第44話揺れ動く心理
「なるほど…それは怖いね。分かった、明後日行くよ。」
僕は佐野から事情を聞いた。ヤンデレの彼女に身の危険を感じた。盗聴機まで仕掛けられた。
そう説明された。
「助かる。親に相談するのが1番なのは分かってるんだけど、全部根掘り葉掘り聞かれるから、しずらいのよ。」
「僕もそうだったな。中々気軽には相談出来ないよね。一応気をつけて。もしその子が来たら、僕も話してみる。」
「ありがとう親友。じゃあ明後日!」
そして佐野と通話を終えた。
さてと、円香ちゃん外で待たせてるから、迎えに行こう。
父さんと言い争いになると思うから、家で待っててと伝えたけど、僕の側を離れたくないとの事で…外で待つと円香ちゃんが提案した。
寒い冬の夜なのに。ちょっと可哀想だったな。
僕はドアを開いて、円香ちゃんにお待たせと伝えた。
寒かったでしょ? さ、早く入って。
「寒かったですぅ。先輩温めてください。」
分かった、おいで。僕は手招きした。ドアを閉めてから、彼女が抱きついて来た。
「ごめんね。寒かったね。ヨシヨシ」
僕は彼女の髪を撫でながら言う。
「はぁ、先輩の温もりを感じます。あぁ先輩の匂いがやばいです。」
円香ちゃんが鼻をぴくつかせて、匂いを嗅いでいた。
「匂いは余計だよ! まったくせっかくのいいムードだったのに。」
ムードを壊され僕は、がっかりした。
「円香ちゃんはそういうとこ無かったらほんと、天使みたいなのになぁ。」
さりげなくそういうことは辞めて欲しいと、暗にいう。
「先輩、すみません。身体が勝手にしてしまうんです。駄目な女ですね。私って。」
「卑下するとこもだね。円香ちゃんは、すぐに、自分を下げる様なこと言うから。駄目な子と僕は付き合ってる事になっちゃうよ? 円香ちゃんはね、凄い子だよ。」
僕は彼女の卑下癖も治ると良いなと思って言う。
「はぁー、先輩好き好き。」
円香ちゃんが何度もほっぺにキスをした。もう父さんに見られたら恥ずかしいよ。
「僕も好きだ。けど、場所が場所だから、また後でね?」
「ふふ、先輩、私は構いませんよ? どこまでも先輩にくっついて行きます。来世でもついて行きます。」
円香ちゃん…冗談も言うように…いや笑って言ってるけど、声のトーンは真面目だな。
「円香ちゃん、いや、僕が死んだらさすがについてこないでね。ぼくの分まで生きて。自殺とかしないでね。」
「嫌です。ついて行きます。そもそも先輩が死ぬとか縁起でもないこと言わないでください! そんなこと言われると監禁しちゃうかも。」
ヤンデレって言われるだけあるなー。監禁…本当にするんじゃないのか? さすがにもう言わないでおこ。
僕とデート中に最近はゴルフ持ってるし。
暴漢に襲われたら使うみたいなこと言ってたけど…行動と言うことがどんどん激しくなってないかな。
「円香ちゃんって…過激だね。もっと普通の女の子みたいな感じになってくれれば、僕も気が楽になるんだけどな?」
彼女の顔を見て言った。
どう反応するか、様子を伺った。
「普通の人とやっぱり違いますよね、私。なら先輩が気が楽になる様に頑張りますので、色々教えて下さいね。」
もちろん。その時父さんの呼ぶ声がした。そろそろ部屋に行こうと円香ちゃんに言った。
椅子に座って、僕は円香ちゃんを父さんに紹介した。円香ちゃんが変なこと言わないか? それが不安だったが、今は逆だ。いつもの父さんじゃない。
不倫の秘密を暴いたからだろうか? それともこれが、本性なのだろうか?
