第48話 蛇
突然学校を襲って来た魔王教団……その仲間であるアルタイルと命の取り合い。
他にも魔王教団の奴らが暴れていて生徒達の叫び声が響き渡る。
「良い悲鳴だぁ。やっぱガキの苦しむ声は聞いていて爽快だぜ」
「……君もまだ子供なんじゃないの?」
いつもフードを被っていたから全体が良く見えなかったんだけど、今は戦闘の体勢に入っているからかフードを脱ぎ捨てて全身を露わにしている。
魔法使いらしい細い身体、肉体改造を全くしていないであろう白い肌。身長は160後半くらい。中学生くらいの顔立ちからおそらく同い年だろうか。
「俺はガキじゃねぇ!!まあ確かに15年しか生きていないけどな」
「同い年……」
「なんだお前もか」
15歳とは思えないくらい狂暴な性格をしていアルタイル。
一体どう育てはこうなるか……幼い頃から魔王教団に入っていてこうなっているのなら、本当に信用できない団体だと言う事は分かる。
アルタイルは首を鳴らす。
「そっかぁ……同い年か……じゃあお前は――」
アルタイルは私の方へ向かって走ってくる。
この人は魔導士のはず!!魔導士が剣士と戦う場合の鉄則は距離を取ること。
なのに向かって来た!?普通に切り伏せる……?
いや、何か嫌な予感がする。
ここは冷静に見切る!!
私はアルタイルの動きを注視する。蛇のような不規則かつ素早い動きだけど捉えられない程じゃない。
「死ねぇ!毒牙ぁ!」
アルタイルが吠えると手から紫色の魔力が溢れてくる。名前からして毒系の魔法かな。
私は相手の手に触れないように剣を抜き、刃を翻した。翻した剣では人を斬ることはできないけどそれでも思いっきりぶつければ骨折はする。
私は毒に染まったアルタイルの手を剣で弾く。翻したのは腕を切断してしまう事を恐れたから、さすがにそこまでするつもりはない。
剣とアルタイルの手が触れる。
キィンーーッ!
決して人の手と剣が交じ合うような音じゃなかった。
だけど確かに私の剣はアルタイルの腕を捉えている。私は目を凝らしてアルタイルの腕を見た。すると――。
「何それ……鱗……!?」
「ククッ……バレたかこれが俺の魔法。身体を毒蛇のような鱗や毒で覆う事ができる」
「変身系の魔法……しかも毒蛇!?」
「ああ、だけどただ変身するんじゃない。毒の蛇と化した部分は鱗を纏い、その身体能力を上げる!!」
アルタイルは足に毒を纏っている。紫色の毒で見えにくいけど多分鱗もあるんだろう。
驚いて、動揺している間を利用されてアルタイルの毒を纏った足が迫ってくる。私は翻した剣を持ち直す。剣と炎を使って私の顔を狙ってくる足技を受け止める。
キィンッ!!と音が鳴る。やっぱり剣の刃でも切断できない!!
私はアルタイルから距離を取ることにした。剣士だから魔導士を相手に距離を取るのは悪手だけど……毒に触れるのは危険すぎる。
「剣士が魔導士相手に距離を取るとか臆病だな」
「そっちが毒なんて使うからでしょ……だけどそれだけじゃない」
「あ?」
「よくそんな白くて細い身体で俊敏な動きができるわね」
「蛇は暗くて狭い所を好むからなぁ~。身体は動かせても日に浴びなきゃ焼けない、細いのは狭い所へ入るためさ」
「なるほど厄介ね。じゃあこれは……!!」
私は炎の剣を地面に突き刺す。
すると地面から炎が吹き荒れ、アルタイルを囲む。
「アチぃ……熱いのはあんま好きじゃないんだがな」
日に浴びてこなければそうでしょう、これで少しは弱体化して欲しいんだけど。
炎に包まれたアルタイルは身動きが取れない状態。そして炎で視界を遮られている。
私はアルタイルの背後に周り、気配を察知されないように近づいて剣を横に振るう。
再び剣を翻して炎を纏わせ、全力でアルタイルのお腹へぶつける。
いくら刃が無くても蛇化していない身体への一撃は痛いだろう。
そう思っていたんだけど……私の剣は思いも寄らない場所まで薙ぎ払ってしまった……明らかに宙を斬っただけで敵を捉えらていないのが感覚で分かる。
私はその瞬間、攻撃を避けられたと確信した。気配を消したはずなのにバレていた!?
アルタイルは炎の渦の中を抜けてくる。
身体の全身から紫色の液体をばらまいて……。
「毒で身体をコーティングして炎を防いでいるの……?」
「ああ。だがしかし、なかなか卑怯な真似をする。炎の中に閉じ込めて不意打ちとは」
「でも避けた……どうやって?」
「蛇の感覚は異常なほど鋭いんだ」
そういえば蛇って目以外でも物を捉える器官があるんだっけ……。
肌が白いのは暗闇の中で生きてきて日に当たる事が少なかったから……。暗闇の中では人の目じゃ見られるものに限界がある。
そこを蛇特有の器官を使っていたということ?
その感覚器官を塞いでやれば目暗ましが効くかもしれない。だけどそんな器官がどこにあるか分からないし、そんなのいちいち塞ぐ余裕があるなら攻撃魔法を当てた方がいい。
蛇の鋭く俊敏な動き、それに対応するためにはもっと早く剣を振るう必要がある。
「また筋肉馬鹿の薙ぎ払いか。だがたった一直線の一本の居合切りでは俺を捉えられないぜ?」
「それは試してみないと分からないでしょ、炎帝:焔……」
私は居合切りと同時に炎の魔法を剣に纏わせる。一直線に一の字を描く。だけどそれじゃ上と下に逃げられて終わる。現にアルタイルは身体をうねらせて宙を舞う事で私の攻撃を避ける。
それなら!!
身体能力を魔法で強化。速度を上げる。
一直線に薙ぎ払った瞬間、刀を握り直して縦に1の字を描くように振り下ろす。
「十字斬り!!」
「うぐっ!?」
アルタイルは最初の横への薙ぎ払いをジャンプして避けた。
空中では次の縦の1の字斬りを避けられない……そう思っていたんだけど起用に身体を揺らして致命傷こそ避けられる。
それでも右肩に立ての斬りこみ傷を与える。アルタイルの右肩から血が滴り落ちる。
「まさかの縦斬りもできるのかよ。剣術自体はめちゃくちゃだが、それを人間の身体能力だけで再現……それは無理があるんじゃないか?」
「ど、どう言う意味よ」
アルタイルは周りに人が居ないかを確認する。
まるで聞かれたくない事を今から語るかのように……。
「だってお前、魔導士だろ?そして剣士でもある……知ってるんだぜ?」
「なっ!?」
どうしてこいつがそれを……!!
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