第7話 言いたい放題
戦闘が始まって三十分くらいが過ぎたころ。相手方の戦力がおおよそ見えてきた。
相手はほとんどが機械化部隊、生身の人間はトラック指揮者と飛行艇が観測できたのでそのあたりにいると予想。
銃撃戦やミサイルが飛び交い、多少のけが人は出ているが劣勢でもなく戦えている。職人やエドワードが持ち込んだ機械兵が盾になり注意を惹き、その間にアンドロイド達や職人班の攻撃が相手にダメージを負わせている。
場所が平地ならもっと苦戦してるはずなのだが、立地が工場が密集した街中なのもあるので、相手の侵攻が思ったようにいってないらしい。
『こちらA班、敵の航空兵器を二十撃破。位置取りを移行する』
『こちらC班、ドローンの補給に一部戻します。五分後に再度飛ばします』
『B班から、そこまで攻撃受けてないから、負傷した人やドロイドは防衛中のドロイドと交代できる。C班が近くにいるし治療やメンテもするから引ける時は後退しいや』
『こちらミカラド。以降D班と呼称する。D班、敵ヒューマティックノイド、機体名オクトラを一機中破、一時後退する』
『こちら職人班。Aブロックで敵ドロイドと交戦中。後ろから挟めないか?』
「A班、援護に行けるかい?」
『二分いただければ』
『助かる! 弾薬と補給物資かき集めてきたやつがいる。そっちで保護してやってくれ!』
『B班ドロイドが工場の裏口を防衛してる。今なら手薄やで』
「A班の援護に合わせて工場まで突っ切ってください。A班、B班タイミング合わせて護衛よろしく」
『D班補給完了、オクトラの配置データを求む。近い場所から裏撮りする』
「指揮所了解。最新データ転送。Dブロックの細道からAブロックに抜けれる道がある。そこが使えたら使ってみて」
『D班データ共有完了、移行ルート了解』
☆
「戦況はそれほど悪くない。残り一時間ほどで増援が来るよ」
『A班、移動完了。上空、敵航空機から何か落としてきた』
『なんだ?』
「――」
『ばかな、市街地だぞ!?』
『小型だが爆弾の損害を確認』
「なりふり構わなくなってきたな。空爆で建物に損害が広がっていく。エドワード、街に避難勧告はすんでるな?」
「もちろんです。しかし、消火活動や救護活動で街の職員たちは動くでしょう。巻き込まれなければいいのですが難しいかと」
『こっちは人員を割けそうもない。困ったね』
「市街地への攻撃は予想外だが起きてしまったことは仕方ない。抗議文と後で言い逃れできないように記録を残してほしい」
『お、おう!』
『対空にばかり気を取られるとやばいよ』
『オクトラの別部隊がCブロックから接近! 数三機』
「D班対応できる?」
『距離的に難しい』
「くっ、工場裏から表にコルセル二機を移行。まわせるところからドロイドを配置させてほしい」
『大丈夫や、B班から五体向かわせた。裏門は十体もおればええ』
「助かる!」
『C班、データリンク更新。多目的補給車両をお借りして、砲台代わりに使いますわ』
『好きにやってくれ!』
『空爆来ます!』
『撃ち落とせ!』
『こっちくな! 敵裏門から手りゅう弾!!』
「――!」
「シールドで問題ない威力のようです」
『裏門が手薄になったのバレてるわ!』
『その裏門の通路からなら攻撃できる。耐えろ』
『言われんでも通すかいな』
「コルビス、増援に行ってあげて。ここにはエドワードがいる。予備選力を温存す余裕はない」
「しかし――」
「わたくしからも、お願いいたします」
「最悪は、ハワードさんがいつも使ってる裏通路に逃げ込むさ。それにあいつらの狙いは起動核でしょ? そっちが優先されるさ」
「……わかりました。キャプテンをお願いします」
「もちろんです!」
『コルビス、改めE班。これより遊撃に回ります。キャプテンにはエドワード氏がつきます。まずは裏門の方から数を減らしますので、状況報告を』
『了解。データリンク更新。敵ドロイド二部隊、航空兵器四機!』
『承知!』
☆
所変わって――
「さっさと例の起動核を奪えっ!」
「これだけ部隊を動かしてるんだ。時間のかけすぎではないかね」
周囲の人間は好きかっていう二人の上司に何も言えず、上がってくる情報を読み上げるにとどめる。
「目的の起動核が搬入された工場は街中にあり、展開のしにくい地形になっているため、工場側の反撃が思いのほか厄介なことから時間がかかっているものと思われます。また、性能の良いアンドロイドが指揮しているドロイド部隊、及び敵ヒューマティックノイド、機体名コルセルの防衛が強固で、目的物まで到達できない旨が連絡されております」
言い終わった副官は、情報に理解が及んでいるか上司を見る。
「だからこそ空爆を行ったのではないか。足りないならもっと数を増やせ」
「しかし、市内に空爆を軽度に落とし、工場区域にばらまいたとしても撃ち落とされて不発に終わっています。その分地上部隊の侵攻は進んでおりますので、もう少しお待ちいただければ工場の制圧もかなうかと、それにあまり空爆を行いますと目的のものまで損傷しかねません」
「手ぬるい! コルセルがなんだ、アンドロイドがなんだ!! オクトラを増援で出せ、どうせここまで奴らはこん! 手早くあたりの工場は破壊してかまわん!」
副官は少し悩んだ、上司は言いたい放題言ってくるが、これは罪に問われないのだろうか、と。自分たちは社が運営する部隊編成された軍事会社の人間だ。それが、市民を巻き込んだ空爆を行い、あまつさえ何の罪もない工業区の人間を殺傷しようとしている。市民がいる街中に攻撃を加えているのだ。
「何をぐずぐずしている。他社に後れを取るわけにはいかんのだ! 貴族様から保証は頂いておる。さっさと言われたとおりにするのだ!」
「了解しました。陣地防衛している部隊に告ぐ。最低戦力を残し総員戦線に加われ。あとのことは貴族様が保証してくださる」
副官は不安は残したが、考えを捨てて言われたことを言われたように繰り返した。
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