第47話 悪夢再び
始業式中の突然の爆発に驚いていると、先生達が適切に指示してくれる。
「お前達はここに居ろ!体育館なら比較的安全なはずだ。先生方は腕に自信のある人に来てもらいます」
女性教師が先導して爆発のあった場所の様子を見に行こうとしたその時――
「ワシも行こう」
「校長先生……いいんですか……?」
「ワシはこの学校の長、そうなると決めたからには生徒達を守らなければいけない」
「し、しかし……
「生徒達のためにこそ、この力はある。それにワシに万が一の事があっても
「そんな……」
「それにこの中ではワシが一番強いからのぉ」
「――ッ!お願いします……!!」
女性教師は校長先生や他の戦える人達を率いて爆発のあった学校へ向かった。
途中、生徒会長を名乗る生徒が自分も付いていきますと言っていたけどそれは却下された。
生徒を危険に晒せないという判断だろう。
戦える先生達が学校へ向かってほんの十数秒後。不気味な魔力が私達の頭上に居るのが分かる。
この学校は仮にもエリートと呼ばれる生徒ばかり、少数でもその気配に気づいた者が声を上げる。
「あそこに何か居る!!」
一人の生徒が体育館の天窓を指差す。
その天窓に居る何者かはその瞬間、窓を割って中に入ってくる。
あまり戦いに向かない治癒魔法専門の教師や新人の先生は残ってくれているけど、やはり心許ない。
そんな不安な状況下の中、天窓を割って入ってきた一人の男が――
「おーいいねぇ~この国の有力者のガキ、隣国の貴族のガキまで居やがる」
狙いは有力者の子供か……!!
だけど人数差は圧倒的だった。負ける道理が無い……と高をくくっていると、体育館の出入り口からぞろぞろと黒いフードを被った人達が入っている。
ものすごく見覚えのある装いだ……。
体育館のど真ん中で狂気の笑みを浮かべているそれは高らかに叫ぶ――。
「てめぇらァ!蹂躙しろ!!」
先ほどまで校長先生の話している声だけで静かだった体育館は至る所から男女問わず悲鳴が交差する最悪の空間と化す。
私はフーリア達と固まる。4人で背中を預け合い、背後を敵に取られないようにする。
私達は自分達の方へ向かってくる敵に手いっぱいで他を庇う余裕が無い。
そんな中さらに追い打ちをかけるようにフードを被った男が素顔を表す。
「よう久しぶりだな」
「お前は……!!」
怪しい魔力を持ったゴーレムの残骸があった場所に居た……。
「アルタイル……!!」
「お~覚えてたか。お前には興味があってな。一度手合わせ願いたかった」
「本当はお断りなんだけど……狙いは何?」
「さぁ……勝ったら教えてやってもいい」
学校の方では大きな爆発音がまだ響いている。先生達が魔法やら使っているんだろう。今回出てきたゴーレムは恐らく大きい。
爆発音がこの前のよりも大きかったからね。
多分先生達は苦戦しているんじゃないかな。どうにかして時間を稼がないと……。
「フーリア、下がってて!!こいつは私がやるわ」
「ルーク……私も戦うわ。足手まといと思わないで剣術ならルークより遥かに上なんだから」
「だけど危ないよ」
フーリアを危険な目に合わせたくない。私には万が一のために魔法という最終手段がある。
そんな思いから言ってしまったんだけど、フーリアは足手まといだと思われている、と思ったのか不機嫌そうな顔をしている。
「そうだ、お前は邪魔だ。退けよ」
「――ッ!!」
フーリアはアルタイルに睨まれて気圧されてしまう。
無理もない、アルタイルの放っている殺気は肌がピリピリするほど、まるで蛇に睨まれたカエル……。私の前世の記憶がある精神力でも肌が震えるほど。
まだ15歳のフーリアでは耐えられない。
それにアルタイルばかりに気を取られている場合じゃない。
ショナとユウリは襲ってくる敵を躱しながら私達の方へ応援を要請する。
「お話は良いんだけど、どっちかこっち来て!!」
「敵は強くないけど……数が多い……。私の魔法は燃費が悪いから節約したい」
「で、でも……」
フーリアは心配そうに私の事を見ている。
まあ時間稼ぎするだけだし、周りの生徒達も襲ってくる教団を相手に意識を別に向ける余裕はないだろう。
それなら多少魔法を使っても問題ない。
「フーリアお願い」
「……わ、分かったわ。でも」
「でも?」
「私以外に負けたら本気で許さないから!」
「そんなこと言われると負けられないね」
フーリアは私から離れてショナ達の手助けへ向かった。
私はそれを見届けてからアルタイルの方へ向き直る。フーリアと話している間に襲ってきたとしても警戒していたからいつでも対応するつもりだった。
だけどアルタイルはずっと待っていてくれた。傲慢か慢心か……それとも優しさ……はこんなことをするんだからそれは無いよね。
「やっとか。やっぱ強い相手と戦う時はタイマンが一番いい」
どうやら優しさというよりは傲慢の方が上かな。
「少し聞きたいことがあるんですが」
「なんだよ。ここへ来た理由とかは勝ったら教えてやるって」
「それじゃなくて……」
ゴーレムがまた空から降ってきた。しかもその直後にこのアルタイルが襲って来た。
やっぱり考えずにはいられない。
「あの時、屋敷にゴーレムを放ったのはあなた?」
「……何のことか分からないな。確かにアレは俺達のモノだが……」
アルタイルは学校の方を見てそんなことを言う。
学校の方にはゴーレムが居る。少なからず今回襲って来たゴーレムは魔王教団のモノと言う事か。
私は左手のひらを広げ、そこから炎帝剣を取り出す。
「身体に剣を納刀できるのか」
「どこからでも取り出せるわ」
「なるほど……その剣の鞘はお前自身か!面白い!!」
アルタイルも私を向いて構えているように見える。剣は持っていないから魔導士……?
構えは馴染んでいて強者の風格を感じさせる。
私は深呼吸する。
ここからは命のやり取りだ。
私は覚悟を決めてアルタイルと戦いを挑む!!
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