない。ここで留まる。最悪、船は乗り捨てるしかない!」
『了解しました。サイドハッチは開けておいてください』
『そらっ! もう一発! 命中して火柱上がったぜ。煙吹いてる』
『それでも前進してきます。特攻か、制御システムに異常があるかわかりませんが』
『攻撃来たぜ!! 四連砲のタレットが四門! バリア張るぞ! ミサイルも来た!!』
「ぐっ!! 止まらないか。回避することは可能だけど、街に被害が出るのはまずい。この船を体当たりさせて落下地を限定させる」
『キャプテン微速前進で、後はオートパイロットで大丈夫です! 脱出するので私にしがみ付いてください!』
『早めに降下して敵陣から離れないとな』
『敵側も脱出し始めています』
コルビスが天井部分から降りてきて僕をかかえるように抱え込む。僕も応えてコルビスを抱きしめるように両腕に力を籠める。あとから来たカラトロスも僕をコルビスと挟むように抱き着きバリアを展開する。
「決して離さないように!」
「ああ、コルビス。頼む!」
「怖かったら目を閉じてもいいんだぜ、キャプテン」
「閉じれないさ。僕らの船の最後を見届けるまでは」
「そうかい」
覚悟は既にできていた。ハワードさんには申し訳ない。手伝ってくれた皆にも本当にどう謝るべきかを考える。いや、僕に選択権はない。煮るなり焼くなり好きにしてもらうのが正解だろう。僕はそう思いなおし、コルビスに準備ができたことを告げた。
「はい、行きます!」
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