第29話事故の真相

「まぁ、証拠は今あまり無い状態だな。なら証拠を手に入れれば良い。青木の下の名前を義理妹さんに聞けば解決だ。」

青木がもっともな事を言った。



「確かに…聞いてみる。沙也加さんに目をつけられるてるから、話すなら外に出てだな。自宅じゃ、聞かれる可能性あるし。」

俺は青木に伝えた。



「大変な事になったね。本当に2人ともが姉妹なら、びっくりだよ。」

西条が、戸惑いながら言う。


「ふっ、他人事言ってるが、お前も話して無関係だろうか? 俺は悟ってやつが気になる。誰の子なんだろうと。」

青木が何か、また爆弾発言をしそうだ。



「どういうこと? 悟って人も、親が違うのは言ってたけど。」

不思議そうな表情で、西条が青木に聞く。


確かにな。青木のなんの証拠も無い推理。だが、聞いてやろうじゃないか。



「悟ってやつが、実は西条お前の父親じゃないかと疑っている。沙也加って人とな。」

こいつは何を言ってんだ? 気でもおかしくなったか?



「…そんな…しかし…」

西条は動揺を隠しきれてない。


何故? そんなのあり得ないだろ?

俺は青木に推理を聞かせろとせがんだ。


 

「実はな、西条の母親のレイナちゃんの姉の事故の原因なんだが、考え事していて、と言っていたんだが、その後離婚した訳だが、実は不倫に悩んで、それでやってしまった。それだと辻褄が合う。」



「しかしだぞ? それがなんで、沙也加さんが相手って決まるんだ? 浮気相手なんていくらでもいるだろ?」



「沙也加って人の夫が同じ会社に勤めているんだろ? 接点はある。」



「それだけ? それに関係持ったとして、事故から7年〜それまでずっと関係持ってた事になるが?」

俺は青木の迷推理に呆れて言った。 



「ふっ、夢のある推理だろ? もし仮にそうなら、この3人全員の父親が沙也加さんって人を抱いた事になる。」   


青木の迷推理の原因が分かった。

なるほど、それが言いたかったのか。



「何が夢のある推理だよ。勝手に父さんに濡れ衣着せないでくれる?」    



「それと思ったんだけどさ、莉菜ちゃんに名前聞いて、それが本当の名前かは、分からないんじゃ? だって沙也加って人が、偽名を莉菜ちゃんに伝えてるかもしれないじゃん?」


さすが西条だな。青木とは、違うまともな事を言う。


「実はな、この推理をしたには、ちゃんとした理由があるんだ。西条のお父さんがな、別の女性と仲良く歩いてる所を昔見た事があるんだ。それで…今ピンときて言った。」


なるほど…それを先に言えよ。それなら少しはマシだ。


おかしいな…青木の推理が飛躍してる。何かまだ隠してるだろ。


「おい、推理が唐突過ぎる。お前何か俺たちに隠し事してるだろ?」


俺は青木に詰め寄って聞いた。


「唐突か…ふぅ、やはりそうだよな。じゃあ正直に言うぞ? ずっと隠していた。その前に西条に謝っておく。今まで黙って申し訳ない。」



西条は、ぽかーんと口を開けている。


「最初俺はレイナちゃんに告白しようと、色々歩き回っていたんだ。その時ふと見たら、西条の父親と、見知らぬ女性が歩いていたが、歩いてる所を見ただけじゃない。」



「キスをしている現場を見た。それを…西条の母親にチクったんだ。そして…次の日に事故が起きた。俺がレイナちゃんの姉を殺したんだ。すまない西条。」


頭を下げて青木がその後泣きじゃくった。


俺もそれに釣られて、涙が溢れた。



「いや、お前が殺したんじゃないし、お前のせいでもない。僕の母さんが、運転中に考えごとしたのが悪いし、父さんが浮気したのも悪い。青木と僕は、何も悪くないんだ。」


西条が拳振り上げて言う。


西条には、青木を責める権利がある。それなのに責めずに、しっかりとした理屈で青木を諭した。


西条…お前は凄い奴だ。俺は心からそう思っ

た。


「いや、それはそうなんだが、お前じゃなくて、母親に伝えたのは、家庭が崩壊して、引っ越していなくなれば、レイナちゃんと付き合える。そう打算があったんだ。」


「だから、俺が何にも悪くない訳じゃないんだ。」


そう言った青木の表情がつらそうに見えた。


「それだけ中島さんが好きだったんだな。打算があろうがなかろうが、事故起こせば良いなんて、思ってないだろ。」


西条が、青木の肩に手をかけて言う。



「ああ、でも…事故の後お前とレイナちゃんが不仲みたいになって、正直複雑だった。言えずにここまできちまったしな。申し訳ない。それと佐野お前が見抜いてくれたおかげで今言えた。ありがとうな。」 



教室の隅で、夕陽が窓から差し込む中、青木は西条の胸で声を震わせていた。




その涙は、長年の罪悪感と後悔の重みを持って、ゆっくりと青木の頬を伝った。周りの世界は静まり返り、その瞬間、2人の時間が流れていた。


その光景を見ていた俺は、鼻を赤く染め、教室机に手を置いた。冷たい感触が伝わってくる。


青木の言葉に答えず、親指を立てた。



俺は何もしてねーよ。馬鹿野郎。そう心で呟いた。

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