第6話 やってきた起動核、あとお邪魔虫

 その後、時間通りに大型のトレーラーが工場に入ってきた。予想外のヒューマティックノイドと共に。


「時間通り、参上いたしました。……その警戒を解いていただきたい。これには少し事情がありまして、それも含めてご説明いたします」


「戦闘兵器連れてきて警戒するなっていうのも無理な話じゃないか?」


「それはそうなのですが、部隊を散開工場を守るように布陣せよ」


「何を勝手に――」


 カラトロスが文句を言おうとした瞬間、戦闘兵器のロボットが攻撃を受けた。


「どういうことだ。ここは町半ばの工場だぞ」


「文句は相手に言ってもらいたいものですな。来ますぞ!」


「ドロイドA班、屋根に上るついてこい!」


「私こういうの苦手なんやけど。ドロイドB班は、正面を防衛する。シールド大幅展開!前に出なくていいから現地防衛に!」


「周辺の調査に回る。ドローン展開。C班ドロイドは工場の侵入経路をロックせよ!」


「まったく節操のない。私一人で事務所まで通らせてもらいます」


 息を切らせてきた僕の信頼するおじいさまの側近。エドワードが駆け込んできた。


「相手はどこのどいつなんだ?」


「坊ちゃま、今は外へ出てはなりません」


「いかないよ。むざむざ行って粉みじんになるのは嫌だからね」


「それで、早くご説明願えるか」


「相手は中小企業のモルザン社と同じく中小企業のバングル社。裏にはアバラス子爵などを筆頭に数名の貴族が名を連ねております」


「おじいさまで止められなかったんだ?」


「釘は刺しましたが御覧の通り、伯爵は寄子の行動には白を切るようですな」


 アマダ伯爵だっけ? くそっ、どうしてこんな規模までして起動核が欲しいんだ?

 それに、こんな街の中心部から離れてるとはいえ、工業地帯で戦闘するなんて馬鹿げてる。やってきた起動核、あとお邪魔虫。楽しみはお預けか。


 そこへ――。

「おい、こりゃどういうことだ! フォルア、今日は納品だけって話じゃなかったのか?」


 師匠ことハワードさんが入ってきた。

「かくかくしかじか、なんですよ」


「うちの工場でドンパチやろってか!?」


「す、すみません!!」



 

「そんで、そこのあんちゃん。この落とし前、こっちが納得できるようにはなってんだよな?」


 ハワードさんはしばらく沈黙すると、エドワードに話しかけた。


「この場を乗り切れば、企業側に損害賠償を請求できます。貴族連中はうちの旦那様がいかようにでも問い詰められるかと。それで工場地域での被害は代償を償わせる予定です」


 そうかよ、とハワードさんは事務所の通信機を取り怒鳴った!

「おら、工業区域の連中聞こえてっか? 宇宙船技師のハワードだ! 中小企業がうちの納品物を狙って攻めてきた! 今からこっちは反撃する。工業区域の被害はでるだろうが、味方の貴族様が何とかしてくれるらしい。だからお前らも手伝え!! いつも無理難題こさえて持ってくるし、中抜きし放題の中小企業様だ。俺らで歓迎するぞ! その気のあるやつは俺の工場の裏手まで武装してこい!以上!!」



