第32話甘い時間、温もりと葛藤

「パフェ美味しいね」

みーちゃんが上目遣いでうっとりする様に言った。


チョコとバニラが織りなすパフェだ。プラスチックの容器にふんだんと盛り付けたれてる。


香りが匂って来て、口がチョコの甘い味で広がった。


「うん。甘くて美味しい。今の俺たちの甘い関係の様だな。」


「うん、ほんとにね。溶けちゃいそう。私もパフェも。」


みーちゃんが目を瞑り、本当に溶けそうな表情をしていた。


ふふ、まったくこいつは。可愛いやつだなー。

俺の表情がにやけてしまう。それは誰にも止められない。



彼女って良いもんだ。今までの日常がなんだったのかと思わせてくれる。



路上に大勢の人達が行き交う。信号を歩いて行くサラリーマン。ネクタイをいじりながら進み後ろ姿になって、その姿がビシッとしてカッコ良かった。



あの人には家庭があるのだろうか? 彼女と幸せな家庭を築けたら良いなと、ふと考えた。


「何見てるの?」

彼女が横から聞いて来た。


「うん? 結婚したら、スーツ着て仕事するのかなと思ってね。」

俺は彼女に伝えたが、それは理解できないだろうなと感じた。


「ふふ、もちろん私とよね? 他の子と結婚は許されないからね?」

彼女が甘えて来て、俺の手に抱きついて来た。


「当たり前だろ? 他にそんな人いないから。」

俺は彼女を見て言った。


「やったー! 婚約決定。まーちゃん大好き。」

みーちゃんがはしゃいで言う。



2人で楽しく遊んだ後、帰り道にみーちゃんとの楽しかった余韻を思い浮かべた。共有した笑い声や、彼女の柔らかい手の感触、甘いパフェの味が頭の中を巡る。



そんな幸せな余韻に浸りながら、家に帰宅した。


家の玄関を開けた時、一日の終わりが少し名残惜しく感じられた。


「お兄ちゃ〜ん。」

莉菜ちゃんが俺が帰るとすぐに出迎えに来た。


彼女の無邪気な笑顔を見ると気分が安らぐ。


その笑顔には何か不思議な力があり、俺の心の中の激しい感情が静まり、穏やかな心地に包まれる様だ。


「お兄ちゃん、お話しよー。」

妹が俺の手に絡みついて来た。


ん? なんだよこれは…俺モテ期が来てるのか?


「ううん、何か良いことあったん?」


「お兄ちゃんに会えた事が良いことかな。えへへ。」

莉菜ちゃんも…みーちゃんの様に幸せそうな表情で俺を見つめて来た。



「なんで俺と会えた事が良いことに入るのよ?」

俺は疑問に思い聞いた。


「もー、言わせないでお兄ちゃん。」

莉菜ちゃんが両目を手で塞いで言う。


どーいうことった? 


「お兄ちゃんに会えてね、胸が痛いの。」


そいつはまずいこと言ってるぞ、この子。


「心臓が…そんなことないよな。胸が…ね。」

恋してるとかいう意味だよな。そんなバカな…冗談きついぜ。



「うん、心臓が悪いとかじゃないよ。きゅんきゅんするの。」

くっ…可愛い。



感情に浸る場合でもないんだよな。色々聞かなきゃいけない。青木の事とかも。しかし家で話すのは、沙也加さんに聞かれたらまずい。


「ねーお兄ちゃん、こっち座って。」

莉菜ちゃんが、ダイニングソファに座りながら、ソファに手を叩いて、俺を呼んだ。


俺はそれに応えるよに座った。緊張するんですがね? 

参ったな。俺も胸が痛いというか、ドキドキするというか。



「学校で男の子いないからさ、頼りになるお兄ちゃんに甘えて良い?」


俺は何度も頭を上下に振った。


「もちろん、兄だからな。甘えたきゃ甘えろ。」


一応彼女いるとは伝えてあるんだ。甘え過ぎる事はないよな?


「ありがとう、お兄ちゃん。ねぇ明日とか、私と遊びに行かない?」

肩に寄り添って妹は言う。


ほっぺの感触が手に届いて温もりを感じた。


「おう、俺も話したい事あるからさ。良いぞ。」


あー気づいたが、彼女に見られたら文句言われそうだな。まぁ義理妹とちゃんと伝えれば平気か。


近いうちに義理妹出来たって伝えないとな。


そういや親はお出掛けか? デートしてんだな。



お兄ちゃん眠くなってきちゃったよ。俺の手に重ねてきて言った。

眠そうな顔してるなー。


はぁ〜しかし距離感近いって。女子校にずっといたから? それとも俺が好きだから?  


多分後者か。可愛いな。妹と思えば良いんだ。


「眠いならそのまま寝て良いぞ。後で布団に連れてく。」


「おお、お兄ちゃん布団に連れてく? まさか…一緒に寝る?」

妹がちょっと離れて俺に言う。


「まさか、そう言う意味じゃない。」

勘違いされる様なこと言ったと、後悔した。



「どっちでも良いけどね。じゃあお言葉に甘えさして貰うね。」

言って妹は俺に体を預けた。



…毎日こんなに甘えられたら…心の葛藤に耐えられるのか?


ああ…ちきしょう。別のことを考えよう。


あれっきり西条からは、連絡来てないな。

円香ちゃんに取られたらか? 


…莉菜ちゃんの温かい温もりで俺まで眠くなって来た。


俺は莉菜ちゃんを見た。穏やか顔で寝ていた。もう少ししたら、布団に連れて行こう。


おやすみ莉菜ちゃん。

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