シキが考え込んでいた理由
披露宴が終わりを迎えつつある頃、オルトさんがマリンを連れて、僕たち子どもが集まる場所にやってきた。
「カルマ、ちょっといいかな?」
そろそろ帰り支度をする頃だろうか、と思ったが、そうではないらしい。
どうやら、ゴートさんが僕とオルトさんを呼んでいるそうだ。
広間を出て、すぐ近くの応接室に通された。
そこには、ゴートさんが独り、酒のグラスを持って待っていた。
「お待たせしました、お
そこは屋敷の応接室より、一層豪華な所だった。
さすが、王城....。
「...カルマ、と言ったか。此度はマリンを救ってくれたこと感謝する。不本意じゃが、お主の事は黙認する。それで良いな、オルト?」
「はい、ありがとうございます」
ゴートさんは酒を一口喉に通して続ける。
「と、なればじゃ。こやつも披露宴を行わなければならない。既に、指輪は着けているようじゃが....。っ待て!小僧、その指輪、どこで手に入れた?!!」
ゴートさんが急に血相を変えて、近づいてきた。
「こ、これは母から受け継いだ物です」
「母...だと...?貴様、まさか、下民...か....?」
この答えには、僕もオルトさんも驚きを隠せなかった。
「お、お義父さん?!急に何を申されますか!!そ、そんな訳ーーー」
「隠しても無駄じゃっ!その指輪の内側には"ギル"、"ニノ"と書いてあったのではないか?」
この人は、この指輪の事を知っている。
とてもじゃないが、隠し切れない。
「...オルトさん」
「....仰る通りです。この子は下民。2年前セブンスター家によって消滅させられた村の出身です」
ん、待って。
今、オルトさんはなんて言った?
「...セブンスター...家によ....って?」
「はっ.....」
オルトさんに焦りの顔が見られる。
「オルトさん、それはどういうーーー」
「オルトっ、このガキは儂が預かる!」
「「...へ?」」
ゴートさんは僕の襟を掴んで、応接室を出た。
まるで、子犬のような気分だ。
「ちょ、お待ちください、お父様っ!!」
「待たぬっ」
「急にどうされたと言うのですか?!」
「ふんっ、...ただの気まぐれじゃ。ガキの執事は後から来るように伝えろ。行くぞ、スティーリア!」
「はい」
「お、お父様っ!!」
廊下にいたスティーリア様と合流し、早々に馬車に乗せられた。
途中、何度も引き止めようとするオルトさんを全て突き飛ばして。
「出せ」
「ははっ!」
馬の鳴き声と共に馬車が発進した。
窓の外を見ると、オルトさんが諦めず走ってきている。
「あ、あの...」
「ほおっておけ、王都を出る頃には、疲れて諦めるじゃろう」
王都の中心から端まで走らせるなんて....。
鬼だ....。
「....そ、それで、どうして僕を?」
「あの最北端の海を凍らせたのは、お前だな?」
グラスジュエリーを咲かせる際に凍らせた海の事だ。
一刻も早く屋敷に向かいたかったのと、グリード曰く、ノルテの海には一年中流氷が浮かんでいるから不自然ではないと言うので、そのままにしてきた。
「....いえ、あれはグリードです。僕の
大前提として、僕の
その事を知っているはずなのに...。
「隠しても無駄じゃ。スティーリアはこの国で最も強力な氷竜と契約しているが、あのような事は、出来ない。そうだな?」
「はい。あれ程、広範囲の海を凍らせる事は至難の技です。それこそ、竜王でなければ....」
竜王...。
もしかすると、この人たちはシキの事も知っているのかもしれない。
『ああ、その通りだ。こやつらは儂の事を知っているし、儂もこの二人を知っている』
え、どうして?
『昔、会った事がある。儂の存在を報せる為に、あの海はそのままにしておいた。だから隠す必要は無い。素直に答えてやれ』
....分かった。
「との話し合いは終わったか?」
「...っ、はい。あの海を凍らせたのは僕です。僕の相棒、シキはお二人の事を知っていると」
「そうか。やはり、そうだったか。であれば、あの日の事を話さなければならないな」
そして、ゴートさんは話し始めた。
僕はこれから、両親の知らない一面を知ることになる。
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