相棒
「リナ、パパとママの姿が見えないようだけど...」
アリアの言う通り、オルトさんとマナさんが居ない。
いつもなら朝食は一緒に食べるはずなのに...。
「お二人は貴族会議の為、ノルテに向かわれました」
「ええっ、またーっ?!」
貴族会議。
初めて聞く言葉だ。
「貴族会議って何?」
「季節に一度、王の命で開かれる十貴族の会議でございます。各都市の定期報告や王だけで判断が出来ない案件を話し合ったりします」
「でも、先週戻ってきたばっかりじゃん!」
リナの顔が少しだけ曇った。
「そうなんです。なので、何か王だけで解決できない問題があったのかもしれません」
王だけで解決できない問題....問題....。
そ、それってまさか...僕が下民って事がバレたんじゃっ?!!
「や、やばくないっ?!!もしかしたら、ここから追い出されるかも....」
「...い、いえ、そこまで大事ではないかと。執事長から聞いたのですが、今年は日照りが多く凶作になると。恐らくその事でしょう」
「でもそれぐらいなら前回に話し合ってるんじゃない?」
「それもそうですね...」
リナは少し考えたが、分からない様子。
僕には心当たりしかない...。
「もう、どうせ考えたって当たらないわ。パパの帰りを待ちましょ。そ、ん、な、ことより、カルマっ!今日は何して遊ぶ?!」
そんなことって...。
もしかしたら、僕のせいでオルトさんが追放、なんて事も有り得るんだよ?
「アリア様の言う通りですね。きっと、カルマ様が心配されずとも良いと思います。珍しいことではありませんので」
「そ、そうなのか...」
不安げな僕の為にリナなりに気遣ってくれたんだろう。
僕も深く考えず、オルトさんの帰りを待とう。
「カルマっ、早速遊ぼっ!!」
不安の欠けらも無いアリアが、目を輝かせながら言った。
と言っても、僕は同世代の子との遊び方なんて知らない。
村にいた頃はずっと家事ばかりで友達と呼べる者は居なかった。
だから、昨日の探検は僕にとって初めての体験だった。
正直、ここに来て1週間が経つがずっと部屋に籠っていたせいで、この屋敷について全くと言っていいほど知らない。
それ故、また探検がしたい気持ちがある。
昼の屋敷と言うものを知っておきたい。
「アリア、今日は....」
「アリア様、申し訳ございません。カルマ様は本日より
リナが僕の言葉を遮るように言った。
「え、そうなの?」
僕の方に振り向かれても、僕もそうなの?と言う気持ちなんだが、リナがそう言うのであればそうなのでだろう。
「う、うん...」
「ええ、つまんないっ!!」
僕もアリアと遊びたいと思っていたが、オルトさんに言われていては仕方がない。
「こうするのはどうでしょう。学校に行かれているアリア様が、カルマ様に
「それだわっ!!」
流石リナ、満点の回答だ。
「アリア、僕に教えてくれる?」
「もちろんっ!私に任せてっ!!」
そう意気込んだものの、図書室に着いた途端に消沈していた。
「ま、まずは何から教えればいいの...?」
余りにも可愛いものだから、つい笑ってしまった。
「じゃあ、まずは
「えーと、
アリアが言った事は知っている。
なんせ、あの日に村長から聞いた話だからな...。
「...他には?」
「他にはー...え、えーと...」
あ、これ分からないやつだ。
しっかり目線も逸らしちゃってるし。
リナ、何とかしてー?
「...ではまず、
童話?
初めて見た。
「あ、私これ知ってる!白い竜と黒い竜が出てくるやつ!」
「そうです。私も初めて読み聞かされたのがこの絵本でした」
ふーん。
そんなに有名な物なんだ。
下民の僕たちには本なんて読む機会無かったから。
それに1つ大きな問題がある。
「あの、僕、字が読めないんですけど...」
「「え...」」
あのリナですら取り乱す程の驚きよう。
字が読めないのがそんなに大変な事かな。
いや、致命的か...。
「で、では、恐縮ながら、私が読み聞かせますので、カルマ様は本をお持ちください」
「は、はい...」
なんか、ごめんなさい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
昔昔、ある大陸の中心に竜の住む国、ドラグーンがありました。
その国は竜王アルカディアの下、幸せな暮らしを送っていました。
そんなある日、その竜王に2人の子供が出来ました。
兄の名前は黒竜ネグロ、妹の名前は白竜ブランカ。
竜王はこの兄妹を愛し、大切に育てました。
しかし、竜王の愛情は強く、2人の為ならどんな犠牲も厭わない王へと豹変してしまったのです。
国に住んでいた竜は恐れ、逃げ出す者も後を経ちませんでした。
王の傲慢さが引き押した悲劇は国を衰退させ、滅亡へと追いやったのです。
変わり果てた国を見た兄妹は国の者達に聞きました。
「どうして、みんな居なくなってしまったの?」
国の者達は恐る恐る言いました。
「王がお二人の為に我らを見捨てたのです」
兄妹は今まで過ごしてきた贅沢な時間は国の者を代償に得たものだと初めて知りました。
そして、国の者と共に立ち上がったのです。
国の為、豹変した父の為に2人で王になる事を決意しました。
そして、1人待つアルカディアの元へと向かったのです。
国に竜が集まり、城の空は竜で埋め尽くされました。
それを見て竜王は言いました。
「愚か者め」と。
竜王はその言葉を最後に星となったのでした。
こうして、竜の国には平和が訪れ、民達はそれが未来永劫続くよう祈ったのです。
しかし、子は親に似るもの。
自分達が竜王のようにならないとは限らない。
それを恐れた2人の新たな王は国を人間に任せ、その心に宿って見守る事にしました。
おしまい。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「これが私達に相棒が宿った成り立ちだと言われています」
本ってすごいね。
僕の生まれる前の事も知れるなんて。
もっといろいろな本が読んでみたいなぁ。
「ねぇねぇ、カルマの
「え?竜と話す?そんなこと出来るの?」
そういえば昨日、レンバート王にも同じような事を聞かれたな。
後、
「そうよ。ママはいつも話をしていると言っていたわ」
「アリア様、皆が
「え〜、そうなの?でもどんな見た目なのかは分かるんじゃない?」
「それはそうですが....」
見た目?
ってことは
「じゃあ、リナの
「私の
風竜...。
父さんと一緒だ。
「風竜って言う事は、人を浮かせたりできるの?」
「ええ、人に限らず物も浮かすことが出来ます。中には自身を浮かせて長距離を移動する事も出来るようなのですが、私の竜力ではとても...。出来るのは貴族の方のみでしょう」
竜力ってそんな事も出来るんだ。
「じゃあ、次はカルマ!」
「僕?僕は...
「ええ〜」
「おかしいですね....。
リナはあの日の事を知らない。
きっと僕の夢の儀式はまだ終わっていないんだ。
リナの言葉から察するに
「ちなみに、どうすれば
「目を閉じて、
「ちょっとやってみるよ」
目を閉じて...。
....。
「何も聞こえないよ?」
『...ようやく来たか』
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