全色竜のシキ
『...ようやく来たか』
僕の頭の中に聞こえてきた声はとても低く、でもどこか温かみのある声だった。
「え、えっ?!も、もしかして、僕の
『ふん、少し落ち着け。間抜けにも程がある』
「ま、間抜けって...」
『あぁ、お前は間抜けだとも。間抜けの中でも飛び切りの間抜けだ』
どうして、初対面の竜に罵倒されないといけないんだ。
「そこまで言わなくても...」
『儂が二度も力を貸してやったと言うのに、戦わずして逃げるとは。それを間抜けと言って何が悪い』
「二度って...。そもそも、力の使い方なんて分からないよ!」
『ちっ...。前の宿主は説明なしでも力を使っていたってのに...。あいつはなぜこんな奴を選んだのか』
「前の...?じゃあ、前の宿主へ戻れば良いじゃないかっ!!もう知らないっ!」
こんなのが、僕の
「カルマ?...カルマっ?!」
目を開けるとそこには動揺したアリアとリナの姿があった。
「もしかして、ずっと気を失ってた?」
「ううん、一瞬だよ。呼んでも返事が無かったから少し驚いただけ」
そうか、あれだけ喋っていてもこっちでは一瞬なんだ。
「相棒に会ってきたよ」
「ほんとっ?!どんなのだった?!!」
「....見た目は分からなかったけど、なんか嫌な奴だった」
「カルマ様、まさか話を...?!」
「うん...」
「ええ〜、いいなぁ〜!ね、どんな事を話したの?!」
「間抜けだ、なぜ力を使わないって馬鹿にされて、喧嘩しちゃった」
「...なにそれ、カルマは間抜けなんかじゃないよ!私、その竜嫌い!」
「...僕も」
でも...。
それでも、これからずっと付き合って行かないといけないんだろうな。
でも、悪いの向こうだし...。
「カルマ様、顔色が優れないご様子。お昼前ですが、少し休憩に致しますか?」
そう言って、リナはお茶を入れてくれた。
温かいお茶を飲むと、さっきまでのイライラが嘘のように消えていった。
「...落ち着く」
「このお茶は旦那様がとても気に入られているお茶で、飲めば心が安らぎ、リセット出来るそうです」
なるほど、オルトさんが好きなお茶か...。
確かにこれはいいな。
「...もう一度、
「大丈夫なの?」
「うん、ずっとこのままって訳にはいかないと思うし」
リナのお陰で大分冷静になれたし、今なら落ち着いて話が出来ると思う。
よしっ!
「...あの、話せますか」
『...ああ』
「...先程はすみませんでした。取り乱してしまって」
『...いや、儂の方こそ柄にもなく感情的になってしまった。すまない』
「...遅くなりましたが、僕の名前はカルマです。よろしくお願いします」
『.....』
「.....?」
『...まずは、目を開けないか。話はそれからだ』
目?
でも、目を開けたら、元の世界に戻るんじゃ...。
僕は恐る恐る目を開けた。
そこは、夢の儀式で玉を選んだ所で、そこに漆黒の竜が横たわっていた。
この竜が僕の
なんて綺麗な鱗なんだ...。
カッコイイ。
『儂の名はシキ。全ての色を扱える竜だ』
シキ...。
それが僕の
「よろしくお願いします」
『...最初に言っておく、
それって、つまり...。
最初、僕が不安がっていたから、
「はい、分かりました。...あの、全ての色が扱えるって言うのは?」
『基本、竜族は一体につき一色。つまり、一属性しか扱えないのだ。それらと契約している竜人も即ち、一色しか使えないという事だ。だが、儂と契約した今のお前なら、どんな力でも扱えることが出来るぞ』
「どんな力でも...」
その力を僕の思う通りに操る事が出来れば、どんな状況でも大切な人を守る事が出来るのでは...。
「シ、シキさんっ!!」
『ふん、シキでいい』
「...シキっ!僕に力の扱い方を教えてくださいっ!!!僕は....!」
『皆まで言わずとも良い。お前の事ならもう伝わっている』
そうか、そうだった。
なんでも伝わるんだった。
「じゃあ、この胸の奥がポカポカしてるのって....」
『ああ、もちろん、儂の全てを教えてやろう。宿主に死なれては儂も困るからな』
「ありがとうございます!!」
『が、その前に。あの小娘達を安心させて来い。そうでなければ、集中できんだろう』
確かに、今頃僕の事を心配しているだろうし。
『それと竜の基本的な事は小娘から教えて貰え、儂では誤った古い知識を教えてしまう事もあるからな』
「...?分かりました」
『あと、最後にこれだけは注意しろ。儂の存在はだれにも話すな。例え信用に足る人物だったとしてもだ』
「わ、分かりました...。でもどうしてですか?」
『理由は....。時が経てば教える』
「は、はい。じゃあ、とりあえず行ってきます」
...って言っても戻る時はどうすればいいんだ。
来る時の反対の事をすればいいのかな?
