第36話踏み越えた境界線

お兄ちゃんと私が、声がした方向を見た。

「なんだ、西条かよ〜」


「みーちゃんかと思って、心臓が止まりそうだったわ。脅かしやがって。」


お兄ちゃんが西条と言った人に文句を言った。

私は別に彼女でも良かった。私たちのキスをみて、別れを切り出して欲しい。


「そんなに驚いてどうした? 隣の子は?」

西条さんが不思議そうに私を見る。


「ああ、紹介するよ。この子が妹の莉菜ちゃん。マジで円香ちゃんに似てるだろ?」

私に手を向けて、お兄ちゃんがドヤ顔で言う。

西条さんの隣にいる人の事かな。私に似てるって言うのは。


もーお兄ちゃんとキス出来そうだったのに邪魔して〜。私は腹を立てて、頬を膨らませた。


「ごめんね、莉菜ちゃん。お兄ちゃんとのデート邪魔しちゃって。」

西条さんが微笑んで言った。その笑顔は、とても優しそうで、私の怒りを鎮めるほど素敵だった。


胸がドキッとしてしまった。私…中高女子校だったから、男の人に免疫ないのかな? 

なんか不思議な気持ち。



お兄ちゃんの友達だもんね。素敵な人に決まってるか。


「大川莉菜です。今度お兄ちゃんの学校に転校するので、その時はよろしくお願いします。」

私は西条さんに頭を下げて言う。


「こちらこそよろしくお願いします。わざわざ転校までするなんて、お兄ちゃんのこと好きなんだね。」

西条さんがニコニコな表情を向けて言う。



あーやばいこの笑顔。そう思って上目遣いで西条さんを見ると、後ろにいる女性に気がついた。


凄い私のことを睨んでいた。うぉ〜これが、嫉妬の視線かー。大丈夫ですよ! 私お兄ちゃん一筋なので。そう心で呟いた。


「莉菜ちゃんこっちの西条にくっついてる、ヤンデレ女子が青木円香ちゃん。円香ちゃん一応言っとくけど、妹に何かすんなよ?」


お兄ちゃんが紹介してくれた。ヤンデレ女子怖い…お兄ちゃんの彼女見たいな人が、周りに2人もいるなんて。


世も末だ。


見た目は、可愛いアイドル見たいな女の子だけど…お兄ちゃんが言うなら、刺激しないよう気をつけなきゃ。


「青木円香です。西条先輩、私のいる前で、女の子と仲良く話さないでください。ほんとっ嫌なので。」


挨拶をして、すぐ西条さんに嫌そうな表情で言う。彼女の声がスカイツリー内に響いた。


周りもその声に驚いていた。私も少し何この人と驚いた。


場の空気が冷え込むのを感じた。西条さんも困った表情を隠さなかった。


うーんでも私もお兄ちゃんが、別の女の子と仲良く話してたら、嫌だ。

そう思って私は円香さんに、言う。



「すみません、円香さん。西条さんと仲良く話して。気をつけます。」


私は円香さんに謝罪した。


「やっぱり! 仲良く話してた。先輩私のこと捨てる気ですか?」


うぉー火に油を注いじゃった。そんな考えを浮かべた。



「わりぃ、うちの妹天然だからさ。仲良く話してんじゃなくて、普通に話してただけだから、円香ちゃんが気にするほどじゃないよ。大袈裟な反応するから、西条困ってんじゃん。」


お兄ちゃんが私のことを完璧にフォローしてくれた。やっぱりお兄ちゃんは、知的で優しくて、素敵だ。


涙が出そうになるくらい、私のことをいつも、配慮してくれる。


円香さんがお兄ちゃんの言葉を聞いて、私に向いていたけどすぐに、横にいる西条さんに顔を向けた。


その速さに、私は少し表情が緩んだ。そんなに好きなんだ、多分言うことは予想出来る。

きっと本当ですか、先輩! とかね。



「本当ですか、先輩! 私の勘違いで先輩を疑うなんて…私駄目だ。」


…そっくり! お兄ちゃんの彼女と一緒だ。感情がすぐにころっと変わるところが。


良くついていけるね。お兄ちゃんも、西条さんも偉いな〜。


ヤンデレって感情のコントロールが出来ないんだね。可哀想なのかもしれない。


円香さんも好きでそうなった訳じゃないんだよね? 心で聞いた。西条さんが宥めて、この場は、雰囲気が和らいだ。


「ごめん、佐野と話したいことあったけど、この状況じゃ無理そう。」


「ああ、そうみたいだな。なんなら今度俺の家で話そう。」


2人がまたなと言って、西条さんと円香さんが去って行った。



「西条さんって素敵な人だったね。私笑顔向けられてドキッとしちゃった。」



「なんだと? まさか莉菜ちゃん…西条に惚れたんじゃないだろうな?」


心配そうな表情で、お兄ちゃんが言う。


「ふふふ、惚れてないよ。お兄ちゃんやきもち妬いたかな?」



「お…おい揶揄うなよ。違うぞ俺は…」そう言ってお兄ちゃんは暗く俯いた。



「お兄ちゃん…可愛い。」そう言って私はお兄ちゃんの頬に手を触れた。


お兄ちゃんの温もりを肌で感じる。お兄ちゃんの澄んだ目を見て、胸がキュンと締め付けて来て、少しすると、ドクンと高鳴りを感じた。


「莉菜ちゃん…」

お兄ちゃんの癒しの声が聞こえた。お兄ちゃんも私の目を見つめている。


場の雰囲気が静かになった。今度こそ2人だけの世界もう邪魔は、させない。


私はお兄ちゃんにキスをした。

ファーストキス…もう自分から行かなきゃ後悔すると思った。


「私が無理矢理だから、浮気じゃないよ。」

そう私はフォローした。

もう…私たちは、兄妹の関係から先に行くことになるんだろうか?


それとも拒絶されるのだろうか? お兄ちゃんの目を見つめた。


その時お兄ちゃんが顔を近づけて、私にキスをした。


「無理矢理だと? 違う。同意だ。」

そう言って私は、手をお兄ちゃんの首に回して2人で再度唇を重ねた。

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