第4話 聖夜

僕らはそのW1SH RIBBONに向かった。

場所はすぐわかった。

わかったんだが、さすがにクリスマスイブ。しかも今年のクリスマスイブは日曜日ときている。

このW1SH RIBBONはスカイツリーの一つの観光目玉にもなっているらしく、かなり混んでいる。

「こりゃ、ここから探すの大変だな。たどり着くのが困難だぜ。」

紫音が混雑をみて唸っている。

ふと見るとすぐそばに、街中でよく見るガチャガチャが置いてあった。

「これって、そこのガチャで願いを書くリボンを購入するみたいだよ。で、そのリボンをそこのモニュメントに括りつけるんだって。

蔵臼さんはこのリボンを買って謎を底に括りつけたってことか。

ここから、蔵臼さんのリボンを探すのは…ちょっと大変だね。」

少し離れたところから見ても、願いのリボンはかなりの数がかけられている。そのうえ、この混雑だ。あの中から一本のリボンを見つけるには、かかっているところまでいかないと見つからない。

「じゃ、俺たちもその願いのリボンっての買って、並ぶしかないな。せっかくなら願い事書いて、括っていこうぜ。」

僕たちは、ガチャでリボンを買ってその列に並んだ。

クリスマスイブの混雑に男二人で並ぶのには少し勇気がいるが、仕方ない。

渡中さんは高いところがだめだと、景色の見えないようなところで待っているらしい。


僕たちの順番が回ってきた。願い事を書くだけで、30分ぐらい待たされた。二人で願い事を並んで書く。

「迅、お前はなんて書いたの?」

「え、内緒。紫音は?」

「ん?世界平和。」

嘘だ。紫音は僕と岸くんが幸せになりますようにって書いてある。

僕はといえば、これからも紫音と仲良くいられるようにだ。

なんだよ。両想いかよ。恥ずかしいじゃん。

いや、そんなことより蔵臼さんのリボンを探さないと。


紫音と僕は目を皿のようにして、蔵臼さんのリボンを探した。

しばらく探していると、少し上のほうにちょっと目立つ感じでそのリボンを見つけた。

「紫音。あったぞ。」

「でかした、迅。なんて書いてある?」

僕はそのリボンをよく見た。

リボンには、こう書かれていた。

『はじめてあなたにてがみをかきました。

  せいやは・・・であなたをまつ 

    4-C 9-B ー ⇒ 〇〇ー

    6-A 10-C 4-A ⇒ パ〇〇゛

          蔵臼 三太』


・・・は消えたんだろうか?それとも伏字?なんだろう。

マジックでの手書きだから、もしかしたらここだけかすれて字が消えたのかもしれない。

「・・・はどういう意味なんだろうか?ここだけ消えたのか?

それとも、何か意味があるのかな。」

紫音も考え込んでいる。

でも、このリボンを勝手に取るときっと不審者に思われるだろう。

これは持っていくことはできないかな。

僕たちは、とりあえず、それを写メしてその場を離れた。


渡中さんの所まで戻って、疲れたのでカフェに入って、三人で、座ってその謎を解くことにした。

「はじめての手紙って、一枚目の手紙の事なんだろうな。」

紫音が一枚目の手紙を取り出した。

「この手紙に何か隠されてるのかな。」

僕は手紙をもう一度読み直してみた。

何か見落としているところがあるんじゃないだろうか、そう思ったが、何も思いつかない。

紫音は、生クリームがたっぷりのイチゴの乗ったケーキを頬張っている。

僕はコーヒーを啜りながら手紙をもう一度読み直した。


「ねぇ、この上にある点ってなんだろ?汚れかな?」

紫音が手紙を指でこすっている。

確かに小さいが、文字の上に黒い点がある。目を凝らさないと良く分からないぐらいの点だが、確かにある。

「ん?これ汚れじゃないね。たぶん、さっきの・・・の答はこれじゃないかな。」

紫音が閃いたらしい。

「どういう事?」

「ほら、この点が打ってある文字をつなげると、う・え・のになるんだ。

上野なんじゃないのかな。」

なるほど、上野か。でも上野といってもかなり広い。

グーグルマップで上野の地図を出して確認してみたが、やはり広すぎて特定がしにくい。

「あとはこの数式の様な謎だな。これの意味はなんだろうか」

紫音はまた考え込んだ。時間はもうすぐ17時になろうかという時間だ。

後、1時間しかない。

あと1時間で場所を特定したうえで移動しないといけない。

考えろ、考えろ。

6-Aがハということは...あ.か.さ.た.な.は.....あ!なるほど!!

この数字とアルファベットは五十音の表だ!!

「紫音!!わかったぞ。五十音だ。6-Aが、は行のAつまり1つ目と考えて、ハになっているだろ。だから、4-Cはた行の3つ目だから、ツ。9-Bはら行の2つ目でリ。

で最後は伸ばし棒。つまり、ツリー」

「そうか!じゃぁ、10-Cはワ行の3つ目でン。4-Aがた行の1つ目でタ。

そこに濁点と〇がついてパンダ!!」 

そうか!!クリスマスツリーとパンダだ。

上野とパンダのクリスマスツリーで検索をかけたら、上野駅の商業施設のクリスマスツリーが検索にヒットしてきた。

二人にスマホの検索画面を見せて、言った。

「紫音、渡中さん。これだ。上野駅のパンダのクリスマスツリーだよ」






  

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