エキドナの呪い

 

 アリアが見つけたボロ小屋。

 その中にいた3人の野盗に襲われ、リナが氷漬けにされてしまった。

 残るは僕とアリアとティアのみ。

 でも、相棒選エレヒールを終えていないアリアは戦うことができない。

 実質2体3だ。

 しかも、今僕の前には2人の男が近寄ってきていた。


 ど、どうしよう...。

 シキ、何か良い方法は無い?


『まずは、"水壁パレグワ"で盾を作れ』


「わ、わかったっ!!"水壁パレグワ"っ!」

「何だ、こいつも相棒選エレヒールを終えてやがったのか。だが、俺からすれば空気に等しいな!"電銃シルシダー"っ!」


 か、雷っ?!

 まずい、このままじゃ感電するっ!!

 ....あれ?

 そんなに痛くない?!


『"水衣アーヴェスト"で表面の水が大半の電気を地面に流してくれる』


 そういえば、本来は自身を守るものって...。

 これだったら、もうあの男の攻撃は効かないな!

 ただ、水に対して雷か...。


『黄ではない。あれは電竜の力だ』


 電竜って電気ってこと?

 雷と何が違うの?


『2つとも似たような稲妻だが、性質が全く違う。雷は破壊力に特化しているが扱うのが難しい。電気は雷に比べて威力は劣るが、速さでは上だ。それに扱いやすい。もしも、あいつが黄だったのなら、"水衣アーヴェスト"では完全に防ぐことは出来なかっただろう』


 威力が弱い分、相性が最悪って訳でもないのか。


『いや、寧ろ儂らの攻撃は相手に通用する。流れ玉が当たるかもしれんが、仕方ない。両手を前にかざし、"水壁乃罠パレヴァルグワ"を使え』


「"水壁乃罠パレヴァルグワ"っ!!」


 野盗との間にあった水の壁から複数の波紋が起こり、そこから複数の"水銃"が打ち出された。


「「ぐわぁっっ!!」」


 2人の野盗は水の威力にやられ、倒れた。

 一掃できたと思ったが、奥にいたフードの男は氷の壁を作り、防いでいたようだ。

 お陰で、ティア達に流れ弾が当たる事はなかった。


 す、すごい、何あれ。


『"水壁パレグワ"と"水銃グワール"の合わせ技だ。壁が広ければ広いほど弾数も多くなる。今から使いこなしておいて損は無い技だ』


 もしかして、これって他の属性でも使えるの?!


『ああ、後はお前が一度に出せる竜力の限界値を高めることだ』


 はいっ!!



 一方その頃、ティアは相性の悪い敵に苦戦しているようだった。


「もぉっ!!どうして"雷炎銃シルトゥルーマ"が効かないのよっ!!アタシが...雷炎の巫女のアタシがアンタなんかに負ける訳ないでしょっ!」

「強情だな。お前より仲間を殺ったやつの方が厄介そうだ。早く終わりにしよう」

「ア、アタシがあの下僕に劣るって言うのっ?!!」

「...下僕?ああ、あの子も付き人だったのか、であれば、あいつの後ろに居るべきだったな」

「ば、ば、馬鹿にしないでよっ!!!プリセラ!あんたの最大火力、見せつけてやるわよっ!!"雷炎機銃ジャドトゥルーマ"ーっ!!」


 ティアの突き出した両手から無数の弾が飛び出した。


 って、これ僕にも当たるんじゃない?!!

 シキっ!!?


『あの木の影だ』


 無数の雷炎の弾は全て、氷の壁に当たっているが、ヒビ一つ入らない。


「もっとよっ!もっと火力を....」


 ティアの猛攻が止まった。

 息が荒く、胸を抑えているようだ。


 急にどうしたたんだ?


『...まずいな。まさか、この時代にまで続いていたとは』


 え?


「はぁ...。はぁ...。いやああぁぁぁぁああああっっ!!!!」


 ティアの悲鳴と共に、胸から赤い半透明の蛇が出てきた。

 蛇はそのままティアの体に巻き付き、締め上げていった。


 な、なにあれ?!


『エキドナの呪い。その昔、家の中から赤以外の者を生み出さないように、一族にかけた呪いだ』


 もし、炎以外の属性になったら?


『あのように、呪いによって殺される。あの娘は雷炎だから、今までギリギリのところで保っていたが、力の使いすぎによって純粋な赤でないことが呪いに引っかかってしまったか』


 な、なんだよ、それ...。

 昔の人が決めた事で勝手に殺されるなんて。

 そんなの....。

 シキ、どうすればいい?!

 どうすれば、あの子を助けられる?!!


『...あの呪いの厄介なところは、干渉すればこちらにも食らいついてくることだ』


 じゃあ、助ける事は出来ないってこと?


 シキと話している間にもティアの締め付けはどんどん強くなっていた。

 微かに、助けてと言う声が聞こえる。

 そんなの、見捨てられないよ。


「攻撃を止めたと思ったら、なんだかまずそうだな。技が完成する前に、方を付けさせて貰う!"氷銃シルリオ"」


 呪いを攻撃の準備だと勘違いしたフードの男が、ティアに攻撃を仕掛けた。

 シキの話が事実ならば、あのフードの男も殺される。


「や、止めろぉっ!!!」


 氷の弾がティアに当たった。

 その瞬間、ティアの目が赤く光った。


「いやぁぁああああぁぁっっっ!!!!」


 ティアを中心に雷と炎が乱雑に放出され、男の方には特大の火炎が放射された。

 男は氷の壁を張るが、もちろん、雷の無い炎に適うはずもなく、一瞬にして溶けてしまった。


 このままじゃ、近くにいるアリアまで危ないっ!!


「シキ、ごめん!使うよっ!"土壁パレーロ"っ!!」


 それ程高くは無いないが、ティアの周囲を土の壁で囲った。

 土は雷にも炎にも耐性がある。

 これで全員を守れるはずだ。


「土の壁、だと...?!おい、貴様、何をした?!」

「あなたを助けたんですよ!!今のうちに早く逃げてください!でないと、この子に殺されてしまいます!!」

「なっ...。貸しだなんて思わないからな!」


 少しだが、壁にヒビが入り始めた。

 なんという威力なんだ...。

 シキ、どうすれば...どうすれば....!


『....助けるにはエキドナを倒すしかない。だが、今のこの体では無理だろうな』


 じゃ、じゃあ、もうティアは助からないの?

 せっかくこれから仲良くなれるって思ってたのに....。


『まぁ待て、方法はある』


 え...ほんと?!

 早くその方法を教えてっ!!


『...口では説明しにくいな。儂がやった方が早い。体を貸せ』


 え?

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