玉座の間にて
カルマとオルトが玉座の間を後にしたあとの事だった。
「こ、これはクロノス公っ!お勤めご苦労様でございます!!」
「開けて貰えるかな」
「はっ!少々お待ち下さい!」
扉の向こうから聞こえるのは少し慌ただしい声。
その後、ギーッガタンッと音を立てて扉が開いた。
長身で細身の男は軽やかな足取りですぐさま俺の正面で膝を着いた。
スクエア型の眼鏡をくいっと上げて報告に入る。
「レンバート王、ただいま帰還しました」
俺の前に跪くのはコーキ=ジ=クロノス。
十貴族の一当主であり、俺の側近だ。
この度、東方都市エステに行っていた、フリーシアの護衛を任せていた。
それが帰ってきたということは...。
「おお?!コーキっ!待っておったぞ!!フリーシアちゅぁんはっ?!!」
「自室にてドレスにお召し換えなさっています」
「はぁ....。なんだ、お前だけか。で?いつもみたいに眼鏡でも自慢しに来たのか?」
「自慢してません」
と、言いつつ、コイツは眼鏡に手をかける。
「ふんっ、釣れないなぁ。それで老師のご様子はどうだった?」
今回のエステ訪問はフリーシアの専属護衛着任を老師に報告しに行っていたのだ。
そして、その着任した専属護衛と言うのが、この男の娘だ。
「上手くやれると良いがな、俺とお前のように...」
「大丈夫でしょう。きっと良い護衛となります」
「そうか、それなら一安心だ」
「一つ王のお耳に入れておきたいことがあります」
コーキは眼鏡をくいっと上げて話し出す。
「エステから帰還する際、下民の村を通る予定だったのですが....。村は焼滅しており、無数の死体が放置されていました」
エステからの帰りと言うと、この国で一番大きな下民の村か。
「生存者は?」
「確認できませんでした。ただ、痕跡は残っておりました」
痕跡...。
つまりは、
「....そうか。全く面倒事を増やしやがって。すぐに貴族会議を開く。皆を招集せよ!」
「はっ!」
「どこの奴かは検討が着く。そろそろ灸を据えてやらんとな」
「仰る通りにございます」
これまで、幾度となく問題行動を起こしてきた貴族。
下民と言えど、無数の命を奪うことは見逃せん。
「全く、せっかく、フリーシアちゃんが帰ってきたって言うのに、今度は俺が城を空けることになるとは...。これなら前の会議に着いて行けばよかった」
「王は多忙故、仕方ありません」
「くそっ、とりあえずフリーシアちゅぁんに会ってくるにゃんっ!!」
俺は首を傾げ、握った拳をくるんと前に出した。
「大の大人が"にゃん"とか言わないで下さい」
「なんだよ、お前だって言ってみれば案外似合うかも知れないじゃないか」
「言いません」
「ええ、言えよぉ」
「嫌です」
そう、コイツはドが着くほどの大真面目なのだ。
「はぁ...つまらん」
「全く、貴方は昔から...」
「昔と言えば、さっきまでオルトが来ていたぞ」
「知ってます。城門で見かけましたので」
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