第3話 手紙
翌朝早く、僕たちは都庁の前にいた。
昨日、見つけたヒントの銀杏の葉のマークがある正面玄関に4人で立っている。
「ここに何かヒントがあるっていうのかな。」
紫音が周りを見渡している。
朝が早いせいなのと、日曜日ということもありあまり人はいない。だが、もう少ししたら、観光客も増えるだろう。都庁は役所でもあるが、一つの観光名所にもなっている。人が増える前に、ヒントを見つけたい。
でも、何処を探せばいいのだろう?途方に暮れていると、向うのほうから警備員の制服を着た人が歩いてきた。
もしかして、不審者と思われて通報されるのかと警戒していたら、
「あの、蔵臼さんのお知り合いの方ですか?」
と声をかけてきた。
「え?そうですけど。」渡中がそう答えると、
「よかった、蔵臼さんに頼まれてあなたを待ってました。あなたにこの手紙を渡すようにと言われてたんですよ。今日来なければ、もう間に合わないからって言われてて、よかった。お会いできて。確かに渡しましたよ。」
そういって渡中に一通の手紙を渡すと、どこかに行ってしまった。
渡中は受け取った手紙を開けて、中を確かめた。
中にはまた手紙と、手帳についていた下敷きと同じような下敷きが入っていた。
「渡中さん、今度のヒントはどうなっているんですか?」
渡中さんは手紙を紫音に渡した。
僕と岸くんも紫音の手元を覗き込んで手紙を読んだ。
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すみだがわ かいいぬと つながっている リード
365にちの 10がつ 04にちに わたしのねがいが かかっている
PS、あと一つだよ。 蔵臼 三太
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「これも同じように、この下敷きを当てればヒントが出てくるんだろうな。」
今回は下敷きがすでに空いている状態だった。
「よし、やってみよう。」岸くんが手紙の上にその下敷きを重ねた。
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🔲 🔲 🔲 🔲🔲
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『すかいつリー35004』
手紙のヒントは次の場所のようだった。
「次はスカイツリーなんだな。でもこの35004ってのはなんだろうか。」
スカイツリーの高さは確か、634メートル。
まだ江戸時代にはこの東京と埼玉、千葉一帯は武蔵の国と呼ばれていたらしい。そのムサシと
この数字は高さではないのかな。
「とにかく行ってみようぜ。行ったらわかるかもしれないじゃん。」
岸くんはいつも行動的だ。考えてもわからなければ、とりあえず行動する。
僕たちはその後スカイツリーへ移動した。
途中で岸くんは事件が起こったらしく、非番なのに呼び出されて行ってしまった。
スカイツリーは12月24日ということもあって、カップルでにぎわっていた。
「まだ昼前なのにすごい人だね。やっぱりクリスマスは、町が華やぐし、なんかこうやってデートしてる人たちを見ると幸せな気持ちになるね。」
僕はちょっとウキウキして紫音に言った。
「夜になったら、本当にカップルだらけなんだろうな。」
「あれ?紫音、うらやましいの?」
「いや、別に。」
そういえば、紫音にはあまり浮いた噂なんか聞いたことがない。
男の僕から見ても紫音はかなりのイケメンだ。性格も申し分ない。
女性の影など全く感じられないってのが、不思議なくらいだ。
「スカイツリーのどこに今度はヒントが隠されているんでしょうか…?」
渡中は不安そうな顔で僕たちに言った。
「35004という数字がきっとヒントなんだろうけど、この数字の意味が何なのか。とりあえず、入場してみましょう。」
紫音はつかつかと行ってしまう。
クリスマスイブのスカイツリーに男三人で入場するのは少し気が引ける気もするが、ここは仕方がない。
パンフレットをもらって、中に入ってみた。
僕もスカイツリーに入るのは初めてだ。
5Fまでは無料で入れるが、それ以上は有料ゾーンになっている。
僕はパンフレットを見てふと、あることに気が付いた。
「展望デッキに行くのは、4Fのエレベーターからみたいだぞ。
ん?紫音、その展望デッキがフロア350っていうんだって。
35004の350はこのフロア350じゃないのかな。」
「なるほど。フロア350か。じゃぁ、04はなんだろうか。」
「とりあえず行ってみよう。言ったらわかる気がする。」
3人で4Fまで上がって、入場料を払ってエレベーターに乗った。
どうやら、地上350M地点のフロアがフロア350のようだ。
さすがに350Mまで登ると、東京都内が一望できる高さになる。
「たっけー。絶景だな。東京一望できんじゃね?」
紫音が珍しく興奮している。
「天気が良かったら富士山も見えるらしいよ。
それより、この04の謎を解かなきゃ。」
あれ?そういえば渡中さんは…?
さっきまで僕たちと一緒にいた渡中さんが、ふと見ると隣にいなかった。
振り返ると、少しおびえた顔で建物の中心あたりで立ちすくんでいる。
「私、高いところ苦手なんですよ。本当は…」
そういって窓から離れてそろりそろりと歩いている。
「あらら、渡中さん。ゆっくりで大丈夫ですよ。僕たちが行ってきますから。」
紫音は、うろうろしながら04のヒントを探している。
僕は蔵臼の手紙をもう一度見直してみた。
すると、気になることがあった。
「なぁ、このわたしのねがいがかかっているの部分、上に点が書かれていて強調されているように思うんだけど、これも何かのヒントかな」
「ん、そうだな。これだけ傍点着いてるのは気になるね。」
僕はパンフレットを紫音に見せて、言った。
「紫音、このフロアにはW1SH RIBBONっていうスペースがあるんだって。ほら、パンフレットのここ。そこには来場者の願いがかけれるらしい。」
「それ!私の願いって、そのリボンじゃないか?」
「しかもこのスカイツリーには柱に番号が振ってあって、そのW1SH RIBBONは04番らしい」
「まさに、それだ!」
「よし!行ってみよう」
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