第35話義兄への想い
大川莉菜の視点
痛っ。髪の毛を掴まれ、私は恐怖を感じた。
これから殴られるのかと、手足が震え上がった。
けど、お兄ちゃんがすぐに彼女に辞めるように言って、髪から手を離した。
お兄ちゃんが怒った。私の為に。それが怖さよりも嬉しさが勝った。
堂々と彼女に臆する事なく立ち向かってくれた。それが怖さを吹き飛ばしたからだ。
「ごめんなさい…まーちゃん。私…馬鹿なことをしました。
妹さん、ごめんなさい。」
へ? なんで急に大人しくなったの? お兄ちゃんが怒ったからってこんなに変わるもん?
不気味すぎる。 空がだいぶ暗くなって来た。時間の経過を感じる。
デートする時間まだあるけれど、それでも苛立ちは隠せなかった。
「私ね、妹に前好きな人を取られて、それでまーちゃんの妹さんとその時のことが重なって。」
「気持ちは、分かるけど、妹には、2度と暴力振るわないで欲しい。」
お兄ちゃんが言って、彼女は頷いた。
「私今日はもう帰ります。こんなことして今更なんだけど、まーちゃん後で、相談に乗って欲しいの。」
そう言ってお兄ちゃんの彼女は、私たちの前から去った。
「ねぇ、お兄ちゃん。あの人急に態度変えたりして、変だよ。別れた方が良いよ。」
そうしないと、お兄ちゃんが振り回されると心配して言った。
「もーそれは莉菜ちゃんが、いらないこと言うからでしょ?」
両脇に手を当て、子供を叱る様にお兄ちゃんは言った。
確かにどうして言ってしまったのだろう。
それはきっと、嫉妬したからだ。
本当に子供みたいだった。軽率ではあったけど、2人だけの世界から邪魔された気持ちがその言葉を言わせたんだ。
私を守ってくれて、彼女を叱ってくれた。それでも私も後で叱ってくれる。
こんな優しくて頭良いお兄ちゃん、惚れちゃうよ〜。
「確かにそうなんだけどさ、私に暴力振るって、お兄ちゃんが言ったらすぐにシュンってなって落差が怖いよ。」
怒ったり、大人しくなったり忙しい人。それが私の印象だ。
お兄ちゃんが好きでそうなったなら、義理とはいえ、私に手を出すだろうか?
きっと感情を自分じゃ抑えれない人なんだと私は考えた。
だから、それが私に怖さを感じさせたんだ。
「もしかしたら、ヤンデレってやつかもしれないぞ。円香ちゃんみたいだな。青…ああそうだ聞きたい事あったんだけど…やっぱり遊んだ後に聞く。」
お兄ちゃんが含みのあることを言う。
「ヤンデレ? メンヘラじゃなくて?」
私は、ヤンデレってあまり詳しくなかったから、聞き返した。
「はは、どっちかな。それより、暴力また振るってきたら俺に言えよ?」
「ありがとうお兄ちゃん。また暴力振るってきたら、怖いな。」
けど、別の想いもあった。
お兄ちゃん…あの人と別れて、私と付き合えば良いよ。
そうすれば…でもそれは、まだ言えない。
私はお兄ちゃんに抱きついた。怖い思いをして、お兄ちゃんの温もりが欲しかったから。
ほんと、私は甘えん坊だ。でもお兄ちゃんにだけ甘える。
「莉菜ちゃん…一応俺も男だからさ。そんなに甘えられると意識しちゃうんで。」
良いよ…意識して欲しい。私を女として見て欲しい。
お兄ちゃんとは、短い付き合いだけど、まるで一年いるかの様に私には深い愛情がある。
私は目を瞑り、キスをねだった。
「莉菜ちゃん…いや、駄目だ。ファーストキスなんだろ? 奪えないよ。それにさ、まだ彼女が何処かで見てるかも。ってか俺彼女持ちだぞ。」
顔を赤らめてお兄ちゃんが言った。キスをしたくない、そう言う訳じゃない。そう言うニュアンスを含んでいた。
「いいの、むしろお兄ちゃんに奪って欲しい。けど確かにここでするのもロマンチックじゃないね。今回は諦める。」
私は感情を抑えられる。お兄ちゃんの彼女とは、違う。そう思って私は引いた。
それでも私はしょんぼりとした。それを見たのだろうか? お兄ちゃんが額にキスをしてくれた。
お兄ちゃん優しすぎる。私に配慮してくれた、それに私は、ますます好きになった…ううん、そうじゃない。違う、私はもう愛しているんだ。
頬が熱くなっていくのを感じた。
「額なら…な。その方がロマンチックじゃね?」
お兄ちゃんが恥ずかしがって言った。
「うん、ロマンチックだね。」
私はお兄ちゃんに同意した。
「そろそろ行くか。でも暗くなって来たから場所変更して、スカイツリー行かない?」
お兄ちゃんがそう提案した。スカイツリーで…キス…出来るのかな? ロマンチックだけど。私の頭はキスのことで頭がいっぱいになった。
「うん、行こう。」
そしてお兄ちゃんと電車に乗って、スカイツリーに来た。
入り口のロビーに入って受付でチケットを買った。進むんで行くと壁面装飾がキラキラ光って神秘的な雰囲気を醸し出していた。
「そうだ。言っとくけど、みーちゃんが態度急に変えたの俺が怒ったからだと思う。だからそんな怖がる事ないよ。」
私が怖がってる事を心配して、お兄ちゃんが説明した。
私は、お兄ちゃんに頷いた。
今は…あの人のこと考えたくない。
展望回廊から見える街並みが、電気の光が夜の暗さでとても幻想的で瞳に映る。
お兄ちゃんは、私のことどう思ってるんだろう? 分からない…妹として好きなのか、1人の女性として好きなのか。でも後者なら、彼女と別れるよね。
それとも複雑な気持ちなんだろうか? どっちもあってお兄ちゃんも分からなかったり?
なら私が押しまくるしかないかな? お兄ちゃんの気持ちを掴むには。
多くの人が私達の近くを通る。カップル連れを見て、私は羨ましいなと感じた。
「お兄ちゃん、景色綺麗だね。ロマンチックだよ?」
また私は抱きついて、キスを迫った。
「莉菜ちゃん…また…彼女いるって言ってるのに。ここでキスしないの男じゃないよな?」
独り言か、私に言ったのか。分からないけど、私は目を瞑りながら、2回頷いた。
遂にお兄ちゃんとキスだ。心臓の音が聞こえてくる。激しい音…その時、佐野と、お兄ちゃんを呼ぶ声が聞こえた。
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