第43話親子の葛藤

西条の視点


僕は、久しぶりに自分の家に帰った。父さんと、大事な話があると伝え、円香ちゃんは、外で待っている。


父さん、浮気したんだってね。中島さんのお母さんと。それで母さんが気に病んで、事故を起こしたって。


本当なの? もしそれが本当なら、父さん最低だよ。



「なんだ、久しぶりに帰って来たから喜んだら、そんな話しにきたのか。中島アンナとは、火遊びだよ。ホステスと遊んだだけ。浮気だなんて大袈裟な…事故を起こしたのは、母さんの運転が荒かったからだろ。」



「俺のせいにされたら叶わんよ。第一浮気なんてモテるんだからしょうがないだろ? お前もモテるんだから分かるだろ? 色んな女連れ込んでるもんな。滝川あゆみ連れて来たら、また別の女外にいるだろ?」


暴論だ。僕はその言葉に心で泣いた。どうしてそんな母さんに薄情な事を言えるんだろう?



「運転が荒いかは、僕には分からない。けどさ、父さんの浮気の影響もあったかもしれないんだよ? 母さんと中島さん達に申し訳ない気持ちはないの?」


「ない! 俺のせいな訳ないだろ。人殺しの母親庇うなんて、お前はなんて馬鹿なんだ。妻がやった事に対して中島さんに申し訳ないから離婚した。それでお終い。あとは妻と、中島さんの問題だ。」



…全部母さんの責任にして、父さんが浮気しなければ事故は起きてなかったんだぞ? 

どうして自己中的に考えられるの。


僕は、父さんがここまで非道な人とは思わなかった。


「一応聞くけど、中島さんは、父さんの子じゃないだろうね? 他にも浮気してた人いたんでしょ?」


「はは、バレてるのか。どうやって調べたんだ?

俺の子かって中島レイナのことか? 安心しろ。それは違うから。大川沙也加と浮気と言うか、まぁ完全に不倫してたな。そいつとは、子供作ったぞ?」


父さんは、笑いながら答えた。その光景に僕は絶句した。

今まで一緒に暮らしていた人はどこに行ったんだろう? 今目の前にいる人は誰?


「どうしてそんな事したの? 母さんに申し訳ないって気持ちはないの?」


僕は過去の浮気されたことが思い返された。でもまだ僕は結婚してた訳じゃない。母さんの気持ちが今は痛いほど分かる。


絶望感でいっぱいだったろう。もちろん事故を起こした事を擁護する気はないけど。


「正直言うとな、まったくない。ただ、お前には申し訳ないと思う。だから、今は女遊びしてないんだぞ? お前のために働いて、我慢してるんだ。」



「じゃあ僕には、愛情があるって事? なら、もう人の奥さんに手を出さないで欲しいよ。」



「もちろんお前のことは愛してるぞ。俺とは全然性格違うところが、気に入ってるんだ。多分爺さんに似たんだな。聖人みたいな人だったからな。」



「お爺ちゃんか。とにかく、言いたいことはそれだけ。もう父さんは、変なことしないでくれれば良いよ。」


「ふん、お前だってそのうち俺と同じ浮気しまくるに決まってる。モテるとな、浮気する奴はクソ野郎と思っててもな? 変わるんだ。それが人間なんだ。」



「僕は父さんみたいには、ならないよ。浮気されたら、その人は、傷つくじゃないか。自分だけじゃない。周りの人も大勢迷惑かけるんだ。」


僕は父さんの目をしっかりと見ていった。

父さんの考えを変えたい、その一心で、僕は語った。


「だから? お前さては、ははーん、そーいうことか。読めたぞ、お前、人を真剣に好きになったことがないんだ。それでそんな綺麗事言えるんだな。」


父さんが顎を触りながら、さも僕のことを見透かす様に言う。



「意味が分からないよ。僕は、円香ちゃんのこと真剣に好きだ。だから彼女を傷つけるような、浮気とか、したくないって思う。父さんとは違う。父さんこそ、人を真剣に好きになったことないんだよ。」


僕は父さんに呆れながら言った。開き直ってそんなどうしょうもないことを僕は、耳も貸したくない。



「ははは、お前いつの間にそんな事が言えるほど成長したんだ? だけどな、お前の言ってることはズレてるぞ?」


「その女より良い女が現れたら、それが真剣な恋になる。俺の血が入ってるんだお前には。そのうち分かるさ。俺の言ってることがな。」


済ました顔で父さんが言う。



「円香ちゃんより素敵な人が現れる? 僕はそうは思わない。血がどうとか言ったけど、遺伝子のせいにして、父さんのやらかした行いが正当化されると思ったら大間違いだよ。」



「そうかい? 滝川あゆみの時はどう思ってた? 

俺はお前が滝川あゆみと結婚して社長になると思ったけどな。そんなもんだ。すぐに考えが変わる。」


父さんは、全然分かってない。僕があゆみと別れた理由が。


「父さん、そのあゆみと別れたのは、あゆみが浮気したからだよ? 目の前でキスをしてたんだ。浮気された痛みを知ってるから、僕は、浮気をしないんだ。」


僕は力強く語った。僕は、父さんが納得してくれるまで話そうと思った。絶対に僕の信念は曲げない。


「浮気されたのか? それはつらかったな。復讐してやったか? …まぁ俺から言わせると、浮気されるお前も悪い。どうせ連絡とか、コミュニケーション省いたんだろ?」


「確かにそうだけど、それはあゆみがゴムに穴開けて怖くなったからだよ。それは僕も悪いって言うのか?」



「そいつは別れて良かったな。でもゴムに穴開けるぐらい追い込んだんじゃないのか? まっ、別れた女なんてどうでも良いな。はは、それより飯食わないか? 外にいる円香って昔お前が遊んでやった女の子だろ?」



「そうだけど、急に話変えないでよ…ご飯食べたらもう帰るよ。」

能天気な父さんに少し疲れて僕は言った。今日はもう…ん? 電話だ。僕はポケットからスマホを取り出した。佐野からだ。


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