ゴートの悲劇
儂が二人と出会ったのは、今から15年前の事じゃ。
当時、アルバ家当主だった儂は、貴族会議の為に東方都市エステを訪れていた。
本来なら、儂とスティーリアだけだが、丁度同日にクロノス家で宴が開かれる予定だった。
その為、儂らの娘である、マナ、シルビー、ネヴィアを連れて行っていた。
「マナお姉様、楽しみだねっ!」
「ええ、そうねっ!」
「きっと美味しいものが沢山あるわよっ、ネヴィア!」
「私、ケーキが食べたいっ!!」
三人はとても仲が良く、王国で有名になる程の美貌を持っていた。
儂の宝じゃった。
エステに着くと、娘たちはクロノス家の屋敷へ、儂とスティーリアは司令塔へと向かった。
どちらの催し物も
そんな中、急な報せが入った。
慌てた兵が勢いよく扉を開けてきたのじゃ。
「し、失礼致しますっ!!」
「今は会議中だぞ、無礼者っ!」
一人の貴族が怒りを上げたが、兵は続けた。
「申し訳ございませんっ!!!しかし、何分急を要することにて、ご無礼をお許し下さいっ!!」
「良い、申せ」
「はっ!先程、クロノス様の屋敷が何者かの襲撃にあったとの報せがーーーー」
「な、なんだとっ!!?」
その報告を聞き、儂は居ても立ってもいられなかった。
さらに、悲報は続いた。
「落ち着け、ゴート殿。続けよ」
「はっ!そ、それが....」
兵は儂の顔を見た。
「な、なんだ?」
「....そ、その....ネヴィア様が攫われた、と....」
そこからの事は余り覚えていない。
頭に血が昇った儂は、スティーリアを連れて、クロノス家の屋敷に向かっていた。
竜化した儂たちは、ものの数分で着く事が出来た。
着いた時には、屋敷から火の手が登り、数人の貴族と黒いローブを羽織ったもの達が戦っていた。
その中にマナの姿があった為、儂たちは戦場に降り立った。
「マナ、どうなっているっ!」
「お父様っ!!ネヴィアが....ネヴィアが....っ!!!」
マナは儂たちに駆け寄り、泣き崩れていった。
「落ち着けっ!まずは、状況を教えてくれ」
「....はい。宴の最中、この黒いローブの者達が、窓から侵入し、瞬く間に屋敷を占拠しました.....。抵抗したものの、幹部らしき男にネヴィアが捉えられ、去っていきました.....。私たちは、ネヴィアを奪還すべく、残った敵と交戦をしておりました...。シルビーは怪我を負い、屋敷で手当をーーー」
「ネヴィアが連れ去られた方向はっ?!」
「こ、この先です....っ!」
マナが指さしたのは、東の方角。
まさに、敵が立ち塞がっている方じゃった。
「スティーリアっ!!」
「はいっ、"
スティーリアが放った冷気で辺り一帯を敵諸共凍らせた。
「マナ、後は父と母に任せなさい。お前はここに残り、怪我人の手当てを。今はマナの治癒の力が必要だ」
「....。分かりました、お父様」
目の前で妹を攫われた悔しさは、儂には分からなかった。
変わりに、目の届かないところで娘が攫われた、悔しさは分かる。
この鬱憤、晴らさせてもらうぞっ!
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