第45話影と光の間で

荒川美沙希の妹の視点


私には尊厳する姉がいる。両親から一心に愛情を受けて育った姉。いつも酷いことを言われると溢していた。


いつもあんたばっかり、褒められる。そう言われた。


けど、私には、両親は褒めるだけ。酷いことを言うのは、親がそれだけ目を掛けているからだ。


それだけ毎日見てくれているからだ。そう思うと私はつらくて姉を憎んでしまう。


私にも、心から叱って欲しい。いつもあなたは完璧だと言うけど、違う。毎日努力してるんだ。尊敬する姉に追いつきたいから。


その努力を褒められたことはない。


あんたもやれば出来るのね。ほんとやらないんだから。姉は努力を認められた。その言葉に私はどれだけ傷ついたか。





そんな翌る日、姉に彼氏が出来た。姉は毎日笑顔で過ごす様になった。


姉の笑顔は、まるで太陽の光のように明るく、部屋中を温かく照らしていた。 


瞳が、朝露に輝く花のように純粋で、姉が微笑むたびに、その優雅さは風に舞う桜の花びらのように、私の心に触れ、癒やしてくれた。



姉の笑顔が、彼氏のおかげで輝いていることを知ったとき、私の中に新しい感情が芽生え始めた。


それは、姉のすべてを私だけのものにしたいという、欲求だ…私の心を支配し、思考を揺さぶり始めた。その美しい笑顔を独り占めにしたいという思いが日に日に強くなっていくのを感じた。



お姉ちゃんは、努力の天才だよ凄いね。私がそう言うと、怒られた。

心からそう思って言った。


「それって嫌味? 辞めてよね。天才のあんたに褒められると、ムカつく。努力の天才で…本当の天才に落ちこぼれの私の何がわかるの?」


ため息混じりに呆れ顔で言われた。



言われて複雑な心境になった。お姉ちゃんだけだ…努力の天才って私のことを見てくれてるのは。それでもお姉ちゃんが、私に冷たくしていることにショックを受けた。


「私より、努力の天才じゃん。お姉ちゃんこそ私の何が分かるの?」


姉に言い返した。けど、それは姉の逆鱗に触れた様だった。



「無駄な努力の天才って訳? ふざけないでよ!  

もう…あんたと喋る苛々する。うんざり!」

そう言って姉は私に背中を向けて、自分の部屋に入って行った。


その背中が巨大な岩壁に見えた。登っても、永遠に到達出来ない。そう思わせるほど、姉の偉大さを知っていたからだ。


無駄な努力それは、勉強の事を言ってるのだろう。でも私が言ったのは、お姉ちゃんの努力は行動力だ。


思った事をすぐに実行する。私が絵で金賞を取ったら、すぐに姉も絵を真剣に始めた。


そんな尊敬する姉の彼氏に私も興味が湧いた。どんな人なのか? 


素敵な人なのだろうか? 姉を虜にするほどの人なら、王子様の様な人か…そんな妄想に私は取り憑かれた。


それから、私は、姉の彼氏にアプローチを始めた。もちろん最初は、単なる好奇心からだ。


そうして姉の彼氏と話しをしていると、彼の方からデートに誘われた。


私がボディタッチや、好意があるふうに見せたからだろう。


彼の視線があわよくば、と言う下心が垣間見えた。


私に興味を全く示さず、姉しか見ない。そんな人を期待していた。ただ試してみただけだ。


それが結局ずるずると関係を持つに至った。


私は拒否も出来た。けれど、姉に勝てたと言うその感情が、私を突き動かした。お姉ちゃんへの顕示欲がそうさせたんだ。



それから、姉の彼氏が私と付き合うから、別れようと言った。

私はそれを聞いて姉に勝つ誇った表情で、そう言う事だから。と伝えた。


けれど私は、どうしてそこまでしたのだろうか? 


姉への嫉妬、家族の愛を取られた。競争心…姉の愛を取った男から取り戻す為。


それもあるけど、姉に相応しくないからだ。姉の目を覚ます為にしたんだ。だからそのうちきっと私に感謝するはず。



それなのに…あれ以来お姉ちゃんは、私と口を聞いてくれなくなった。


つらい…そして私は今日まで毎日考えていた。

そして後悔した。私は自分を正当化してただけで、姉に酷い事をした。


後悔が毎日波の様に押し寄せて、私の心を押し潰した。

謝ろう。そう思って今も謝れずにいる。





荒川美沙希の視点


「随分暗い絵描いてるね。」

まーちゃんが驚いて言う。


骸骨の絵。そう言う気分なの。そう今の私の思いを込めた絵だ。


すみません、私体調悪いので早退します。

そう嘘を言って、部活を抜け出した。


そして私は、今まーちゃんのベットの下に居る。彼の目の前で死ぬつもりだ。

合鍵で誰もいない時を狙いすまして、この部屋に入った。



私はまーちゃんの記憶に永遠に残る。それが私の復讐。きっと後悔するに違いない。



盗聴がバレた。もう彼の信頼は、なくなった。自業自得とはいえ、義妹と浮気しようとした、彼も悪いのよ。



驚くだろうな。ふふ、義妹との仲もこれで終わり。それでも付き合い続けるなんて、しないわよね。しても私のことが思い出されて、気まずくなるはず。


冬だから、このベットの下でも耐えられる。

夏だったら、まーちゃんに会う前に気絶してたろうな。


そう考えていると、まーちゃんが、部屋に入って来た。


今だ! そう思っていたら、まーちゃんの義妹の声がした。なんで? 一緒に入って…くるの?


「お兄ちゃん、ふふ今日約束してたもんね。」


「ああ、今日西条来るからその前に、楽しまなきゃな。莉菜ちゃんと、するなんて罪悪感がまだあるよ。」


「お兄ちゃんもう、覚悟決めて。それから彼女さんにもちゃんと、別れ伝えた?」


「いや、別れ話ししたら、莉菜ちゃん傷つけるんじゃないかと思ってさ。自然消滅の方が良いかなって。」


「ひどーい。それじゃ彼女さん可哀想だよ。ちゃんと別れ話しこの後してね。私なら大丈夫。ちゃんと話し合いするから。」


「分かった。それより、莉菜ちゃん…好きだ! ずっとこうしたかった。」


何が起きてるの? 幻聴が聞こえる。私ベットの下で気絶して夢を見てるの? 

違う…現実だ。


ちっくしょう! 許さない…許さない。

唇を噛みながら私は怒りに震えていた。

私はナイフを取り出していた。

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