 怒鳴り声で通信機を切った後、ハワードさんは冷蔵庫から水を取り出し一気にあおる。


「よっしゃ、俺もパワードスーツで出るぞ!」


「ハワードさんも?」


「ったりめいよ! 自分の工場傷物にされて、何も出来ねえようなやわな職人じゃねぇぜ!」


「……」


「今はだめだが、いずれお前もなりたい自分になりな。後悔がないようにな!」


「っはい!」


「坊ちゃま、僭越ながら上級指揮官系のデバイスを組んだヘッドアップディスプレイです。事務所から動かなければ歯がゆいと思い、お持ちしました」


「世話をかける。よっと。総合リンク、起動シークエンス、オールレンジセクション。リアルタイムコネクト起動」


 ゴーグルの表示に従い起動させた指揮官系のデバイス。正直言ってすごい! 青い点は味方、大きく表示して名前がわかる。


「キャプテン、そのデバイス経由で情報リンクします」


「北東から赤い点が群がって移動してる。工場を囲うように包囲を引く動きだ」


「フォルア。他の工場地域の連中に情報発信してくれ。表示は緑で統一だ。思うようにやってみろ」


「わかりました。オールレンジセクション。リアルタイムコネクト再起動。キーコンソールデバイス起動。ジョイント成功。各自にメッセージを送ります」


 キーコンソールを使い、緑のマークに敵の位置を送る。可能であればこちらの指揮官デバイスに可能であればコネクトするように伝達もした。これでデバイス経由で情報共有がされているはずだ。


「こちらC班フーリカン、ドローンによる索敵結果、飛行攻撃機十二、地上攻撃部隊三十から四十、搬送による追加有!」


「こちらA班カラトロス、目標を視認。これより射程に入った敵飛行部隊をけん制する」


「B班スイビー、敵の攻撃はまだきとらん。包囲されてるんならあまり動かん方がいいかね」


「こちらフォルア。B班のドロイド二十人いるから、五人ほど借りていいかな? ここに駆けつけてくれてる職人さんを誘導する。ばらついて各個に撃破されるより固まってもらった方がいいと思う」


「まかせる。あと指揮所か事務所でとういつしてもろて」


「指揮所了解!」


「事務所が指揮所になっちまった。まあ、よろしく頼む」


「ハワードさん、ドロイドを五人連れて行ってください。フーリカンのドローンの映像から共有してもらって、その方がスムーズに合流できると思います」


「助かる! ほんじゃ俺は出るぞ!」


「ご武運を!」


「こちらC班フーリカン、飛行攻撃機現状確認できるだけで三十機以上。歩兵器にヒューマティックノイド確認、数は五機以上」


「ヒューマティックノイドをもう少し連れてくるべきでしたか」


「悔やんでも遅いさ。敵個数データ、リンク共有。各自無理に攻めないように。敵の歩兵部隊はドロイドタイプが多い、ヒューマティックノイドは囲んでたたくか工場前まで誘導だ」


「工場地域の地図は頭に入れてるから、込み入ったところを挟み込める。フーリカン、ドロイドにミサイルランチャー何機あったっけ?」


「二十はあるはずです」


「了解、工場地域で角待ちして叩けないかな? 場所はこっちで指示する指揮所のドロイド十人を動かす。ミカラド、ドロイドを率いて遊撃を頼む」


「……わかりました。コルビス、キャプテンを任せます」


「承知した」


 先ほどから急な豹変というべきか、フォルアの迷いのない指揮に言葉が出ない一同。戦いはまだ始まったばかりだが、フォルアの能力の一端が垣間見えた瞬間である。



 ☆



「ロボットは到着まで時間がかかるし、工場を踏み潰す気がないみたいだ。エリアBから散開する模様。上空は一定の距離から工場を周囲から囲んでる。けん制は利いてるみたい。職人部隊は無事にハワードさんと合流できた。AとCエリアから敵ドロイド進行中。六体で十三部隊がばらけて移動中。五部隊が工場前まで来てるよ」


「B班スイビー、敵の攻撃が始まったよ。応戦するけど援護は欲しい」


「エドワード、連れてきた機体のパッケージは?」


「四機とも機体はコルセルです。パッケージは対空砲、対地ライフル、対地バルカン砲、両肩ダブルシールドでございます」



「B班にコルセル二機を、A班の対空支援に二機を分ける。早めに敵の飛行ユニットを減らしておこう。職人班は進行を右へ、直進すると挟まれる」


「ご党首様に増援を要請しました。二時間ほどかかるそうですが、強力な部隊を送ってくださると」


「わかった。弾薬と補給はある?」


「トラックにコルセル用の装備と弾薬の予備は積んでいますが、消費の割合がわかりません。二時間持たせるように継続の分配を考える必要があります」


「職人班は、心配しなくていいぞ。こっちにも旧式の戦闘機体はいくつかある」


「了解。ただ無茶はしないように。二時間持てばいいので」


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