そう考えていると、父さんが意味深な笑みを浮かべた。それを見た僕は、嫌な予感が走った。
やっぱり、円香ちゃんに何か言うつもりだろうか?
「青木円香です、お久しぶりですね。
西条先輩のお父様よろしくお願いします。」
円香ちゃんが椅子から立ち上がって挨拶した。
「ああ、そんな畏まらなくて大丈夫。座って。」
父さんが手を振って言った。
「それにしても、青木か。俺の浮気した相手の沙也加とそれに手を出した青木の娘がねぇ。西条と付き合うとは、驚きだ。」
「父さん! 彼女に失礼じゃないか。そんなこと今言わなくても。」
僕は怒って言った。
父さんは、何故そんなことを言ったんだ?
「いいだろ? 円香ちゃんだって知ってたろ? 父親が不倫してたのはさ。病院で看護師達が噂してて有名だったからな。」
「父さんどう言うつもりでそんなことを言うの?」
僕は堪らず質問した。
「大丈夫ですよ、先輩。私そう言うことは、どうでも良いので。先輩しか興味ないので。父が何をしようが、どうでも良いので。」
彼女は僕を安心させる為だろう。笑顔で言った。
「ほー西条以外は興味ないか。どう言うつもりかって? 大事な息子の彼女だろ? お前が同棲してる子がどんな子か知りたくってな。滝川あゆみの二の舞みたいな目に遭わない様に、試験してるのさ。」
「そんなこと…僕の彼女を何ためそうとしてるんだよ。大きなお世話だよ。」
「お父様、試験に合格したら、良いことありますか? 先輩私頑張ります。合格できる様に。」
円香ちゃん…君は天然だったのか?
いやいや、そんなの合格しなくていいから。
「合格したら、そうだな。大学で同棲したいんじゃないか? 認めてやるぞ。どうだ?」
「やります!」
円香ちゃんの声が部屋に響くほどに、大きな声だった。
「良い返事だ。じゃあ質問だ。息子が浮気したらどうする? 別れる? 円香ちゃんは、浮気しないか?」
一体? 何が目的なんだろ? まさか…父さんも僕のヤンデレじゃないだろうな?
そんな訳ないか。
「先輩が浮気したら、凄く怒ります。けど、別れないです。その浮気相手をボコボコにしてしまうかも。私は浮気しません! 西条先輩以外に興味ないので。」
ボコボコにやばい! 円香ちゃん暴行犯になってしまう。まぁ僕も浮気しないけど、思い込みで疑われるとまずいな。
「合格だ。聞いたか? 良かったな。浮気しても良いそうだ。浮気したぐらいで、別れる様な女じゃないってことだ。」
それのどこか良かったのか? 僕には父さんの言ってる意味が不明だった。
「浮気しても良いなんて言ってないです! 合格貰えたのは嬉しいですけど。」
円香ちゃんそうだよね。言ってやって。
しかし…浮気? そうか!
円香ちゃんに試験とか言ってるけど、僕に浮気したぐらいで父を責めるなって暗に言ってるのか。
免罪符でも欲しいんだろうな。酷い人だ。けど、人間臭いって言うのか。ほとんど、好きに生きてるそんな感じがする。
でも…あゆみに浮気された復讐したかって僕に聞いた。浮気自体を正当化したい訳じゃないのだろうか?
もしかしたら、父さんも浮気されたことがあるのかも。それは、僕の母ではないだろう。それより前に。
だから、円香ちゃんに浮気のことを聞いたのかもしれない。
深呼吸をして、僕は気を取り直して、円香ちゃんに父さんが変なこと言ったのを謝って、料理を食べようと提案した。
「明後日、佐野が来て欲しいって言うから、僕行くよ。」
彼女に伝えると、私も行きますからね。
予想通りの返事が来た。
もしかしたら危険かもしれない。それを言うと僕の身を案じて、反対するかも。なので何も僕は言わなかった。
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