第31話洞察の後の甘い恋愛

まーちゃん遅かったね。


うん、みーちゃん、青木のヤローと長話しててさ。

俺はみーちゃんに遅れた理由を言った。もちろん青木の話は言えない。


彼女なのにな。こういう話は、流石にしないのが正解だよな。


あっー。俺重要なこと聞き忘れてた!  

青木父親の不倫、なんで知ってたんだ?


くっそ、大事なことじゃねーか。

うっかりしてたぜ。


でもいま、青木のやつ、部活中か。電話には出れんか。


西条に前から思ってた疑問がチラつくな。


なんで西条は中島レイナを中島さんって呼ぶんだ? 

普通幼馴染で、仲良しならさん付けでは呼ばないんじゃないか?

 

何かあるんじゃないか。はぁ疑問が浮かぶな。すぐに解決しなければ。


「みーちゃんちょっと電話してくる。」


「えー。女じゃないよね?」

不機嫌な表情で彼女が言う。


「男友達。西条に電話する。」

俺は言った。


「なら良いけど。早く戻って来てね。」

寂しそうに言うな。そう思った。


「もしもし、俺佐野だけど。」


「西条先輩なら今勉強中なので、切りますね。」


なんだ円香ちゃんか。うぜーな。


「いや駄目だろ。早く西条に変わって。」

円香ちゃんと声が聞こえた。


「もしもし西条です。佐野?」


「あー。西条、ちょっと聞きたいことがあってさ。お前なんで、中島レイナを、中島さんて呼ぶの? 幼馴染だったんだろ?」


流石に仲良かったは、円香ちゃんが聞いてるから、躊躇いがあり辞めた。


「うん、母親が中島さんの姉引いちゃったでしょ? だから、負い目があってさ。それからレイナ呼びから中島さんになったんだ。」


なるほど。複雑な理由だが、単純な理由でもあるな。


さて切るかな。


「それじゃあ、西条またな。」

俺はそう言って切ろうとしたが…西条の次に言ったことに、どきりとさせられた。



「なぁ青木の話おかしくなかった?」


「なにがおかしいと?」


「僕の父親と、見知らぬ女性が会ってたなら、何故青木は、沙也加さんの写真を見せてとか言わなかったのかなって。多分、顔見知りだったから、それを言わなかったんじゃないかなと。」


西条が言った。さすが…この男はバカじゃない。洞察力があるな。


「そりゃ子供の頃見たから、気がつかないと、思ったんじゃない? 普通昔一回見ただけだから見ても無理と思ったとか?」


俺は、誤魔化した。西条に嘘は付きたくないが…やむを得ない。


「もしかして、その人、中島さんのお母さんだったんじゃないの?」


西条…何故見破った? こいつ化け物か?


「なんでそう思った?」

俺はごくりと唾を呑んだ。


「急に佐野が、中島さんのこと話題に出すからね。そんなの学校で聞けば良いじゃん。それをしないって、どう考えても、青木から聞いて電話したんじゃないのかって思うよ?」


やっべー、青木! 何が円香に夢中だよ! 

しっかり洞察しやがる。


くっそ…なんで誤魔化す?



良いよ無理して嘘つかなくて。すぐに答えないってそう言うことでしょ?


「それと、青木が不倫してたの知らないのは、嘘だと思う。

もし本当に知らないなら、父親に、それとなく聞くとか、青木のことだから、僕たちに伝えると思うんだ。」




「無実を確実に証明したいはず。それをしないって、知ってるから、考えられんがって言ったんじゃ? まぁ青木は、完全に否定してなかったけどね。どっちかと言うと辻褄が合うみたいなこと言ってたし。」


西条ー! 洞察力!! ヤバい。って言っても、俺が中島レイナと綾瀬桜の話ちょっと伝えただけで、全て分かったみたいな反応だったな。



元々西条は、勘がいいのかも。だから2回も浮気現場を見る羽目に。偶然かもしれんが…


「わりぃ、彼女が寂しがってるから切るわ。じゃあまた。」

さすが俺、うまく回避。



「みーちゃん。」

俺は彼女を背後から抱きしめた。


「まーちゃん。」

ちゅ。みーちゃんがほっぺにキスをしてくれた。


「いい絵書くね。」

俺は彼女の絵を褒めた。太陽の絵だ。


「まだまだだよ。それに絵だけじゃなくて、他も上手くなりたいし、色々挑戦中で忙しい。」


「でもそれでもまーちゃん最優先。嬉しいでしょー?」

笑顔で彼女が言う。


「ああ、嬉しいねー。」

俺も彼女のほっぺにキスをした。


「そこのバカっプル! いい加減にしなさい!」

部長に怒られてしまった。


「今度またね、デートでイチャイチャしよっ。」

みーちゃんが慌てて言う。


「オッケー!」


甘いひとときだったぜ。




部活が終わってみーちゃんに声を掛けた。


2人だけの世界だ。キャンパス内を、窓から差し込む夕日が照らして、ロマンチックな空間に2人で見つめて手を合わせて微笑む。


「お疲れ様! 愛してるぜ。」


「私もー。まーちゃんねぇ、今日一緒に帰ってパフェでも買って食べよ?」

彼女が優しく微笑む。


「いいね、食べ合いながらだよな? もちろん。」

俺は幸せを噛み締め、彼女の頭を撫でた。


みーちゃんの髪がとてもサラッとしていて、俺の手に感触が優しく伝わる。



「もちろん! クリーム付いたら取ってあげるね。」

彼女の暖かい笑顔が、俺の心を光で満たす様だ。

「こいつめー。」

俺はまた彼女に抱きしめて甘えながら、キスを交わした。

その柔らかい唇が甘くて、温もりを感じさせた。

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