アリアの春

 

 アタシは今日、アリアと会う約束をしている。

 午前中はする事もないので、足早にサンシスタ家の屋敷を出て、アルバ家の屋敷に向かった。

 道中、馬車の窓越しに領民から手を振られたので振り返したり、引ったくり犯を捕まえたりと暇はしなかったわ。


「ここへ、来るのは久しぶりね」


 3ヶ月前、アタシの下僕が突然ノルテへ引っ越した。

 アタシの許可も無しに....。

 それ以来、ここへは来ていなかった。

 特に来たい理由もないし。


 でも今日は違う。

 なんでも、アリアから相談があるらしいわ。

 ここ最近は、相棒選エレヒールを終えたマリンと共にお見合いをしているのだとか。

 きっと、その相談ね。


 アリアの両親もママと同じ考えで、自分の好きな相手と婚約すればいい、と言われているそうだけど。

 相手からの必用な求婚が鬱陶しいんだわ。

 気持ちは分かる。

 アタシも2年前はそうだったもの。


 敷地内を歩いていると、庭に座って花を眺めてるアリアを見つけた。


「アリア、来たわよっ!」

「あ、ティア〜!今日も早いんだね!」

「だって、屋敷で居ても暇だもん。で、どうしたの、相談って?」

「うん....」


 アリアは少し間を開けて再び話し始めた。


「カルマが居なくなってね、胸がモヤモヤするの」


 ....ん?下僕?


「それにね、少し前にカルマとフリーシア王女が話してた時ね。胸がズキズキッてしたの。マリンもーーー」


 え、それって恋じゃないっ!!

 アタシは恋なんてした事ないけど....。

 屋敷にある本で読んだことがあるわ。

 好きな人が別の女と喋ってたら、胸がモヤモヤしたりズキズキしたり.......。


 .....って、なんで今、下僕の顔が出てくるのよっ!!

 でも、兄妹で恋なんてダメよ!

 それも本で読んだことがあるわ。

 兄妹で恋して、カケオチ?して、結末は悲しい事になったわ...。


 アリアに教えてあげなきゃ。

 け、決して自分の為なんかじゃないわ。


「アリア、それは恋ね」

「え?こ、恋っ?!」

「そうよ、いろいろ経験したアタシが言うんだもん。そうに違いないわ」

「いろいろって?」


 アリアが首を傾げて聞いてきた。


「そ、そんな事より!兄妹で結婚はできないだよ!!もし、他の人にバレたら一生会えなくなっちゃうかも」

「え....。それは嫌だよ。でも、どうして?」

「えっ....。ほ、ホウリツ?で決まってるのよ!」


 本当は知らないけど....。

 ごめん、アリアっ!!

 でも、辛い結末が待ってるのは本当だから。

 アタシの唯一の友達にそんな思いはして欲しくない。


「....うん、分かった。ティアが言うから本当なんだろうね。カルマの事は考えないようにする」

「うん、それがいいわ」


 アタシの為じゃない。

 アリアの為に、アタシは嘘をつき続ける。

 例え、それでアリアが変わってしまっても....。

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