戻りたい!って思えば大丈夫?
次に目を開けると、屋敷の図書室になっていた。
なんとも不思議な体験だ。
「カルマ?」
「話してきたよ。ちゃんと仲直り出来た!」
「ええっ?!あの一瞬で?!!」
「アリア様、
ん、このリナの言い方からして、あっちでの時間が分かれば、その
なるほど、シキが戻るのを急かしたのはこの為だったのか。
「い、1分くらいかな...」
「1分を一瞬でですか...」
「リナ、それって凄いの?」
「会話が出来る事からして、
ふぅ、良かった。
本当は3分くらいだけど、基準が分からない以上、下手なことは言えないからね。
「ねぇねぇ、どんな竜だったか聞かせてっ!!」
「うーん、...真っ黒い竜だった」
「「....」」
「ん?」
「それだけっ?!」
と、言われてもリナのように
「リナの言ってた尾型って言うのは?」
「...そうですね。それではまず、こちらの本をお読み下さい」
あ、また、本を読めるんだ!
「これは?」
「こちらは現在までに確認されたの一覧です。
渡された本は絵が付いていて、分かりやものになっていた。
じゃあ、もしかしたらこの中にシキの事も...。
そう思い、早速読んでもらうことにした。
この本によると竜には
「この国では一般的に翼型が多いと言われています。尾型は東方地域に多く、顎型はほぼ居ません。後はハーフなども存在する様ですが、基本的にはこの三型でしょう」
ふーん。
って事は、尾型のリナはここでは珍しいって事なのか。
「次は先程も少し話をした階級についてですね。こちらに書かれている通り、階級も3つあります。下から
ほうほう。
どうやら階級はその竜と話せるか、実体化出来るかで決まっているようだ。
「ん?実体化?」
「はい、
そんな事出来るのか!
じゃあ、シキを呼び出す事も...。
でも、シキの存在を口外出来ないって事は実体化もダメかもしれないな。
「最後に属性についてです」
最後?
まだ十ページくらいしか進んで無いのに...。
残りのページが全て属性についてなのか。
「属性ってそんなに種類があるの?」
「はい。人の性格が違うように竜の属性も多種多様ですので。と言っても、ある程度は分類されています。まずは、炎、水、土、雷、風の
って事は、シキは
『違うぞ』
「うわっ!!」
「カ、カルマ様っ?!どうされたのですか?!!」
「い、いやっ、な、なんでもないよっ!!!」
ちょっとシキ、いきなり声をかけないでよ!
『一度会ってしまえば、双方から行き来が出来るのだ。どちらかが拒否をしていなければだが』
そういう事は、先に言ってよ〜...。
それにしても、
『儂は今の3つのどれにも分類されん。儂は全ての竜の頂点に立つ竜だ。もしも、分類するとしたら竜王であろうな』
竜王って、あの童話に出てきた....?
「カルマ様、聞いていますか?」
「ああ、ごめんリナ!もう一度お願い出来るかな」
「...分かりました。
「う、うん。一応...。アリアは分かった?」
「すぅ...すぅ....」
って寝てるし!
「そろそろ昼食の時間ですので、食堂へ向かいましょう。アリア様、起きて下さい」
「うぅ...、終わったの〜?」
僕たちは半寝のアリアを連れて食堂へ向かうのであった。
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