特訓
昼食を食べ終わった後はアリアと遊べると思っていたが、どうやら予定があるそうだ。
「午後からはお爺様の所に行ってくるわ。ベレッタ、連れてってくれる?」
ベレッタはいつもご飯を作ってくれているメイドさんだ。
「承知致しました。食器を片付けた後に、お部屋にお伺い致します」
「うん、よろしく!それにしてもカルマ、今日はすごく美味しそうに食べるんだね」
「え...」
やっぱり、僕がいつも美味しくなさそうに食べていたのはバレてたのか...。
今日は昨日までと違って何故か味がする。
こんなに美味しいものを食べたのは生まれて初めてだ。
「うん!美味しいっ!めちゃくちゃ美味しいよっ!!」
朝食の時に感じた違和感はきっと味覚を刺激されての事だったのだ。
ほんと、涙が出るほど美味しい...。
「そう言って頂けて、心より嬉しく思います」
「ご馳走様っ!!」
さて、午後からはリナと2人の訳だが、何をしよう。
『カルマ、自室に行け』
「うわっ!!」
ほんと、急に来るよな...。
「カルマ様、どうかされましたか?!」
「う、ううん。なんでもないよ!!」
ふぅ、またリナに心配されてしまった。
これ、いつかバレるんじゃ...。
それより、どうして自室に?
『自室で、眠ると言って儂のところに来い。そうすれば、疑われること無く話すことが出来る』
そうか、寝ていると思わせれば...。
「リナの午後からの予定は?」
「私は特にありませんので、カルマ様のお供に」
「そっか。ふぁぁぁ...。お腹いっぱいで眠たくなって来ちゃった。またお昼寝して良いかな?」
「承知致しました」
よしっ!
これで口実が出来た!
自室に戻った僕は早速シキに話しかけた。
目的はもちろん、特訓だっ!!
「特訓って言ってもこの世界でも出来るんですか?」
『ああ、ここで感覚を掴んでしまえば現実世界に戻っても同じ事だ』
なんとも便利な世界だ。
「そういえば、リナが言っていたんですけど、シキは時間をどれくらい短縮出来るんです?」
『儂の力があれば1000倍位には短縮できるな』
「い、1000倍っ?!!」
ってことはつまり....?
『こっちの15分は向こうで1秒にも満たない』
「ま、まじか...。ほんと、便利な世界...」
『早速だが、お前はどの色を使いたいだ?』
シキの言う色って言うのは、属性の事だったよな...。
午前中にリナから属性について教えてもらったけど、これといって使いたいものは....。
「父さんと同じ力...風属性が使いたいな...」
『風か...。まぁ、儂は構わんが、それではお前の恩人に迷惑がかかるかもしれんぞ』
「恩人って...、オルトさんの事?」
『ああ、お前が入ったアルバ家は代々、水竜と契約している家系だ。恩人に疑いの目を向けられたく無いのであれば、水を使う方がいい。まぁ、愛人側が風だったと言えば済む話だがな』
オルトさんに迷惑が...。
それは嫌だ。
命を救って貰ったのに、仇で返す事はしたくない。
「...分かった。じゃあ、水の扱い方を教えてください」
『まずは、だな。あくまで表向きは水と言う事だ。バレなければお前の好きな風を使えばいい。全色使える儂からすれば造作もない事。後からいくらでも教えてやる』
「シキ...。ありがとう!」
『早速、竜力の使い方だが、基本的に人と竜との間にはパイプの様なものがあって、そこに力を流して技を出すんだ。まずは、儂からお前へと続くパイプを意識しろ』
「パイプ...ですか...」
シキから僕に向かって...。
「....。こんな感じ?」
『この姿では意識しずらいか。儂はお前の胸の奥に居る。だから、胸の奥からパイプが伸びている感じだ』
「ううん、難しいなぁ...」
あ、でもあの日にシキが力を貸してやったって言っていたから、あの時のような胸の奥から熱が込み上げてくる感じ...。
『ーーーふんっ、パイプを意識する前に儂から力を吸い取るか...。なかなか見所があるじゃないか』
「ってことはつまり、この熱が竜力?」
『ああ、後はそれを手に移して、竜技を口にするだけだ』
「竜技って言うと?」
『そうだなぁ...。まずは基本的な"
「はいっ!"
その瞬間、僕の手の平から噴水のように水が出た。
「これが竜技...。でも、確か父さんや村長は何も言わずに使っていたような」
『ああ、竜技とはあくまでイメージしやすくする為だ。使い慣れてさえいれば、竜技を言う必要は無い。とにかく慣れろ』
「わ、わかりました...!」
それから数時間、ひたすら水を出し続けた。
「父さんや村長はすぐにバテてたのに、シキはこんなにやり続けても苦しくないの?」
『ああ、地力が違うからな』
そこからまた数時間経ったが、まだ感覚を掴むことが出来ない...。
くそっ...。
どうしてなんだろう。
竜力の移動は簡単に出来るのに、竜技を唱えないとやっぱり...。
「シキ...」
『そうだな。コツとしては竜力に色を付けるイメージだ』
「色を付けるイメージ....」
手に集めた竜力を手の平の中心から吹き出すようにして、それを青色に...。
「.....出たっ!!出来たよっ!!!」
『ああ』
素っ気ないシキだったが、口元は微笑んでいるのが分かった。
シキの言った通りにすると、簡単に竜技を言わなくても技を出せるようになった。
それさえ分かってしまえば、残りの"
属性の色をイメージするだけで、自然と手から出てくる。
『まさか、こんな短時間で物にするとはな』
「シキが属性の事を色って言う意味が分かったよ」
『ふん、流石、ニノが選ぶだけの事はあるな....』
「ん?何か言った?」
『いや、なんでもない。とりあえず、特訓はここまでていいだろう。後は竜技を覚えて口にすれば良いだけだからな』
「わかった!!じゃあ、僕は現実世界に戻るよ」
『ああ。時間は1時間くらいに調整してある』
え、それってどう言う...?
「お目覚めでございますか」
あれ、リナ?
そっか、戻ってきたのか。
「...僕はどれくらい寝てた?」
「ちょうど1時間くらいでしょうか」
なるほど、シキが最後に言っていたことはこういう事だったのか。
もう、なんでもありだなあの世界...。
あそこでいる間はお腹も空かないし、喉も乾かない。
なんて便利な世界なんだ...。
『利点だけでは無いのだがな』
「...っ!!」
び、びっくりしたぁ...。
もう少し、音量を下げれない?
『儂への意識は耳を傾ける程度にしてみろ。そうすれば、自ずと小さくなる』
そ、そんな事が出来るのか...。
耳を傾ける感じか...。
少しずつ出来るようにしてみるよ。
「さてと、眠気もなくなったし、何しよっかな」
「でしたら、王都周辺の地理について勉強するのは如何でしょう」
「いーね、それ!」
「では、図書室へ向かいましょう」
「よしっ、行こう!」
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