第20話天使?な彼女
学校が始まり放課後の今、青木と佐野に早速愚痴った。
「とんだクソ女だな。さすがの俺も同情するよ。西条、飲み物奢るよ。」
佐野が慰めて言う。
「コーラ。」
僕は力なく言った。
「おう、買ってくる。」
佐野が親指を立てて返事をした。
佐野は、僕と同じ片親で、父親と一緒にいる。それもあってか、仲良くなり、今では、僕の大事な友達だ。
ちなみに佐野の親は、警察官だ。大川の件で、知ったことだけど。
中島さんと、綾瀬さん、大川の母と、佐野の父親が協力して、大川律を立ち直らせたらしい。
ただ、大川の父親は、何もしなかったって言ってたな。一緒に住んでるのに。
立ち直るのは、もちろん良いことなのだけれど、それは、あゆみが学校に戻ってくると言うことだ。
「俺の予想通り、軽かったな、彼女。やはりうちの妹と付き合うしかないな。」
青木が口をニヤッとさせた。
「円香ちゃんか。」
僕は呟いて言った。
「西条、三匹の子豚って知ってるか?」
青木が天井を見上げて言う。
「三匹の子豚? そりゃしってるよ。それが何か?」
僕は不思議に思い聞いた。
「滝川あゆみは、藁の家。和田早苗は、木の家。そして俺の妹青木円香は、煉瓦の家だ。
つまり、絶対に浮気しない訳だ。」
青木が胸を張って言う。
「どうして、そんなに自信持って言えるんだよ? 円香ちゃんだって浮気するかもしれないだろ? 保証はない。」
僕は疑って言う。
「ふっ、何故かって? それはな、俺も一途だからだ。子供の頃から、好きな人が1人。ずっとだ。つまり、兄妹で一途な家系なんだ。」
青木が眼鏡を触って言う。
「なるほど、説得力はある…本当に浮気しないんだな?」
僕は青木を睨んで言う。
「ヤンデレに浮気のふた文字はない。」
青木が言い切った。
「…分かった。付き合おう。」
青木の僕を思って言ってくれてる、部分もあるのだろうと、彼の優しさに答えた。
笑いを堪えながら、青木が頷く。
なんだ? もしかして嵌められた?
「そんなにヤンデレなの? 円香ちゃん?」
僕は不安がって聞いた。
「安心しろ。全盛期は過ぎてる。昔ならお前の言うことなら、なんでも聞いたろうが、今は、そこまでではないはずだ。」
青木が返事をした。
ん? 僕の言うことなら、なんでも聞くなら良いことじゃないの?
そう思ったが…例えば、死んでって言ったら本当にやるってことか?
それはやばい。
「ヤンデレとしては、もう昔ほどじゃないって事?」
僕は問いただした。
「そうだ。ランクで言ったらS級がC級になった様なもんだ。」
随分降格したなと僕は思った。
「買って来たぞ。」
佐野がコーラを手渡して言う。
「ありがとう。」
僕は礼を言った。
「もう気を使う必要ないぞ佐野。こいつは、もう彼女が出来たんだ。切り替えの速さに笑うよな。」
青木が言った。
僕は青木を睨んで、ふざけたこと言うなと腹を立てた。
「誰だ? また浮気されるんじゃないのか?」
心配そうに、佐野は言った。
「俺の妹だ。浮気される心配はない。」
青木が手を振り言った。
「そうか、円香ちゃんなら大丈夫そうだな。西条おめでとう。良い彼女出来て良かったな。」
佐野が心から祝福してくれた様に見えた。
何故だ? いつもなら悔しがるのに。
「ありがとう。でも、佐野らしくないな。なんか変なもん食べた?」
僕は調子狂うなと思った。
「実はな、ふふ…俺彼女出来たんだ。同じ部活の子。青木、彼女なしもうお前だけだ。」
幸せそうな笑顔を見せ、佐野は言った。
「くっそが、俺も…告るかな。」
青木はそう言って、目を瞑った。
一時間後
青木が、僕と円香ちゃんが会う場所をセッティングしてくれた。
彼女とカフェで待ち合わせ。
うーん、和田さんと別れ話した、カフェか。
嫌な記憶が蘇る。
僕は少し待ってすぐに円香ちゃんが来た。
彼女は、やはり…とんでもなく可愛い。
もちろん浮気しない彼女が欲しかった。けど理由はそれだけじゃなく、可愛いくて、自分に夢中と言うか、好きでいてくれる…そんな子を、今の僕には、とても拒否出来ない。
彼女が椅子に座り、白いテーブルで僕と対面で話を始めた。
近くの花が、甘い香りをさせて、この場の甘い雰囲気を更に甘くする様だった。
「先輩分かってます。先輩が、私のこと怖がってるの。」
彼女が僕の目を見つめて言う。
彼女の持つ、お洒落な白いポーチが、怖い感情を、払いのけ、彼女の可愛さを引き立てた。
「けど、先輩が酷いことされたって、お兄ちゃんから聞いて、居ても立っても居られなくなって。」
「先輩を癒してあげたいなって。」
彼女が優しく微笑む。
「私達が幸せにしてる様子を浮気した人たちに見せて、見返してやりましょう!」
円香ちゃんが、僕の手を取って重ねた。
「西条先輩好きです。私と付き合って下さい。」
僕は円香ちゃんが天使に見えた。
僕は頷いた。
「ありがとう、君を大切にする。」
僕が言うと、彼女の頬が真っ赤に染まった。
「円香ちゃんに条件があるんだけど、出来れば頻繁に連絡はしないで欲しいんだ。」
「例えばメールとかいっぱい送ったり、長電話したりしないで欲しい。それが条件。」
僕が言うと、円香ちゃんは、表情が固まって、すぐに真剣な表情をした。
「そんな無駄な事しないですよ。そんな事してたら、大学先輩と行けなくなっちゃうじゃないですか?
そんな連絡なんかしなくても、先輩は、学校終わったら、私とずっーと、勉強一緒にやるんです。」
「まったく、先輩どんな女の子と付き合ってたんですか?
先輩が大学行けなくなったら、どうするんですかねー?」
ため息をついて彼女が呆れる様に言った。
「…浮気した理由何か言ってました?」
円香ちゃんが聞いた。
「優し過ぎて退屈って言われたよ。」
和田さんのことを愚痴る様に言った。
「はぁ? クズですね、その女。私だったら、西条先輩の一つ一つの優しさに感謝します。
その女はきっと優しくされて当たり前とか思ってるんでしょう。」
「マジでクズです。優しくされたら、優くされた分ちゃんとお返ししようと色々考えて、そんな退屈な訳ないですよ。その女に対する怒りが沸々と湧き上がりますね。」
彼女の言葉に、本当にヤンデレなの? どう考えても天使なんだけど…僕はそう思った。
僕は、彼女の思いやりに、涙を濡らした。
円香ちゃんが僕に近づき、優しく手で、涙を拭った。
「ありがとう、円香ちゃん。君の言葉聞いたら、感激しちゃって、つい泣いちゃった。」
僕は彼女に感謝をした。
「先輩は優しくて、こんなに温かみのある人なのに、浮気されるって世の中間違ってますよ。」
円香ちゃんが優しく僕を見て言った。
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