ティアの気分

 

 舞踏会の翌日、今度はティアがこの屋敷にやってきた。

 しかも、朝のうちから...。


「で、アンタ何やってんのよ?」

「見ての通り、護身術の特訓ですよ」


 この時間はいつも庭に出て、リナに護身術を教えて貰っているのだ。

 日課である。

 って言うか、前にもこんなことあったな。


「ふーん。それアタシにも教えなさいよ!」

「え....、僕はまだ護身術をマスターしてないし、それで教えるなんて...無理だよ....」

「そうですよ、お嬢様っ!!」


 傍に仕えていたティアのメイドが血相を変えて近寄ってきた。


「こんな野蛮なものを覚えずとも、ティア様にはご立派な相棒が...」

「うるさいわねっ!!こうでもしないと、アタシがここに来る理由が無くなるじゃないっ!文句があるなら帰りなさい!!!」

「し、しかし...」

「はぁ....もういいわ。そこの専属、アタシにも教えなさい」


 そう言って、ゴネるメイドを無視してリナの方へ近寄った。

 そして、リナは僕に最初教えたように基本の構えをティアに教えたのだが...。


「...つまらないわね」


 だそうだ。

 自分からやりたいと言ってきたのに、なんて勝手なんだ...。


「もういいわ。帰る」

「そういえば、カルマ様。剣術は誰かに習ったりしないのですか?」


 去りそうなティアを引き止めるようにリナがそう言った。


「け、剣...術...?」

「はい。貴族は普通何かしらの剣術を会得しているものです。噂で聞いたのですが、ティア様は剣術にお詳しいとか...」


 それを聞きつけたティアが顔色を一変させ、近寄ってきた。


「アンタ、剣が使えないのっ?!仕方ないわね。だったら、令嬢院一のこのアタシが教えてあげるわ!!」


 令嬢院一って相当すごいんじゃ....。

 そんなティアに教われば俺も貴族のようになれるだろうか。


「....この前までは、だけど....」

「え、今なんて?」

「なんでもないわよ!で?どうするの?!やるの?やらないの?」

「やります!僕に剣術を教えてください!!」


 ティアは、ふんっと鼻を鳴らし、そっぽ向いた。


 よしっ!

 これから剣術も頑張るぞっ!!


「専属、アンタ分かってるじゃない。名前は?」

「リナ=シエルでございます」

「ふーん、リナね。覚えたわ」


 しかし、この剣術は女性用だと言うことを今はまだ知らない。

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