第45話


「ルークはここでゴーレムと戦ったんだよね?」

「……どうしてそれを知ってるの?」


 私はショナに一切そのことを話していない。それどころかフーリアだって知らない話だ。

 それをどうして外国出身のショナが知ってるの……?

 

 しかしその答えは意外なモノだった。


「昨日あのおば……ルークのお義母さんがそのことを言ってたんだよ」

「そうなの?」

「うん、言い争いになってあんたは家の庭で岩石の魔物と戦っていた時のあの小娘みたい……乱暴すぎるわぁ!!って」

「なるほど……」


 いちいち乱暴という表現を使いたいがためにそのことをショナに教えたのか。

 何でもかんでも話してしまう義母に呆れつつ、少しだけショナの事を疑ってしまった事に後悔する。


 だってあの戦いはこの屋敷に居る者しか知らず、もしかしたらゴーレムは誰かが意図して呼び寄せたと思われるからだ。

 それがショナだったら……って考えてしまったけど、よくよく考えたらそれは無いか。

 ショナは私と同い年だから当時のショナも子供だった。さすがに子供にゴーレムを操ることができないでしょ。

 

 ましてや剣士では不可能だ。

 でもだったらどうしてフーリアとユウリを置いて私と2人でここへ来たんだろうか。


「ちなみにさ。そのゴーレムって私達があの時に戦ったのと同じ?」

「あの時って冒険者の人達が戦った?」

「そうそう」

「……まあ、多分一緒だったと思う」

「どうしてそう思うの?」

「魔りょ……見た目が似ていたから」

「そう」


 ショナは一言そう言うと庭を一周する。

 何か言いたそうにしてる?だけど踏ん切りが付かないというか戸惑っているように見える。

 しかしショナはどこか覚悟を決めた顔をする。


「ルークって実は魔導士でしょ?」

「え……け、剣士だけど……」

「さっきゴーレムが似ているからそう思ったって言ったけど本当は魔力を感知できるからじゃない?」

「どうしてそう思うの?」

「ユウリだよ。あの子さルークは魔導士だって言ってた。ルークから膨大な魔力を感じてるんだって」


 私は自分の魔力を隠している、簡単にバレないようダインスレイブに教わった。

 まさかユウリはそれを見破った……?と思ったけどショナもまた違和感を感じていたみたいだ。


「ルークの剣から放たれる技って剣だけの力じゃないよね?その形の剣もそうだしおかしいなとは思ってた」


 剣の形については確かにこの世界には無い物だろう。

 だけど多分そこは違う。ただここで異世界から来たからこんな剣を持っているとは言えない。

 

「……」

「言いたくないならいいけど……私達は仲間だから出来ればルークの口から聞きたいかな」


 仲間……確かに私はずっと隠してきていた。

 魔導騎士エーテルナイトと呼ばれる神に代わる人達と同じことができるから、異端者だと思われるのは嫌だった。

 特にショナ達は仲間だからこそ、そうなるのが怖かったんだ。

 

 だけどもう隠しておくのは無理みたい……。仲間なのに秘密があるなんて今後はショナ達も私の扱いに困るだろう。

 今ここにユウリは居ない。出来れば2人に話したいけど……私は要点を伝えるのは苦手だから一旦ショナに話してユウリと一緒に話してもらおう。


「分かった。話せることは話す!」

「話せないことはあるんだ」

「それはまあ……」

「もしかして結構踏み入った話?それならいいよ。私もそう言うのは聞かれたくないからそこはお互い様で」

「……じゃあどうしてここで私に問いつめたの?」

「問い詰めたつもりはないんだけど……ま、それとこれとは話が別ってことかな」

「どういうこと?」

「私個人の話、そしてルーク個人の話あまり関係無いんだよ。必要なのはパーティメンバーの強さを知っておかなくちゃいけない。万が一があった時は頼りたいし力だって貸したい」


 流石は私達のチームのリーダー、お互いどんなことが出来るのか知らないと選択肢の幅が狭まる事を危惧してのモノだった。

 ショナはあまり私たちの事を聞いてこない。そういうのに興味がないのかと思ったけど……。

 そうでもないみたい。ただこの関係が壊れるのが嫌でずっと秘めていた気持ちなんだろう。


「でもまあ仲間の個人的な話は気になるから、私のことを話さくていいのなら聞いてあげるわ」

「……」


 一瞬この子は抜け目のないこだと思ったけれど、どうやらそうでもないらしい。

 

 私はため息を尽きながら魔法を使えることを話した。当然、剣も使えることを知っているので魔導剣士エーテルナイトと思われるかもしれない。

 そこはちゃんと訂正しないと……。


「でも魔導騎士エーテルナイトではないと思う。少なくとも血は通ってないと思う」

「じゃあどうして魔法と剣を使えるの?」

「それは正直分からない……かな」


 何となく予想できるけど……。

 

 多分、私が転生者だからだろう。だけどそれを伝える事は今のところ無い。

 だからここは嘘を付く。その変わり話せることは話すことを決める。


「元から出来たんだ……そういう体質?」

「まあそんなところじゃないかな」

「ふーん、まあいいや話してくれてありがとね」

「こっちこそ隠しててごめん。でも魔導騎士エーテルナイトだと思われるのが嫌だったから」

「そういうこと……まあでも話してくれて良かった。あなたが魔導騎士エーテルナイトでは無いって知れて本当に良かった」

「そ、そう」


 ショナは一瞬、自分の剣を強く握った。

 本当に少しだけ真剣な眼差しを向けてくる。


 しかしすぐにいつものショナに戻った。

 なんだか引っかかる言い方だけど……そこは踏み込まないとさっき約束したばかりだからね。

 

 こうしてフーリア以外に私の事を知る人がまた増えた。

 

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