ティア=ジ=サンシスタ
アタシの名前はティア。
十貴族の一角であるサンシスタ家の一人娘。
名家の跡取りとして、昔から何不自由無く生きてきた。
アタシが物心付いたのは3歳の時だった。
アタシの母はとても社交的で、友人も多く、毎日のように舞踏会や社交会に足を運んでいた。
アタシは母に同行することが多く、様々な会に同席していた。
サンシスタ家の跡取りと言う肩書きによって、全員アタシに対しても挨拶を欠かさなかった。
「私たちにとって貴方は主役なんだから。いつも堂々としていればいいのよ」
母はそう言っていた。
アタシは母の言いつけを守り、堂々と立ち振る舞った。
謙ることは無く、頭を下げることは無く、他人を見下ろす。
チヤホヤされてきたアタシは、自分で言うのは癪だけれど、高慢なアタシに育っていた。
極めつけは、
赤い玉を選んだにもかかわらず、アタシの
その為、周りの人間はアタシに期待の眼差しを向けた。
そしていつしか、雷炎の巫女と呼ばれるようになっていった。
披露宴の時、アタシは10人の男に婚約を持ちかけられた。
翌日は、別の8人から婚約の手紙が届いた。
両親からは自分の好きな人と婚約をすればいいと言われたが、そんな人アタシには居ない。
婚約を持ちかけてきた男達はどれも有力な貴族の跡取りで、中には十貴族の者も居た。
そんな人たちを無碍にできるはずがなく、全員とつまらないお見合いをした。
本当につまらなかった。
みんなアタシではなくアタシの相棒に興味があるのだ。
昔から、政略結婚は珍しくない。
己の子孫の
こうして、自らの家を守っていくのだ。
その為なら手段を選ばない。
アタシに対して、莫大なお金を用意したり、高価な服を渡されたり、本当に色々な男がいだけど、アタシは誰も選ばなかった。
誰も選びたくなかった。
夏休みを終えたアタシは他人に興味が無くなっていた。
今までアタシと仲良くしてた人は結局アタシの力が目的なのでは無いか。
そう思うと他人がただの動く肉塊にしか見えなくなった。
でも、そうじゃない子もいた。
唯一アリアだけが、アタシを力以外で見てくれた。
同じ十貴族で同じ跡取り、
そんな子がどうして....。
「どうして、アタシと仲良くするのよ」
「...?だって私はティアが好きだもん!」
「す、好きって....。ど、どこがよ!」
「ん?んーとね、優しい所!!」
単純な言葉。
でも、アタシの心にはとても響いた。
ただ1人の友達だった。
ありがとう。
だけど、ごめんね。
アタシ、もう死んじゃうみたい。
微かに写る視界では、アタシは大きな蛇に巻き付かれていた。
周囲に雷と炎をまき散らし、あまつさえ、唯一の友達にすら、攻撃をしていた。
いやっ、当たらないで!!
アタシの声が神様に届いたのか、アタシとアリアの間は土の壁で隔たれた。
よかった...。
もし...。
もしも、神様が居るなら...。
どうか、どうかアタシを....。
「助け....て....」
「任せろ」
え?この声は....。
目を開けるとそこは心の世界だった。
「ア、アタシ...なんで...?!」
「落ち着け小娘」
「下僕っ?!あんた、なんでここに居るのよ!!」
アタシの心の世界にズケズケと現れたこの男は、アリアの屋敷で出会った下僕だった。
でも屋敷で見た時とは少し違う....。
竜の瞳をしていた。
「惜しいな。儂はカルマではなく、カルマの相棒だ」
「はぁ?あんた、何言ってんの?頭打ったの?!」
「ふん、ペラペラと舌の回る小娘だ。儂が何とかしてやろうと言っているのだ。落ち着いて見ていろ」
「何とかってなんの事よ!!」
「後ろを見ろ」
振り返るとそこには苦しむアタシの
「な、何よこれ...」
プリセラは下半身が蛇の女に締め付けられていた。
「あれがエキドナだ」
「エキ...ドナ...。ちょっと...ちょっとアンタ!!アタシの
「きゃはははははっっ!!!盟約に従いお前の竜を殺すのさぁっ!!」
「なっ....!!そんなことさせないわっ!"
アタシは得意の技を使った。
でも、突き出した人差し指からは何も出ない。
「え...なんで、どうして...」
「小娘、お前はあの竜から力を得ているのだろう。本体がああなっていては力も使えん」
「じゃ、じゃあ...、プラセラはもう...」
「儂が助けてやる。カルマがそれを望んでいるのでな」
下僕の癖に生意気ね。
でも、もしかしたらコイツもアリアと同じで...。
「分かったわ。だから、助けて!」
「ああ」
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